今回は、喫茶店のcaf’e de Jet’aime(ジュテーム)を営む菊地 絹枝さんにインタビューしました。ジュテームでは本格的な珈琲のほかにラーメンやフレンチトーストなどたくさんのメニューを提供しています。地元から愛され、40年以上続くお店を営む菊地さんの1日のルーティンをお聞きしました!

Q:菊地さんのご経歴と現在の活動内容について教えてください。

出身はここ(にかほ市象潟町)のほんとすぐそこの町です。そこがお母さんの生まれたところだから。でも仕事の関係でずっとここじゃなくて、そのあと戻ってきたんです。

Q:一度にかほ市を出て、戻ってこられたんですね。

昭和40年代は、にかほ市にひと夏居たから、そのときの1日のルーティンを書いた(※菊地 絹枝さんが語る当時のルーティンについて、こちらからご覧いただけます)から「懐かしい!」って言う人がいっぱいいると思います。

今の道の駅の場所には、昔は観光ホテルがあって、結婚式場があって、お風呂があって、その横にプールがありました。そのプールに毎日1人で行っていて、プールに入って、水を舐めるとしょっぱいんです。海の水をひいてるみたいだったよ〜。

警察署の並びに、今も美容院があるんだけど、当時はその隣のうちに真っ黒い豚がいたの。お母さんの同級生のお宅みたいで、外国の豚?高いんだって言ってました。その豚に犬のリールを付けて盗んでくるの、実家まで。すると、そこの人が怒って取りに来たことがありました。

Q:そんなことがあったんですね!(笑)このお店自体を始められたのはいつからですか?

40年も前からやっています。建物は私の父が作ったんです。お店を営業したのは最初から私なんだけど、お父さんが愛知県名古屋市千種区今池町に今でもある、「幻のコメダみたいな美味しいコーヒーを作って」と言って建てました。

Q:ちなみに『caf’e de Jet’aime』というお店の名前の由来は何かあるんですか?

『樹』に『庭』に『夢』で『樹庭夢(ジュテーム)』です。お店のマッチにはそう書いてあります。私の父がここを建ててるときは、まだ秋田県にはブルーベリーとか、そんな木を植えてる人はいなかったの。でもここにいっぱいブルーベリーを植えたの。塩害で結局死んじゃったんだけど、色んな果物を父が庭いっぱいに植えてくれました。死んじゃったものもいっぱいあるんだけど、樹木に関しては『桜』は生きてるし、私は白い花が好きだから『オオデマリ』とか『コデマリ』とか『マグノリア』とか『モクレン』とか、白い花もいっぱい植えてくれてたの。

樹木でいっぱいのお庭に夢があったので『樹庭夢』になりました。

Q:なるほど。

みんなに最初は『樹庭夢(ジュテーム)』とか『姿麗人(シャレード)』とか、なんか暴走族が付けた名前みたいって言われました。営業許可書も『樹庭夢』ってなってるんだけど、「信号のところの喫茶店で待ち合わせね」って言うと、看板にその文字(樹庭夢)だと、みんなそれが読めなくて、それで今はカタカナにしたんだよ。

Q:それでカタカナで『ジュテーム』っていう看板になっているんですね。

そうそう。うちは待ち合わせとかが多いの。国道に面しているし駐車場も広いから。そういう時に看板が見やすいようにしています。飲食店の人はみんなそうだと思うけど、やっぱりどんなことでも投資しないとお客さんって来ないんです。だから、私は去年、塗装をかけました。もっと派手なピンク、ピンク、ピンクにしたかったんだけど、ペンキ屋さんに「恥ずかしくてこんな色は塗れない」って言われて妥協したんだけどね。(笑)なので、地味ですよ〜。シュン↓

Q:元々こういうお店をやりたいと思っていたんですか?

私はないです。父が、私は一人娘だし、にかほ市に帰ってこないし…っていうので作ったんです。私はここを建ててる間に、自動車学校に行ったり、秋田市の駅近くにあった『UCC』の直営店に朝一番の電車で行って、そこの店長から色々教わりました。

Q:なるほど。

自動車学校に行ったんですが、国道7号線がずっと混んでて「あ、ここで曲がったってことはあいつ(菊地さん)だ」っていうくらい渋滞を起こしちゃいます。

Q:そうだったんですね。(笑)

ルーティン

Q:ではルーティンのお話に入っていきます。

AM 5:00 起床

Q:普段はだいたい何時頃に起きられているんですか?

私は畑や田んぼもやらないんだけど、家族はいっぱいやってくれるよ〜。私の大のお気に入りは、ミニトマトのピンキーとチビキューリとぼっちゃんとくりぼう。起きるのは早くて毎日だいたい5時には起きてます。

お店の仕込み


Q:お店の開店までの時間はどんなことをしているんですか?

