今回はアイシングクッキーを作り販売をされている小笠原 愛美さんにインタビューしました。
アイシングクッキーとは、粉糖と卵白を混ぜて作ったクリームのアイシングを使いデザインされたクッキーのことです。
アイシングクッキーの資格を持つ小笠原さんにアイシングクッキーのすべし5ヶ条を教えていただきます!
Q:はじめに小笠原さんの経歴と現在の活動内容について教えてください。
出身はにかほ市です。高校を卒業して、ファッションの大学に入りました。卒業してアパレルの会社に入って、そこで仕事をしていました。結婚を機ににかほ市に戻ってきて、子どもが生まれました。子どもが小学校に行くまでは普通に会社で働いていたんですけど、朝も早くて帰りも遅いので子どもたちとの時間もないし、子どもに「いってらっしゃい」と言える時間に家にいないし、「おかえり」とも言えなくてそれがすごく嫌で、家で仕事をやりたいと思うようになりました。
私はお菓子を作るのが元々好きで、会社にいた頃、同僚にバレンタインにお菓子を作ったりしていたんです。毎年作っていたんですけど、いつも同じ物ばかりというか…新しいものをあげたいと思って検索していたら『アイシングクッキー』の写真が出てきて、そこで「あ、これは」と思ってそこから勉強し始めました。
Q:そういった流れで始められたんですね。
そしてだんだん本格的にというか、趣味から1つレベルを上げたいという希望があって、まず資格があったので資格を取りました。資格を取っても販売はできないので、とりあえずは家で教室を開いたり、人に教えたりしていました。ずっと教えていると自分の技術も向上していくので、「販売してみたいな」と欲が出てきて、会社も辞めてアイシングクッキーの販売を始めました。
Q:なるほど。
自宅でやっているんですけど、自宅で食品を売るとなると基準があるじゃないですか。それに合うように改装したりとか、営業許可を取ったりとか、食品を扱う資格とかも取ったりして、本格的にアイシングクッキーの販売と教室も始めました。
Q:きっかけは元々お菓子作りが好きなこともあったかと思いますが、たまたま調べていて見つけたという感じだったんですね。
そうです。たまたま見つけて、「なにこれ可愛い」と思って、しかも田舎だからそういうのがないじゃないですか。
Q:たしかにないですね。
お店に行っても売ってないし、新しさもあって始めました。
Q:ではさっそく5ヶ条の1ヶ条目と、その理由について教えてください。
すべし1ヶ条目
1ヶ条目が、「アンテナを立てるべし」です。『アイシングクッキー』もそうなんですけど、好きなことは全部アンテナを立てるようにしていて、私はファッションも好きなので『アイシングクッキー』とか『ファッション』のことがだいたいになるんですけど、情報を集めたりとか、他の人のを見たりとか、そういうのを常にしています。
Q:常に検索とかをしているんですね。
検索とかをして、自分がちょっとでも引っかかるものがあったら保存をして後でちゃんと見て。そうすると結びつくというか、「これとこれを結びつけたらいいかも」みたいなのが思い浮かぶので、情報を集めています。
Q:これは色々なところにも活かせそうですよね。
そうですよね。
すべし2ヶ条目
Q:では2ヶ条目とその理由を教えてください。
「ビジュアルにこだわるべし」です。アイシングクッキーって味はもちろんそうですけど、ビジュアルが命だと思うんですよ。なので作るのはもちろんですけど、写真はやっぱりこだわっていますね。アイシングクッキーだけ、ぽんと置いて撮るよりは、ちゃんと小物を用意したりこだわっています。
Q:私もインスタでよく見ているんですけど写真がすごい綺麗だなと思っていて、色々見ていてもすぐ目に入ります!
良かったです。嬉しい!(笑)
Q:第一印象はすごく大事ですからね。
そうですね。やっぱりビジュアルが命かなと思ってやっています。
すべし3ヶ条目
Q:では3ヶ条目をお願いします。
「ない物は作るべし」です。それこそ色も1色だけでなくて、混ぜたりとか。色作りもそうですし、クッキーの型とかも大きさとか形とか…。
自分の欲しい物がないことが多くて、アメリカ製品だと大きすぎて。(笑)型も作ったりします。
Q:型を作るというのはオーダーメイドなどですか?
