今回は、千葉県からにかほ市に移住し、移住リエゾン(地域おこし協力隊)として活動している石井智代さんにインタビューしました!

にかほ市の魅力を発見し、実際に移住した体験を元に、にかほ市の楽しみ方5ヶ条を教えていただきました。



Q:石井さんの経歴と現在の活動を教えてください。

にかほ市に移住する前は千葉県千葉市と東京に20年ぐらい住んでいました。生まれたのは大阪府ですが、子どもの頃一番長く過ごしたのは岐阜県です。祖父母も岐阜県に住んでいたので出身は岐阜県だと感じています。

母が富山県で、父が岐阜県の出身で、両親は大学の山岳部で出会いました。私たちが子供の頃、母の実家に帰省すると、両親は私たち姉妹を北アルプスに連れていってくれました。その記憶があって、山への憧れがありました。本格的に山登りを始めたのは夫と結婚してからで、二人でいろんな土地の山に登りつつ、移住先を探す旅を10年以上続けていました。

Q:山登りと移住先探しがセットだったんですね。

そうですね。当初は定年退職後の移住先として探していました。なぜなら千葉県って山がないんです。

Q:そうなんですね!初めて知りました。 

千葉市に住んでいた時は、どこかの山に行くときは首都高を経由して行かなければならなくて、いつもひどい渋滞を経験していました。自分たちは自然の癒しを求めて山に行くのに、そのために排気ガスをまき散らすことに矛盾を感じていました。そこで、お気に入りの山の近くに住めたらいいなと思い、いつかの移住先を探していました。

2019年に憧れの鳥海山に登りに来て、鉾立登山口から麓に広がるにかほ市と、そこに接する何とも言えない澄んだ色の海を見て、「なんて美しいんだろう」と思いました。心を奪われてしまったという感じです。ここに住みたいなって思いが体の中から湧いてきたんですよね。


ちなみに、登山に行く時は、何時間も移動に時間がかかりますし、下山後は自宅に帰らないといけないので、いつもは到着したらできるだけ速やかに山に登り始めるのが私たちのスタイルでした。

Q:ハードですね。

そうですね。でもこの時は暫くの間、麓の景色から目が離せず、なかなか登山をスタートできませんでした。

鉾立登山口で車を降りた瞬間に魅了された海は、鳥海山と麓の大地と海という、水の循環が凝縮されている場所だからあんなに美しいんでしょうね。

私が育った岐阜県って山と川がある美しいところだけど、海のない県なんです。

全国他にも綺麗な海がある場所はあるけれど「ここの近くに住みたいな」って思ったことは一度もありませんでした。でも「ここの海は本当に美しい。はじめて見た時は女神様がいるのかしら」と思いました。

そんなわけで、「ああ、ここに住みたい」って初めて思った場所がこのにかほ市だったんです。
それまでにかほ市のことは知らなかったので、にかほ市に住みたいと思ってから、たくさんにかほ市について調べました。調べれば調べるほど、どんどんにかほ市が好きになりました。           

Q:そういった経緯があったんですね。

私は短大の被服科を卒業したあと、アパレル業界に入ったんですが、色々と迷いつつ、インテリアの仕事がしたいと思って、インテリアコーディネーターの職に就きました。
その時に建築の勉強もしたりして、不動産の仕事もしました。その後、人材エージェントで企業への営業とキャリアコンサルタントの両方を担当する仕事に長く就きました。

Q:色んな仕事を経験されているんですね。 

複数の業界で多種類の職種についていたので、人材エージェントとしては扱いにくい経歴ですね。(笑)

転職は人生の大切なポイントの一つだと思うので、そういうタイミングにサポートできる仕事にやりがいを感じていました。


自分が人材業界にいたので、複数の業種や職種での経験や転職歴は、日本の多くの企業では評価されないということを分かっていました。

だから、私の場合「この先は何か手に職をつけて独立するしかないわ」と思っていました。

ちょうどそれと同じタイミングで「地方に移住したい。山のある暮らしがしたい」という思いを持ち始めました。そのため、その当時思いつく独立開業のための資格の取得や勉強をし、法律事務所で働いたりもしました。

