今回は、自然観察会に在籍されている齋藤勝利さんに中島台での自然の楽しみ方について、『すべし5箇条』をお伺いしたいと思います。
Q:まずは齋藤さんのご経歴を教えて下さい。
初めは約32年飛良泉に勤めていました。一番下の子が高校を卒業するタイミングで自分の好きなことをやろうと思って、私はやっぱり自然が大好きなのでどこがいいかなと思っていた時に、『中島台』があるじゃんと思って今の仕事をしています。
Q:現在はどのような活動をされているんですか?
自然観察会に入っています。ただあれこれでなくて、プラごみや環境ごみをどうやって減らすのかとか。あとは遊び人です。中島台行って、漁師をやって、湯の台食堂でバイトして、農家をやって、マルチに遊んでいます。
基本、お願いしますと頼まれたことは全て受けようと思っています。船も乗ったことがないけど漁師やってと言われて。
Q:それはどのような流れで漁師をやってほしいと言われたのですか?
漁師に知り合いがいて、「人が足りないから冬の間だけ手伝って」と言われて、じゃあと単純に受けました。
Q:凄いですね。頼まれたことは全て受ける、というのはシンプルですが、とても難しいことでもありますよね。
「すべし」1箇条目
Q:では1箇条目の「すべし」と詳細について教えて下さい。
「帽子は被ってくるべし」です。基本ですね。帽子は落下物、日除け、虫除け、雨が降った時の雨具の代わりにもなります。
「すべし」2箇条目
Q:2箇条目の「すべし」と詳細について教えて下さい。
「ちゃんとした靴を履いてくるべし」です。夏になるとビーチサンダルで来る人がいるんですよ。あとはクロックスとか。いざ何か起きた時に、例えば蜂に追いかけられたりとか熊と遭遇したとかビーチサンダルで走れる?と。
例えば木道ですが、壊れて釘が出ているときに釘が刺さって怪我をしたらどうする?というのがあるので靴は基本中の基本です。長靴でもOKです。雨の日などは長靴がいいかな。木道が濡れていたりするとトレッキングシューズでも滑るんです。
Q:なるほど、やっぱり結構滑るんですね。
滑りますね。特にスニーカー履いてくる方はスニーカーなのでと言いますが、スニーカーは一番滑るんです。今年は無いですが去年は怪我をした方もいました。蜂から追いかけられて逃げましたと。いやいや蜂にあなた何かしたでしょという話です。もし何かあった時のために靴は大事です。
Q:スニーカーは一番滑るというのは驚きです!
「すべし」3箇条目
Q:3箇条目の「すべし」と詳細について教えて下さい。
「飲み物は持っていくべし」です。簡単に考えてくる方もいますが、特に気温の高い日は自分が思っている以上に汗をかいているし、喉が乾くので飲み物は持っていきましょう。これはどこに行っても基本ですね。
「すべし」4箇条目
Q:4箇条目の「すべし」と詳細について教えて下さい。
「犬は連れていかない」です。どこに行っても犬を連れて歩く人がいますが、ここはそもそも犬が駄目です。国定公園ということもあって。みんな熊よけの代わりに犬を連れてくるんですけど、「犬を連れてきたから大丈夫だ」と思ってという人がいますが、じゃあその犬が熊からやられてしまったらどうするという話です。
犬が「ワン!」と鳴けば熊が逃げると思ったら大間違いです。熊も生きないといけないので、犬と戦う場面があるかもしれないです。犬がやられたらあなた戦える?という話です。
そしてここは先ほど言ったように国定公園というのもあって。犬というのは栄養豊富なドッグフードを食べています。野生動物もここには当然いて、フンをしたりします。
犬のフンは栄養素が豊富なフンなのでそこで生態系が変わってしまいます。なので犬はダメです。
前に小さい犬を連れてきた方がいるんです。それ餌じゃんって。(笑)それは戦えないから熊の餌じゃんって言ったら怒られました。(笑)