ラーメンをだいたい2日に1回くらいは煮ているの。『親鶏』を大きな鍋で煮て、2回くらい湯煎をして、それをぐつぐつ1時間半くらい煮ているの。煮て、油を取って味付けもして…。あとは店の中を掃除機かけたりしてます。

Q:ラーメンも提供されているんですね。

Q:コーヒーの方は何かするんですか?

コーヒーは冷凍保存してるから使う分だけ出してます。仕込みはそれくらいですね。

AM 10:00 開店

Q:このお店自体は何時から何時までやっているんですか?

開店は10時くらいです。コロナ禍の前はお酒も出してたから、週末は結構遅くまで営業してたけど、この町も、早めに道の駅をクローズしたりして、『にかほっと』(※道の駅に併設されている施設)の店たちも15時半頃で閉めてらっしゃることがありますね。うちに来るお客さんは「にかほっとに行ったけど閉まってた」って言うお客さんが増えました。うちもそれと合わせて、だいたい17時には閉めてます。

Q:コーヒーのこだわりはありますか?

やっと最近、山形県の酒田市に『コメダ珈琲店』ができたよね。(※ジュテームから一番近い距離にあるコメダ珈琲店)今はフランチャイズ化しちゃったんだけど、第5号店の『幻のコメダ』っていうお店が、私が学生時代に住んでたところにまだあって、そこは自家焙煎でした。自家焙煎をやるってことは、自分で生の豆を自分で焙煎するってことなの。そういうことをすると美味しいんです、その日は。でもどんどん豆って酸化するの。酸化しちゃえば、どんな豆でもだめなわけです。

だから私は自家焙煎はしてないし、機械でギュッてやるお店もあるでしょ?その機械のいいところは濃いコーヒーができるところです。それをミルクで割ったらカフェラテとか…その機械があれば同じ味ができるの。

その機械じゃないものだと『ドリップ』か『サイフォン』しかないの。でも『ドリップ』はお湯をかけて落とす時間で味が安定しないんです。『サイフォン』だったら、上がって落ちるだけだから、1杯目も2杯目も3杯目も安定してるの。これだったら腕もいらないです。

Q:それでジュテームは『サイフォン』を使っているんですね。

豆も簡単に言えば、例えばフライパンの中で簡単に煎るのが浅煎りなんだけど、それではカフェインが全然飛ばないの。魚で言うとこんがりなるまで焼くみたいな、それをうちはフレンチローストくらいにしてるから、8割くらいはカフェインが飛んでるの。紅茶と比べても紅茶の方がカフェインが強いの。だからそういうのはこだわってる。

あとは煮卵も凝ってるの。煮卵は作るたびに半熟加減が違うの。常温に戻してからタイマーで12分なんだけど、この12分が赤玉と白玉では違うんです。赤玉は殻が固いの。

それからメンマもこだわってる。メンマは毎日なくなると自家製で作ってるの。あとは自分は嫌いなんだけど、この辺の人はモツとか好きだよね。そのモツを最近圧力釜で、どの辺の柔らかさならお客さんがいいって言うかすごい研究してる。

Q:コーヒーの他にも色々なこだわりがあるんですね。

今は、圧力釜にモツと何を一緒に入れたらいいかメニューを研究してます。今はごぼうとネギかな…それを研究してます。”サ店(※喫茶店)でラーメン”とか、”サ店でモツ煮込み”とかちょっとやってみたいなと思って。

Q:ラーメンやモツ煮込み、冷やし中華まで、いっぱいメニューがあるんですね。

真冬で雪が降って寒くてたまらない日は、店の前に『冷やし中華』の看板を出すと結構笑えるよ。(笑)

Q:冬の冷やし中華の看板はみんな言ってますね。(笑)

言ってるでしょ。冬に冷やし中華もいいよ。車の中は暑くない?そういうときは食べたいんだよ、冷やし中華。一年中、冷やし中華を食べてるお客さんもいるんだよ。一年中アイスコーヒーを飲む人がいるんだよ。だから一年中やってるの。あえて真冬に冷やし中華の看板を出してやろうかなって思って。

Q:どうしてこんなにたくさんのメニューを提供しているのか、何かきっかけはあるんですか?

