今回は、にかほ市内のフレンチレストラン『Remède nikaho』でソムリエを務める村上清香さんにインタビューしました。

ソムリエとは、ワインをはじめとした酒類、飲料類、全般の専門的知識・テイスティング能力を有するプロのことです。

そんなソムリエの資格を持っている村上さんにワインを楽しむための「すべし5ヶ条」を教えていただきました!

Q:はじめに村上さんの経歴と現在の活動を教えてください。

高校時代に飲食店でアルバイトをしたことがきっかけで、飲食業界に興味を持ちました。秋田市の定食屋や日本酒居酒屋など様々な業態の飲食店で経験を積み、21歳頃に上京し、東京ではイタリアンバルや韓国料理ダイニングなどで働いていました。ワインを専門的に扱うお店が多かった為、お店で扱っているワインの知識が身につき、さらに多くの経験を積むことができました。

その後、銀座のフレンチレストランで働くことになり、そこで支配人を任され、サービス業務の他、ワインの選定や管理を行ううちに益々ワインに興味を持つようになり、ワインスクールに通って一生懸命勉強しました。そして、2018年に無事、日本ソムリエ協会のワインソムリエの資格を取得しました。

その銀座のレストランで一緒に働いていたシェフが、現在のパートナーである渡邊シェフです。その頃、二人で独立を考えていた矢先に、現在の『Remède nikaho』の建物での仕事の話をいただき、一度下見を兼ねてにかほ市を訪れた際、鳥海山をはじめとした素晴らしい風景や自然豊かなにかほの地と、この建物に惚れ込み、視察から5か月後の2017年10月ににかほ市へ移住しました。

この土地のすばらしさを伝えられるレストランを作りたい!という想いのもと、翌年の2018年4月に「Remède nikaho」をオープンしました。

Q:ワインを好きになったきっかけをおしえてください。 

上京してから働いた店の多くがワインを専門的に扱っていたため、働くうちに少しずつワインの知識が増え、次第にワインが好きになり、プライベートでもワインを飲むようになりました。1本のワインを何人かで注ぎ合いながら過ごす時間もすごく好きで、どんどんはまっていきました。

Q:では早速、ワインを楽しむためのすべし5ヶ条を教えてください。

1ヶ条目 体調(鼻の調子)を整えるべし

ワインは特に、視覚から入り、嗅覚・味覚と全てを使って楽しむ飲み物かなと思っていて。

ワインは全て“葡萄”で造られたものなのに、品種個性により、リンゴのような、や、レモンのような、など、葡萄とは全く異なるフルーツの香りを感じたり表現したりします。 

風邪や花粉症で鼻がつまっていると、食べ物の味が感じにくくなり、美味しさが半減しますよね。それと同じで、ワインを楽しむときに鼻がつまっていると、香りを感じられず、味も分かりにくくなってしまいます。

美味しくお酒を楽しむためには、体調管理はとても大切です!

Q:体調管理や鼻の調子を整えるために気をつけていることはありますか?

お風呂に入った時、“鼻で蒸気を吸う”ようにしています。ソムリエの2次試験に向けての訓練をしている頃からやり始めたんですけど、これをやり始めてからあまり風邪をひかなくなりました。

ソムリエの2次試験はワインをブラインドで(銘柄を隠して)テイスティングをします。香り・味わいから品種・アルコール度数を感じ取り、生産国・ヴィンテージを推理していかなくてはならないのですが、まずは香りを取れないと話になりません。試験の時に風邪をひいていては今までの努力も水の泡。体調管理の一環でやっていたのですが、ある日、お風呂でこれをやった後にテイスティングの訓練を行った際、いつもよりもきちんと香りが取れた経験があって。それから、ワインをより楽しむために今も続けています。

2ヶ条目 先入観をなくすべし

値段だけで美味しさを決めつけたり、ドイツワインは甘いとか、チリワインは頭が痛くなる、とか。固定概念に囚われた判断をしてしまうと、そのワインとはそれ以上向き合えない可能性があります。安くても美味しいものもあるし、高いからと言って全てが感動的なおいしさとも限らない。チリのワインもしっかり造られている高品質のワインだってあるし、近年のドイツワインの主流は辛口だし。

嗜好品なので好みもそれぞれですが、様々なスタイルのワインがある中、自分が思っていた印象とは違う味わいのワインに出会う事も多々あります。この国のワインはこうだ、この品種はこうだと決めつけずに色々試してみると、意外と新しい発見があったりします。

お店でお客様にワインを選んでいただく際にも、先入観をあまり持たずにお客様自身が素直にそのワインと向き合って楽しんでいただけるよう、私の主観はあまり入れすぎないよう、言葉を選んで提案するように心がけています。