そうなることもあります。少ない数であればナイフで切り出せばいいんですけど、数が多いと時間がかかってしまうので、いちから型を作っています。
Q:ナイフを使ってという場合もあるんですね。
誕生日とかに作るときは同じ形の物はあまり作らないから、そういう場合は手でやったりしています。
この間も水族館の方に送りたいという方がいて、水族館の方が履いている胴長みたいな物と、ノコギリエイみたいなアイシングクッキーを作ったのですが、型がないものはナイフで切って作りました。
Q:かなり細かい作業ですよね。
作業は細かいと思います。そういうのが好きなんだと思います。
すべし4ヶ条目
Q:では4ヶ条目をお願いします。
「自分の震えに従うべし」です。衝動に従うというか、自分の体が反応するものに従うというか…損得や常識非常識ではなくて、自分の体が反応するものをやる。(笑)それは一番大事にしていることです。
最初は何も分からなくて始めたんですけど、お客さんに「キャラクターを作ってください」と言われたら普通に作っていました。最初は作れることが楽しかったのでそのまま作っていたんですけど、だんだん「なんかこれは違うな」ってなってきて、キャラクターは辞めました。
Q:それでキャラクターは受け付けていなかったんですね。
そうです。なんか気持ちが乗らなくてやっていませんでした。
Q:デザインは基本的に全部ご自身でという感じですか?
だいたいそうですかね。この間もクリスマスのクッキーで、サンタさんとかトナカイのオーダーがあったんですけど、細かいデザインはこっちの方で決めさせていただいて。サンタさんでも色々なのがありますよね。そういうのは決めさせてもらったりもしています。
Q:デザインって結構悩まれるときもあると思うんですけど、うまくできないときもありますか?
あります、あります。なのでそういうときに情報が役に立ってきます。
Q:なるほど!
「この色合いがいいな」とか「この色をここに使ってみようかな」とか、そうするとデザインが決まっていきます。
Q:アンテナを張っていることがここでも活きてくるんですね。
そうですね。
すべし5ヶ条目
Q:では最後の5ヶ条目をお願いします。
さっきのとは相反するのかもしれないですけど、「来るものは拒まず一旦受け入れるべし」です。最初から嫌だと思うのはやらないですけど、「あ、ちょっとやってみようかな」と思ったものはオーダーもお仕事の依頼とかも、1回受け止めてみようと思っています。
自分の枠だけでなくて、人からもらうものは自分の枠からちょっとはみ出すというか、超える部分が何かしらあると思うので、1回受けてその枠を広げてもらうみたいな…そういう感覚がいいかなと思っています。
Q:今はアイシングクッキーの販売などがメインだと思うんですけど、他にも何かやられているんですか?
ママだけどこういう仕事をしていることについてお話をしたりとかをしています。
Q:特にここら辺だとあまりいないですよね。
そうですね。結構面白いなと思っていて、ママ向けのレッスンとかもあるんですけど、『子育てサークル』でやるからという感じで呼ばれることもあります。
そうするとお母さんたちが来てくれるんですけど、お母さんになると制限みたいなのが多くて、仕事もして子育てもして、やりたいこともあるけどできないとか…。何かやりたいけどやれないみたいな方が結構多いから、そういう方にレッスンを受けてもらうと楽しいかなと思って最近やっています。
Q:なるほど。そういう方も多い中で、小笠原さんがすぐ「やろう」となったきっかけはあったんですか?
ちょっと家庭の事情みたいなのがあって、そこで1回つまずいたというか…このまま自分の好きなこともやれなくて、子育てだけして歳をとっていくのは嫌だというのがあって、そこで好きなことをやるっていうスイッチが入ってこうなりました。
Q:最初は不安や心配という気持ちもありましたか?