Q:つい犬を連れていきたくなる気持ち、分かるかもしれません。(笑)事前にきちんと調べる必要性を感じますね。
「すべし」5箇条目
Q:5箇条目の「すべし」と詳細について教えて下さい。
「鈴を持って歩くべし」です。
Q:やっぱりそうなんですね。
そうです。「熊っていますか?」と良く聞かれるのですが、熊がいるエリアにそもそも人間が入っているのでそこは勘違いしてほしくないですね。
もっと伝えたい「すべし」
もう一つ、6箇条になってしまいますが「自然を感じるべし」です。
風の音、雨の音、この花なんだろう、この木なんだろう、なんだろうという疑問を持って帰ってもらいたいです。
それを家に帰って調べて、例えば家族がいれば子どもたちに説明すると自分にもプラスになります。なんでだろう、これなんだろうという疑問を持ってもらって自然を楽しんでもらえれば。常に自然を身近に感じることができるかなと思っています。
そうなると、どこに行っても自然を大事にするという気持ちがあると思います。
そういう人たちが増えてくれればゴミも捨てないだろうし。ここも普通にゴミを捨てていく人がいるんですよ。
Q:ここもゴミを捨てていく人がいるんですね。
いますね。そこに自動販売機があるのでペットボトルとか、あとは食べカス。食べた物の袋とか。去年はすき家。ここですき家食べたのかみたいな。(笑)たしかに美味しいんだろうなとは思いますけど。レアなケースですよね。食べたら持って帰ろうよというのがやっぱりありますね。
あともう一つ、「トイレは綺麗に使うべし」です。基本です。よく「ここのトイレ綺麗?」って言うグループがいるんですよ。あ、ここ綺麗ですよーって。私たちはいつも綺麗に掃除をしているので。使った人が汚すだけの話で、使ったらちゃんと綺麗にしようねということです。
ガイドさんとかお客さんから「ここのトイレは綺麗ですね」と褒められるんです。
山のトイレだし、公衆トイレにもなっているんですけど、多分にかほ市で一番綺麗な公衆トイレだと思っています。だから次の人のためにも綺麗に使おうよと思っています。
(あとこれは言っていいのかな。苔持っていったらダメですよと。そもそもここは国定公園だし、動植物の持ち出しがダメです。あとは植えていく人もいるんですよ。今年3本見つけました。ねむの木、なんでここに植えるの?っていう。生態系が変わるからそういうことはやめてねって。
あとはここに来て一番思うのは楽しんで帰ってもらいたい。そこが一番大事です。ここよかったなと思ってもらいたいです。
Q:中島台一番の魅力は何ですか?
当然のことですが、自然が豊富ということですね。電波が入らない非日常的なところも楽しんでもらいたいですね。
動物もいる、鳥もいる、花もさく、当然だけどそういうちょっとした変化を楽しんで見つけてもらいたいです。どんぐりが落ちてて、これは実になるんだろうかならないんだろうか。穴が空いているけどこの穴ってなに?虫?などそんな些細なことでいいです。
そういうのを見つけてもらいたいし、紅葉したら色が変わるけれどなんでだろうとか。普通秋だから紅葉してるんだって思いますよね。じゃあ何で秋だから紅葉するの?って。さっきも言ったけれどそんな疑問を持ちながら歩いてもらえればいいと思います。
ここは人の手が入って木を切った森なので、人間と森が共生しているということです。
全て自然の状態がいいのかというとそうでもないです。そこが人間なりの感覚なんだろうけど、自分達がここの管理をしてるんだよって。ここは人と森が共生しているところで、全部が自然な訳ではないし。でも人の手が入っているということで木や草が生活しやすい環境にもなっています。
Q:なるほど。自然に対しての気づきや発見って大切ですよね。
地元の小学生の子どもたちに付いて親御さんたちも一緒にくる時がありますが、ここに来たことありますか?と聞いてもほとんどないです。