当時はコーヒーに400円支払うより、ビール1杯に500円支払う方という人が圧倒的に多かったの。コーヒーだけ飲むようなお客さんってほとんどいなかったんだよ。最初の頃は私も結構いいお酒を買って…当時は外国のお酒もいっぱい買ってたの。コーヒーだけでは、とても経営は成り立たないと思ってお酒も出して、そうこうしてるうちに色々と考えてラーメンも始めようと思いました。

Q:なるほど。

私の父が私に「コーヒーを1日100杯売れば十分食っていける」って言ったんだけど、それは『コメダ珈琲店』を見てるから。今でもYouTubeで検索すれば、愛知県名古屋市千種区今池町の『幻のコメダ』が出てくるの。100杯ばかりじゃないよ、そのコメダ珈琲店は。1杯400円だとしたら、10杯で4,000円でしょ。だから100杯で40,000円。コーヒーで100人もくれば十分、経営は成り立つの。

私の父は都会で生きてきてるから、一生結婚もしなくても、この子はこのお店をすれば食っていけると思ってたの。でも実際は「お父さん、コーヒーを飲みに10人もお客さんは来ないよ」って。私が行ってた『UCC』の直営店は、モーニングだけでも100人ばかりじゃきかないぐらいでした。でもこの町でコーヒー1日100杯なんて無理なの。

それで、「じゃあお酒も出そう」ってなったけど、私自身がお酒を飲んだら即救急車に運ばれるぐらいお酒が飲めないんです。でも漁師の方々が来てくれて、そういう人だってコーヒーも飲んでくれるようになったし、いいかなとは思ってます。

Q:そういう経緯があったんですね。

PM 17:00 閉店

Q:今(※取材時2022年冬)は夜の営業はやられていないんですね。

今はね。

Q:なるほど。

PM 20:45 この時間には布団の中に

寝る時間は決まってるの。20時45分からNHKのニュースがあるので、そこからタイマーを1時間かけて、20時45分に布団の中に入ります。”腸活”する時間が、夜の22時から26時の間の4時間。だから22時から26時の間に睡眠している人は健康なんです。

Q:そうなんですね。

それは、あとから知ったことなんだけど、とにかく22時から26時の間は睡眠に入るっていうのは健康の元なんです。だから病院で何も引っかかったことがないの。歯医者に行くだけ。血管年齢もすごい若いの。肌年齢もこの間、38歳って出た!(笑)

Q:すごいですね!

健康というのもあって、ジュテームは定休日がなくて、一年中休みがないの。お友達とちょっとお買い物に行こうというときは閉めたりするけど、それでも昼は絶対やってます。

Q:体調が悪くて休むということがないんですね。

ないです。今まで1回もないです。10年くらい前にインフルエンザに一度だけかかったことがあるの。最初は寒気を感じて、夕飯を作ろうと思って、たまたま鏡を見たらタコみたいに赤くなってました。熱を測ったら、37度以上ありました。皮膚科の薬も飲んでたから、皮膚科の先生に電話して、インフルエンザの薬を配達してもらったの。うちには高齢の母もいたから、その分の薬も配達してもらって…それが16時くらいだったんだけど、すごい熱がありました。でも一年中、お風呂に入らない日はないから、お風呂に入って薬を飲んで…お母さんに「明日は多分起きれないから弁当でも買ってきてね」って言って寝たの。それで次の日の朝起きたら何事もなかったかのように治ったの。だから休んだことはないんです。

Q:そうなんですね。

Q:では最後の質問なんですけど、菊地さんにとってにかほ市とは何ですか?

私が小学生の頃と今では景色は変わってないの。景色自体は変わってない。今だって海はあるし、住みやすいよね。親から子へ繋がってるよねっていう。田舎っていうのは、都会にはあまりないと思います。ジェネレーションギャップっていうのも私にとってはないです。

あと”田舎だから何にもない”っていうことは言わせない!もうネットで何でも買える時代でしょ?「田舎だから何もないよね」っていうのは自分の探す能力がないだけ。スマホの時代になって、田舎だからこっちは何もないって言う人は自己責任。ネットが何もないときは電車に乗って買い物に行ってたの。でも今は欲しい物は、探せばあるから、欲しい物が探せなくて…とかは通らないと思います。

Q:たしかに、何でもネットで手に入りますよね。

あと、ここは食べる物は絶対に美味しいよね。私はお魚は結構詳しいよ。サクラマス、ノドグロ、カワハギが大好きだよ、私は。お顔はみせられないおっかないお顔はなんだ!『ナンダ』というお魚も大好きです。

Q:にかほ市は美味しい食べ物もたくさんありますよね!

経営の工夫や、菊地さんのお客さんを楽しませる気持ちの表れとして、たくさんのジャンルのメニューが提供される喫茶店になったんですね。

ルーティンだけではなく、にかほ市の懐かしいお話までたくさん聞かせていただきました。♡ジュテーム♡さん、ありがとうございました!

この記事を書いた人

菊地絹枝