ただ、地方に移住して、自分の経歴や資格がどのように活かせるんだろう?地方に移住して手に職といっても、一体何ができるんだろう?ということは分からないままでした。

Q:悩んだり葛藤していた時期があったんですね。

移住にはとても興味があったけれど、実現するための具体的な策はないまま長い間過ごしていました。そんな中、にかほ市がオンラインで行った移住イベントに参加しました。そこで、今、私が従事している『移住リエゾン』(※にかほ市への移住・定住を希望する人や移住してきた人ににかほ暮らしのサポート・アドバイスをする活動を行う立場の先輩に出会いました。
移住リエゾンの方にどんどん導かれて、にかほ市に移住することになるんですが、今はリモートで仕事をしている夫は当時、まだ通勤しなければならない環境でした。そのため、移住するのであれば新たに仕事を探さないといけないという状況だったので、にかほ市に出会った後も、行くに行けない悶々とする期間が3年ぐらい続きました。

その間私はいつか夢を叶えたい一心で、千葉市で暮らしながら新しく出会うお友達には、「秋田県にかほ市に移住したい石井智代です。」と自己紹介をしていました。言葉に出していたら実現するかもという希望を持って。(笑)
どうすれば移住できるんだろうと考え過ごしていた2021年の年末頃に、にかほ市のホームページで『地域おこし協力隊 募集』を夫が見つけました。
もしも決まったら仕事も住まいも具体的に思い切らなければならなくなるので、夫はしばらく悩み、意を決して私に教えてくれました。猪突猛進!の私もこの時ばかりは少し考え、やらない後悔はしたくないと思い、思い切って応募しました。

Q:なんでも挑戦できるのが羨ましいです 。 

挑戦してるんじゃないんですよ。これ!って思って行動したら挑戦になっちゃったんです。
でも、地域おこし協力隊に応募したものの、受かる確率は低いと思っていました。なぜなら応募当時私の年齢は45歳だったからです。私が応募する前年までは、『40歳以下』という年齢制限があったので、やっぱり若い人たちが受かるものだと思っていました。それなのに移住希望者の私が応募してしまって、移住担当の方を困らせているのではないかと応募後に少し心配しました。

Q:確かに若い方が多いですもんね。

幸い、地域おこし協力隊として採用していただくことになりました。
そこから準備をして、2〜3ヶ月後には移住していました。人生が動く時って、本当に絶妙なタイミングでポンって動くんだなって思いました。

実は、私はペーパードライバーだったんです。運転が大の苦手で、運転というハードルがあるから移住を諦めようかな…と思うぐらい運転が嫌いでした。だけど、にかほ市に移住できるなら頑張ろう!と心に決めました。

Q:にかほ市に出会ってから移住するまで、トータルで3年ぐらいかかったということでしょうか?

そうですね。2019年7月に鳥海山登山で初めてにかほ市に出会い、2021年に移住リエゾンと出会い、2022年5月に移住しました。

Q:現在は地域おこし協力隊として活動されていると思いますが、どのような活動をされているか教えてください。


移住リエゾンという立場で、にかほ市の移住人口を増やすためのPR活動として、SNS発信や都市部のイベントでのPR活動を行っています。また、移住を検討している方や移住された方のサポートをしています。移住後のサポートの一環として、市内での交流イベントも行っています。令和5年度からは、地域プレーヤーとのコラボで開催する『にかほ☆JOY』というイベントを開催しています。

Q:移住リエゾンの先輩に導かれ移住し、今はサポートする側になった石井さんの、すべし5ヶ条を教えてください。

すべし1か条目  自分が楽しむことを絶対忘れないべし

『鳥海山の登山』も『移住』も、まずは、自分が楽しいという気持ちを絶対忘れないことです。その気持ちを犠牲にしないようにしています。
私たち夫婦が、にかほ市に移住したのは、自分たちの人生を豊かにするためです。
今の移住リエゾンの仕事は、にかほ市のことを発信し人に伝える仕事なので、自分が好きじゃないところを嘘をついて好きとは言えないですし、自分がにかほ市を楽しんでいるその気持ちがベースにあることが大切だと思っています。

その『楽しむ』っていうのは、単なる『エンジョイ』ではなくて、どんなことも楽しむ気持ちみたいな意味です。

それは、心のゆとりなのかもしれないですけれども、そういう感覚を忘れないようにしています。

すべし2か条目 山ではゆったりした時間を過ごすべし

私の山登りは必ず山頂を目指すわけではないんです。百名山を目指している人とかいるのですが…百名山ってわかりますか?