地元にいながら地元のいいところを分かってないよね。他の地域には行くけど、地元だったら地元のことをもっと知って楽しんでもらいたいです。
にかほ高原に行けば土田牧場があってひばり荘があって、それしか見てないんです。そこの周辺の溜池だとか、サイクリングロードを歩いたりだとかするだけでも新しい発見がいっぱいあります。
元滝もそうです。あれだけが元滝ではなくて、あの奥に大きい滝があるから。地元の人でも知らないことがあるから、地元の人がもっと地元を周ってアピールしてもらえれば。みんながみんなガイドさんになれるような感じになれば、にかほ市がどんどん楽しくなってくると思うし、その人その人の知識や考え方、感じ方で同じ場所でも説明の仕方が変わってくるから。みんながそういう感覚で思ってくれれば。
にかほは観光としてやりたいと言ってるんだから、みんながガイドという感じで、いてくれればいいかなと思います。私は例えば中島台、元滝、にかほ高原、九十九島だけじゃないと思っています。
金浦にも金浦のいいところがいっぱいあるし、旧仁賀保にもいいところがいっぱいある。案内人協会の人やジオガイドの人もいるんですけど、そこだけじゃなくて。
地元の人たちがおらほのここいいんだよって。おらほのここ自慢をしていけばもっと楽しくなるんじゃないかなと思います。
Q:地元の人ほど地元を知らなかったりしますよね。
そうですね。田沢湖に行く、角館に行く、それはそれでOKなんです。じゃあにかほには来ないの?もっと楽しもうぜって。
Q:にかほってもったいないなっていうのは思いますね。うまく活用しきれていないですよね。
ですね。一部の人だけが動いている感じがしてそこは勿体無いなと思います。実際こういう立地条件はなかなか無いので。
この間千葉から来た秋田大学の医学生がインターンでいて、その子を私がアテンドしたんですけど、「にかほっていいですね。千葉にこんなところないです」って。あってたまるかよって。(笑)
海あって、海からすぐ鳥海山があって、高原があって、しかも誰でも知っている松尾芭蕉が来ている。そういうところってなかなかないよね。それがもったいないな、もっと活用するべきだなと思います。
市の文化財保護課とかの人たちが頑張ってるとは思いますが、松尾芭蕉とか池田修三さんとかそういう人のことばっかり、自然のことをあんまり知らないんです。
Q:たしかに。あまり知れてないですね。
ここに準絶滅危惧種の花を去年私が見つけて。大事に大事にした結果、去年の倍以上は咲きました。すごく嬉しくて。あとはにかほ高原に行くと、絶滅危惧種のサワランとかトキソウとかすごく咲いています。こんなにいっぱい咲いていて絶滅危惧種なの?って。準絶滅危惧種のハッチョウトンボとかがいたりするので、もっと市の方からもバックアップしてもらって保護してもらいたいなと思います。
にかほは楽しめるところがいっぱいあるし、私はこの歳になっても毎年川で泳いでいます。海が近くじゃなかったからずっと川で泳いでいるんだけど、川って楽しいねって。
毎年ずっと下流まで歩いて、そこから川を遡上してきます。行くたびにカモシカがいたり、魚が泳いでいたりというのを見ているといいなと思います。自分はあまり変わりたくないし、周りから見るとこいつ変わってるなと思われても変わりたくないです。
Q:最後に、齋藤さんにとってにかほ市とはなんですか?
当然私のふるさとでもあるし、大事にしたい場です。いろんな人からもっと楽しんでもらいたいです。若い人が特に、にかほって何もないじゃんと言いますが私はいっぱいあるじゃんと思っています。本当にいっぱいあるからもっともっといろいろな人に楽しんで欲しいですね。
中島台で自然を最大限楽しむために、大切なことをたくさん知ることができました。考えながら探索することで、新しい発見と出逢うことができそうですね。
齋藤勝利さん、ありがとうございました!