もちろんありました。私は人の目とかよりもお金の部分で少し抵抗があって、旦那さんもその面を心配していて「大丈夫なの?」みたいに声をかけられました。それを言われると、まだ何もやっていない私は「やっぱりそうなのかもしれない…」「娘たちを学校に行かせられないかもしれない…」みたいに考えました。(笑)もちろん今もありますけど。でもやっぱりその家庭の事情が精神をやられる感じのことだったので、もういいみたいな、ちょっとやけくそだったのかもしれないです。(笑)
Q:そういうきっかけがあったんですね。良いと言ったら語弊があるかもしれないですけど、ある意味それが変えるきっかけになったというか。
そうです。そのときは嫌でしたけど、今となっては良い出来事ではないけど、おかげで乗り越えられたみたいなところはあります。
Q:なるほど。アイシングクッキーって細かい作業が多いですけど、そういった作業自体も得意だったんですか?
お菓子作りもだし、教科でいうと図工が好きでした。夏休みの制作もご飯を食べるのを忘れて作るみたいな子どもでしたね。そればかりでした。
Q:そういうのも今、活きているんですね。こういった販売だとお客さんとのやり取りも沢山あると思いますが、気をつけていることはありますか?
結局、文章でやり取りをするので、細かいところまでは汲み取れないことが多いので、それで最終的に不一致してしまうともったいないから、細かくやるとこは細かく、大雑把なところは大雑把でやる。遊びをもたせておくみたいな。(笑)
お客さんは自分で作ったことがない方が大半だと思うので、分からないこともいっぱいあるので「それは無理なんですけど、こういうのはどうですか?」みたいに提案します。
Q:たしかにどこまで大丈夫なのかが分からないですね。
そうですね。半分くらいの方はイメージで注文をくださるので、それに合わせるじゃないですけど…。
Q:細かく指定がある方は少なそうですね。
「ここはこの色でこうじゃなきゃだめ」とかはあまりないですね。逆に私も作れないと思うので、提案はします。今まで作った写真を見せて、そこから選んでもらうことが多いです。色は私が思っているのとお客さんが思っているのだと違うだろうし、そこは100%ではないということはお伝えしています。
Q:そこの段階から大事ですよね。それが最終的に物になりますからね。
だから想像を上回るように頑張っています。
Q:アイシングクッキーは箱を開けた時にみんな「わぁ!」ってなりますよね。
そうです。最初に開けたときの「わぁ!」が忘れられないです。子どもの誕生日にお母さんが注文をくださるんですけど、まずお母さんが見て「わぁ!」ってなって、ケーキに飾り付けて、それを子どもが見て「わぁ!」ってなるのが嬉しいです。
Q:そういった感想もありますか?
感想をくれる方も結構いらっしゃいますね。お子さんと飾ったケーキの写真とか動画も送ってくれます。
Q:その瞬間は嬉しいですよね。
そうです。なのでいつも念を込めてます。(笑)受け取ったときの表情を想像しながらやっています。
Q:素敵です!では最後の質問ですが、小笠原さんにとってにかほ市とは何ですか?
私が『若者100人会議』(※にかほ市内の地域プレイヤーが集まり地域活性化について会議が開催されており、その名称が『若者100人会議』。)とかで関わっていると、良い意味で昔とはやっぱり違うなと感じます。私が学生の頃は「こんな町なんて」という感じだったけど、東京に出て、それはそれでいいと思うんですけど、やっぱりずっと住む場所ではないなと感じていました。
にかほ市に帰ってきて、皆さんと関わるようになってからまた考え方も変わって、面白いというか、何もないけど可能性はあるという感じは思っています。面白い人って関わっていかないと分からないし、にかほ市だけではないかもしれないけどそうだなって最近すごく思います。
にかほ市ではまだ数少ないアイシングクッキー作りをはじめるということはとても大変だったかと思います。小笠原さんの活動や発信が、たくさんの方々の幸せに繋がるように感じました。
小笠原 愛美さん、ありがとうございました!