今回は、にかほ市で猟師をされている菅原崇さんにインタビューしました。狩猟においての「すべし5ヶ条」について伺いました。
※本記事は野生鳥獣を猟具を用いて捕獲する『狩猟』においての内容が記載されています。一部ショッキングな表現も含まれますのでご注意ください。
Q:ご経歴と現在どんな活動をしているか教えてください。
現在?遊んでる。(笑)地元が田舎だから、田舎でしかできない遊びをしていた。前はスキーとかをやっていて、ヘルニアでスキーをやめて狩猟をはじめた。
Q:狩猟はいつから行っているのですか?
27歳からやってて、息子が産まれた記念に免許取りに行ったんだよ。だから来年で狩猟歴は20年だな。
Q:印象に残っている狩猟はありますか?
熊2頭だな。平成の最後に30年の熊と、令和元年の熊と2年続けてとってんだよ。やっぱ熊は特別だからな。仲間と獲ったからなおさら印象に残ってる。普通取れね。今年は逃してっからな。
Q:狩猟において難しいことはありますか?
やっぱ生き物の生体を知らなきゃいけないから、初めてやる人は誰かから教えてもらわねーと(教えてもらわないと)絶対獲れね。(絶対獲れない)
Q:それが分かるのにはどのくらいかかるんですか?
ガキの頃、親父も爺さんもやってたから、そんな苦労しなかった。親父や爺さんについていってたから。
Q:狩猟においての魅力を教えてください。
生き物との駆け引きと自分でとって自分で食うっていうことだよな。
今の時代、分業になってて、動物を屠殺する人、解体する人、販売する人、買う人って分かれるけどそれを全部自分でやるからね。
やっぱり死んでるので瞳孔が開いてるのとかわかるからね。熊なんて死ぬ時泣くからね。ものすごい寂しい声で泣く。それが山の中で、こだまするんだよ。そういうのも覚悟しないとやっちゃいけないと思うんだ。
Q:最初に銃を持った時や撃った時はどんな気持ちでしたか?
特に何も思わなかったな。元々、親父が銃をやめて、どうしてもカモ食いたくて初めたのがきっかけだったからな。
そのうちだんだん熊の狩猟にも行ったって感じだな。
では、狩猟においての「すべし5ヶ条」を教えてください。
すべし1ヶ条目
Q:すべし1ヶ条目について教えてください。
「絶対とるべし。」
Q:狩猟は何時ごろ出発するんですか?
夜明けだな。日の出から開始だからな。
すべし2ヶ条目
Q:すべし2ヶ条目について教えてください。
「獲れない時は笑うべし。」
すべし3ヶ条目
Q:すべし3ヶ条目について教えてください。
「道具には金を惜しまないべし。」
山さ入るよう(山に入る用)の長靴は3万円するし、アウターは全部ゴアテックス。
※ゴアテックス (GORE-TEX) は、アメリカのWLゴア&アソシエイツ社が製造販売する防水透湿性素材の商標名。
通気性は大切。動けば汗かくからな。趣味に金は惜しまない。
すべし4ヶ条目
Q:すべし4ヶ条目について教えてください。
「その環境を楽しむべし。」
普段だと、木があって歩けない場所が雪で埋まって真っ直ぐ歩けたりするから。
すべし5ヶ条目
Q:すべし5ヶ条目について教えてください。
「肺を狙うべし。」
頭を撃ち抜けば即死だが、的が小さいから当てるのが難しい。肺を撃つことで呼吸をさせないこと。出来るだけ苦しませないように。
Q:どのくらいの人数で狩猟に行くんですか?
大体決まって3人ぐらいだな。鴨猟する人の3人と、大物を狙いに行く時のメンバーなど。
猟師仲間で分業してる。俺はどっちとも呼ばれるけど。んで絶対取るから。1羽でもね。追い込んでくれる人がいるからその人のためにも絶対とる。
Q:何が一番美味しいですか?
やっぱ猪だな。でも一般の人が食べるのはハードル高くて、提供する側がジビエの許可とか取らなきゃいけない。野生鳥獣の専用の解体場、あとは衛生責任者の資格をとって提供するっていう。だから結構難しいんだよな。
Q:何か願掛けなどのルーティンなどはありますか?
いや特にねぇ。
あるとすればこだわりだな。自分の使いたい銃を買う。実際の100万円の銃も、10万円の中古銃も同じだ。弾が出るんだから。だから腕次第だな。好きな車を買うようなもんだ。俺はランクルに乗りたいから乗ってる。そんなもん。
Q:仮に山で熊を仕留めたときはどうやって持って帰るんですか?
出せるところは引っ張って出す。んで、持ってきて解体。場所が険しいところだと次の日に解体するんだよ。リュック背負って。リュックに詰めて持ち帰る。
熊の狩猟に行く時、必ず持って行くのはナタ、ロープとリュック。あとグローブは必ず持って行く。熊と同じルートを登って行くから。だから熊の気持ちになって追うんだ。
Q:にかほ市内で狩猟人口はどのくらいなんですか?
今20人ぐらいか。昔は50人ぐらいいたからな。象潟だけで30人ぐらいいたからな。
Q:駆除などの要請が入った場合は、出役されるのでしょうか。
有害駆除隊はまた狩猟とは別で、市から委託された人たちで、要請あれば出役する。実際、要請があって行って熊に殺されたとしても何の補償もない。
例えば、山麓に山菜採りやトレッキングに行った人が熊に会った、やられましたって通報されてもな…だって熊の住処に遊びに行くんだからしょうがないよ。あなたの家に土足で入ってきたらどう思いますか?ってことなんだよ。
そんでエサの筍とか採っていくんだから、そりゃ熊からやられんのも(やられるのも)しょうがないんだよ。だからかわいそうな生き物なんだよ、熊って。
俺はそういうのをやりたくなくて、狩猟で勝負してぇなって思うんだ。だから今年も猟に行って、(銃を)外したけどそれは熊の勝ちなんだよ。木の影に隠れて顔出すんだよ。顔を出した瞬間に撃つんだけど、コンマ何秒で隠れるんだよ。(笑)
Q:熊は襲ってきたりしないんですか?
襲ってきたらもっと楽だからいいんだけどな〜。
Q:狩猟の際、熊とどのくらいの距離感になるんですか?
今年は100mくらいだな。今まで獲った2頭は30mと50mだな。俺らが近づいたからな。
すげぇおっきいよ。でっけく(大きく)見せるからな。
Q:サイズはどのくらいですか?
最初とったやつはデカかったな。180cm以上あった。吊るしたら俺よりデカかった。メスの個体は小さいよ。
Q:では最後に…菅原さんにとってにかほ市とは?
個人的に言えばどうでもいいところ。この市が盛り上がればいいとかさらさら思ってない。ここで自分で楽しんでるからいい。だから、そこに住んで自分で楽しみを見つけるっちゅうことなんでねぇかな。(見つけるということなんじゃないかな)どこに行ってもこれは同じだし。
だから、自分が楽しめる場所だな。ここに住んでるから、ここでの楽しみ方をしてる。
今回は狩猟について、なかなか知ることができないお話をたくさん聞かせていただきました。狩猟は危険が伴うだけではなく、命を奪うことの覚悟が必要であるということも見出すことができました。
菅原さん、ありがとうございました!