今回は、ただのバーではない?!と噂の『カクテルジロー』を営む秋田治郎さんにインタビューしました。カクテルジローが営業している1日のルーティンについて教えていただきました。

Q:ご経歴と現在の活動について教えてください。

大学生時代のバイトがきっかけでこの世界に入りました。その後にかほに帰り店を始めました。

カクテル『雪国』の生みの親である井山計一(いやま けいいち)さんに憧れ、彼の教室に通いオリジナルカクテル作りに励んでいました。
それから数々のコンテストにオリジナルカクテルを出品して腕を磨きました。
バーテンダーの登竜門である『スコッチウィスキーカクテルコンペティション』にて『オールドキャッスル』というオリジナルカクテルで準優勝しました。また、バーテンダーの技能を競う大会の技能部門で一位の名誉に与りました。

五十代で癌を患い、余命宣告を受けましたが一命を取り留め、そのおかげもあり、こうして今も『カクテルジロー』を営んでいます。

井山さんとのご縁がきっかけで、ドキュメント映画『YUKIGUNI』に出演させていただきました。
にかほと東京でも上映会とトークショーを開いていただき、立ち見になるほどの盛況で本当にありがたかったですね。去年DVDも発売され、全国展開されています。

カクテルジロー店内で撮影した秋田治郎さん
ルーティン

AM 5:00 起きる。

一回は海に行きます。海が大好きで、漁師免許を持っているので、船がどうなっているかなどのチェックを行います。朝の空気、風のにおい、雲や海の顔、山の景色、にかほは良いところだなあと感じるときですね。

釣ってきた魚を皆様に美味しく食べていただきたい。お酒と併せて楽しんでいただける場を提供したいとの思いがあります。

”なんでもや”とも言いますかね(笑)

午前中 仕入れに行く。

お酒や食材などの仕入れで午前中は終わります。釣りに行ったときは魚の下処理をします。その後は延々と裁き方です(笑)魚専用の冷凍庫もあり、釣ってきた魚などの鮮度を保つための設備も整えてあります。

PM12:00〜13:00 ランチ営業

ランチ営業はカレーだけ提供しています。要望があって1時間だけ営業してます。

午後 午後は色々。

予約がある時はフルで準備をしています。無い時は、船のメンテナンスをしたり、所用を果たしたり。

PM18:00〜AM0:00 夜営業

一応0時までの営業ですが、お客さんがいらっしゃれば、深夜1時まで開けることもあります。一次会からの宴会も承っています。 今コロナで三年ほどやれていませんが、三か月おきくらいで、ピアノ、ベース、サックスのトリオで、マイクやPAなどをセットして25人ほどの音楽ライブを何十年もやっています。3部制で飲み放題・食べ放題です。

*開店当初出していたカクテルメニューブック

AM1:00   就寝

早くて1時ですね。お客さんがいる時は一緒に飲みます。でも誰もいないと一滴も飲まないですね。1ヶ月でも3ヶ月でも。飲まなくて平気なんです(笑)

Q:こだわりを教えてください。

バーというより(笑)、まず、何が一番他のバーと違うかというと『食べ物』の提供ですかね?知らない人は食べ物があることを知らないです、メニューも出してないですから。ですから、常連客さんは予約時にリクエストしてきます。リクエスト以外は、店のお任せとなります。

人気メニューは、カレーは勿論ですが、釣魚料理、ミートパイ、ドリア、アヒージョ、ラザニア、クレープシュゼット、ショートブレッドも作ったりしますよ。また、化学調味料は極力使わずに調理するよう心がけています。全部手作りですから、数日かけて下準備をしています。

各種お酒、スタンダードカクテルは勿論ですが、当店でしか飲めないオリジナルカクテルも沢山ありますので、皆さんに楽しんでいただけたらと思っています。

オリジナルカクテルを作るときは、お客様の嗜好や体調、一緒にいらしたゲストの方にも合わせられるような提供を心がけています。

女性客がカクテルをオーダーされたときは、嗜好は勿論ですが、当日の洋服の色やアクセサリーの雰囲気、会話の内容などからヒントを得て、その方だけの、プライベートカクテルを作って提供したりもします。

個人名の付いたオリジナルカクテルも沢山ありますよ。

コンテストで賞をいただいた後、バーテンダーの組織で、イギリス、スコットランド、アイラ島の蒸留所を、数週間かけて周りました。本当に素晴らしく、作り手の情熱と信念はどの国も同じだと感じました。
特にスコットランドは、気候風土や人の気質が、古き良き日本と似ていると感じたのを覚えています。 あの時の経験は、今の自分の宝物になっています。

Q:お仕事をやる上でやりがいを感じるときはどんな時ですか?

開店当初からのお客様との交流が、今も変わらず続いているということですね。
また、地元の食材を活かした料理や地酒の美味しさを知っていただいたときは特にやりがいを感じます。

あと、嬉しかったのは、小学生の3人の子どもが、手紙を書いてくれたことです。子供たちの誕生日をきっかけに『カクテルジロー』に行きたいと言ってご家族で来店してくれたんです。プレゼントを持ってきてくれたり、こちらからもあげたり。そういう繋がりを大切にしていきたいと思っています。

他にも、二十数年間も、変わらず、自分や妻の誕生パーティーを店でやってくれている皆さんもいます。妻の誕生会では薔薇の花束をプレゼントしてくれたり、自分には珍しいお酒のプレゼントだったり。皆さんそれぞれの誕生会も予約してくれたりしています。

そうしたお客様の温かさに触れる度、この仕事の意義を感じます。

Q:とても愛されているお店なんですね。

Q:これからの展望などはありますか?

今一番やろうとしているのは、『にかほ100選』をやろうとしています。
春夏秋冬、各季節25種ずつのオリジナルカクテルとして、にかほを表現するものを作ろうとしています。
これは癌になる前に考えていたものです。

当時はまだ、にかほ市じゃなかったから『由利100選』という形でしたね。でも癌でそれどころじゃなかったから出来ないままになっていました。ようやく落ち着いてきて、50周年で盛大にやろうと思っていたところに、コロナでまた出来なくなってしまいました… 落ち着いたら再開したいと思っています。

Q:では最後の質問です。秋田治郎さんにとってにかほ市とはどう言ったところですか?

本当に、最高なところだと思っています。自分は海が好きだから特に、ですけど。
秋田県の中でも特に温暖な気候で、海山がすぐ側にある、素晴らしい自然環境、生活環境に恵まれたところだと思っています。


ただのバーではないと噂でしたが、美味しいお酒と料理、音楽バンドのイベントが開催される素敵な”なんでもや”だったんですね。
『カクテルジロー』は長く愛されていて、地域において必要不可欠なお店だなと感じました。 秋田治郎さん、ありがとうございました!

この記事を書いた人

秋田治郎

『カクテルジロー』を営む。バーテンダーの登竜門である『スコッチウィスキーカクテルコンペティション』にて『オールドキャッスル』というオリジナルカクテルで準優勝、バーテンダーの技能を競う大会の技能部門で一位を受賞する腕前を持つ。