Q:はじめて聞きました。何でしょうか?

日本全国の山々が100個セレクトされて、『百名山』と呼ばれています。山登りをされる方の中には、百名山の山頂を目指す方も多いんですけど、私たちは、気に入れば何回も同じ山に行き、山頂だけを目指すわけじゃなく、自分たちの好きな場所でゆったり過ごすことを目的にしています。なので、頑張って早く登ることも、好きな場所でゆったり過ごすためです。無理して、山頂を目指さず、その時の体調や天候など、その時の状況によってゴールを変えています。

その山のいろんな素敵な場所をみつけて、そこで楽しむ、ゆったり過ごす時間を大事にしたいと思っています。
そのゆったりタイムに必要なのが美味しいお菓子です。持っていくお菓子を自分で作ったりとか、そういうゆとりを暮らしの中の一つにしたいなって思っています。

Q:せっかく登ったのであれば、ゆったりしたいですよね。

降りるのはもったいなくて後ろ髪引かれます。

Q:これまで何ヶ所の山に登ったことがありますか? 

何か所か数えていないですが、百名山だけで数えれば、50座を少し超えるぐらいです。

Q:山を登る上で、登った時に必ずすることはありますか?

やっぱり先程の美味しいおやつを食べることです。
夫は、山登りに必要なコースタイムの確認や、天気予報を確認したりしてくれるんですが、私の場合は、このおやつをどこで食べるとか、をプランしてます。(笑)

Q:山登りする時に必要なグッズとかはありますか?

この保冷バックです。保冷の役割も兼ねて夏はゼリーを凍らせて入れています。真夏の暑い中、半溶けくらいのゼリーを食べる幸福も味わえます。



それと、私が絶対に忘れないようにしてるのは日焼け対策グッズです。このフェイスガードは多少の息苦しさはありますが、呼吸も妨げず、日焼け対策ができます。

あと、私はブヨや蚊に刺されやすいので、春の雪解けの頃には虫除け対策のグッズとしてこのネットも絶対に持っていきます。このネットを被れば虫刺されの心配なく歩けるので、すれ違う方から羨ましがられることもあります。

使い方は、帽子に被せて使います。これがあれば快適に楽しむことができますよ。

Q:女性が登山する上で持っていっていく方がいいものや、気をつけた方がいいことはありますか?

先ほどの、日焼け対策グッズとブヨ対策グッズです。あとは、鳥海山は中級ぐらいの山だと思うので下山もまあまあ時間がかかることを考えて登山していただきたいと思います。夏場はとても暑いので体力の消耗も激しいですし。


下山に思いのほか時間がかかってしまう場合もあります。下山で日が暮れちゃうと危ないので、ヘッドライトはあった方がいいと思います。

Q:山登りする時や、鳥海山に登る時に一番好きな季節はありますか?

東北でしか見られないヒナザクラ(雛桜)という高山植物があるんですね。桜っていっても木に咲くものではなく、地面から10センチ足らずの白い小さいお花を咲かせるんですけど、そういう東北の山じゃないと見れないものが鳥海山にもいっぱい咲くので、そのお花が咲く頃が一番好きな時期です。

その年の雪の量にもよりますが、6月ぐらいから花のシーズンがはじまります。春から夏にかけて花の種類がどんどん変わるのでこの時期は好きですね。

あとは、なんと言っても秋。 落葉樹のカラフルな紅葉も大好きなんですけど、草原の草が稲のように一面を金色に染める、『草もみじ』はただただいつまでも見ていたい光景です。


でも真っ白い世界になる冬も綺麗なんですよね。(笑)

Q:冬の登山は厳しいイメージです。

山スキーをされる方は雪のシーズンも鳥海山に行かれる方が多いと思います。
私は冬の鳥海山に登る体力がないので、手前の稲倉岳から真っ白い鳥海山を見ています。テント泊は、雪山キャンプが一番楽しいんですよ。 雪に覆われる冬だけ行ける場所がたくさんあって、周りに人がいないので、どこでも好きなところにテントが張れるんですよ。