3ヶ条目  ワインにあったグラスを選ぶべし

例えば、ふくよかな白ワインを小さいグラスで飲もうとするならば、窮屈でそのワインが持つポテンシャルを存分に感じる事ができない。洋服と一緒で、そのキャラクター(体系)に合った大きさのグラスを選んであげるのもまた、そのワインをより美味しく楽しく飲むコツのひとつです。

Q:同じワインでもグラスによって味の感じ方が異なるんですね。

はい。グラスの形状が違うと口に入ってくる角度の違いからか、舌での味覚の感じ方も、感じ取れる香りも変わります。

レストランでも料理に合わせて提供するワインは、味の感じ方に意識して数種類のグラスで試飲してみて、最適なグラスを選んで提供しています。

ワインをボトルでご注文いただいた場合には、途中で違う形状のグラスに変えて味わいの変化を愉しんでいただいたりもしています。

Q:ワインを楽しむために、どんなグラスを揃えたらいいのでしょうか。

最初は、白ワイン用の少し小さ目のグラス(小さすぎないもの)と、それよりも大きい赤ワイン用のグラスがあると良いでしょう。

欲を言えば色んな形状のグラスを揃えるのがベストですが、白ワイン用グラスの大・小、赤ワイン用グラスは丸っぽいものと縦長のものというような形状違いのもの、この4種類あるだけでも存分に違いを楽しむことができると思います。

軽めの赤ワインは白ワイン用の小さい方のグラスを使ったり、大きい香りをしっかり感じられる白ワインは赤ワイン用のグラスを使ってみたり。

色々なグラスを試して、そのワインを飲むシーンに合った味わいを感じられるグラスを見つけるのもまた楽しいですよ。

4ヶ条目 素直にプロに聞くべし

ワイン選びで迷ったら、恥ずかしがらずに気軽にお店の人に相談しましょう。

最近のワインは料理に寄り添う味わいを意識して造られているものが増えてきていますし、私のようにワインを生業にしている人は特に、このワインはどんな食べ物に合うのかという事ばかり日々考えているので、聞いていただければ結構良いアドバイスをもらえると思いますよ。プロに聞く事で、自分の知らない美味しいワインと出会えるチャンスが増えると思います。

Q:どのように質問すれば良いのでしょうか。

例えば、「辛口ですっきりしてるけど葡萄の香りも楽しめるもの」などの味、香りの好みを伝えてみたり、おうちで楽しむワイン選びの時なんかも「今日晩御飯が○○なのでそれに合うワインは?」や、「こんなワインを持っているので、それに合わせて何を食べればいい?」などの希望を伝えてみたり。「詳しくないからどう質問すればいいか分からない」とおっしゃる方が多いですが、何でもいいので気軽に相談してみてください。

今後に役立つワイン選びのコツなども分かりやすく教えてもらえることもあるかも。

5ヶ条目 楽しく飲むべし

…色々お話させていただきましたが、難しい事は考えず、まずは「楽しく飲むべし」(笑)

ワインは抜栓してしまうとあまり日持ちしないので、開けるときは一人で飲むというよりは誰かと一緒に飲むことの方が多いと思います。ですので、そのワインを1本飲みきるまでの時間を、どんな素敵な時間にするかというのが大切かなと思います。

ワインを選んでいる時間から、一緒に飲む人の事や合わせて食べる料理のことなどを想像してワクワクします。そのワクワクした気持ちを大切に、大好きな仲間とそのワインを注ぎあい有意義な時間を過ごすことができる、そんな素敵な飲み物だと思います。

お話を聞いて色んな楽しみ方が知れて、ワインが飲みたくなってきました。

私がワインについて話したことを聞いて「ワインが飲みたい」と思ってもらえるのが一番嬉しいですね。

Q:では最後の質問になりますが、村上さんにとってにかほ市とはどんな場所ですか?

人間らしい生活ができる場所だと思います。東京と違い、夜になると暗く静かになるので、自然と規則正しい生活が送れています。この街に来て、自分自身の生活を見つめ直すきっかけになったように思います。

良い生活になっていったんですね。

東京で色んな経験をしたからこそ、この良さに気づくことが出来ました。

にかほ市に来て楽しいと思えるのは過去の経験のお陰です。

ワインをはじめとしたお酒の楽しみ方や魅力をたくさん教えていただきました!
ソムリエがいるお店もにかほ市には少ないので、『Remède nikaho』で美味しい食事とお酒を楽しんでみてください。

村上清香さん、ありがとうございました!

この記事を書いた人

村上清香