Q:キャンプもされるんですね。 

重たい道具を運ぶのは夫ですけど(笑)

3か条目 自然と調和して生きるべし

やっぱり山が好きだし秋田県まで移住したのは自然が好きだからなんですよね。
自然の中で楽しませてもらってるから、自然を汚さないとか、生き物や植物たちと調和して生きることを大切にしています。そういう感覚をいつも持っていたいので、人間本位の視点で色んなことを判断したくないなとは思ってますね。自然と調和して生きるべきしです。

Q:自然や山を好きになるきっかけを教えてください。

決定的なものがあるわけじゃないですけど、私は岐阜県で育っているので、田んぼがあったり、山がある景色が私の原風景でした。
私は子どもの頃、あんまりお友達と馴染めるタイプじゃなくて 、友達との距離感や会話が難しかったり苦痛だったタイプだっ たんですよね。だから、自然に癒されていたんだと思います。

4か条目 物事は表裏一体、素敵な部分をみるべし

どんな物事でも、表裏一体であると思っています。

受け取る方の心持ちや、受け取る方の状況・立場で、同じ事柄もいろんな見え方がすると思っています。

白の時もあれば、黒の時もあるっていうのが世の中だなと思うので、何かを見た時に、黒い部分が見えても、それには、その時の背景があるだろうなって思い、そのネガティブな一面だけを捉えないようにしています。
必ずプラスの素敵な部分があると思い、そこを見るようにしています。

5か条目 積極的に関わるべし 

山登りも、移住も積極的に関わる事が大切だと思っています。

実は、自分から積極的に人に関わったりすることは苦手なんですが、せっかく移住して新しい土地に来たので、いろんなこと知りたいと思いました。
仕事柄もあって、いろんなことにお誘いいただくこともあり、予定が合えば参加するようにしてます。

今は家でゆったり過ごす時間は少ないんですが、その分、色んな人との出会いがあります。移住して楽しむんだったら積極的に関わるべし。というより、知ってみるべし。ですね。

Q:積極的に知ることや関わっていくことが大切なんですね。

実際に触れずに、見たり聞いたりしたことだけで想像しちゃうと本質に触れられないことが多いと思います。

移住を検討している方は、色んなエリアをリサーチする時には、実際その場所に行ってみて、そこに暮らす人と接することで自分に合った場所かの判断がしやすくなると思います。体感してみるべしですね。 

Q:移住リエゾンさんは『移住体験』をサポートされていると思いますが、それでもなかなか踏み出せない方もいらっしゃいますよね。

にかほ市の環境が素晴らしいことは絶対だと思っています。 来た人は、「海も山も近くて景色も綺麗」とみなさん仰ります。でも、それだけではなく他にも素敵なところはいっぱいあると思うんです。

なので、移住体験をサポートする時は、人とお繋ぎするようにはしています。 地元の人と接していただいて、それで肌感が合う事が大切だと思っています。人と繋がって、心の交流があれば、そこがオンリーワンの場所になるっていうことを自分が経験してるので。

Q:やっぱり、にかほ市は海も山もあるっていうところを魅力に感じる方が多いと思いますが、移住体験に来た方におすすめしたい場所はありますか?

私は天気が良ければ必ず鳥海山の鉾立登山口に連れていくんです。 鉾立登山口にお連れして、ビジターセンターの後ろ、海とにかほ市全体が見渡せる所までお連れして、「ここがにかほ市です」ってお伝えしています。

Q:そういう場所があるんですね 。 

鳥海山の登山口で、標高も1160mあるのでよく見渡せるんですよ。 自身の体験をもとにエピソードも添えてご案内しています。あとは、地理感覚が分かった方が思い出の中にも残りやすいと思って、にかほ市全体が分かる地図を広げながら説明することもあります。

Q:では最後の質問ですが、石井さんにとってにかほ市とはなんですか?

 人生を豊かにしてくれたところですね。


ご自身が、にかほ市に移住した経験があるからこそ、移住を検討している方に親身なサポートが出来るのだと思いました。

これからも、にかほ市の魅力や色んな楽しみ方をたくさん教えていただきたいです。

石井智代さん、ありがとうございました!

この記事を書いた人

石井智代