今回は、旧上浜小学校の『わくばにかほ』を運営されている佐藤公さんにインタビューしました。鳥海山にしか登らない?!と噂の佐藤公さんに、鳥海山を楽しむための「すべし5ヶ条」を伺います。
Q:経歴と現在の活動を教えてください。
12年間保育士としてにかほ市内の保育園に勤務し、昨年度仕事を辞め、旧上浜小学校の「わくばにかほ」の業務に転職しました。
Q:鳥海山に触れたきっかけなどを教えてください。
鳥海山は、すぐ麓の山で小学校の時に6年間鳥海山登山という行事があって登っていました。でも、子どもの時は特に興味はないというか、ただ行事だから登っているっていう感覚でしたね。
25歳頃に友達と4人で「登ってみるか!」って安易な気持ちで登り、それが大人になってから初めての鳥海山でした。その時に改めて良さに気づいたというか…子供の時の感覚と違って、すごく感動したんです。それから毎年10回くらいは登っています。
すべし1ヶ条目
「入山下山で感謝の気持ちを込めるべし。」山に入る時に一礼して、下山してからも一礼して終わるんですが、山はいろんなことを教えてくれる場所なんです。
水が貴重なのはもちろん、山には電気がないので、山小屋の電気は発電機で起こしていたりと、普段の生活とは違った非日常の世界があります。普段当たり前にしていることが山の上ではすごく貴重で、日常の生活って便利で幸せなものなんだな〜って改めて考えさせられるんです。
あとは登山道一つ見ても、昔の人の努力を感じるし、登り切った時の達成感なども山から頂くものなので、感謝の気持ちを大切に登ってもらいたいです。
すべし2ヶ条目
「景色を存分に楽しむべし。」山の上は非日常的な景色なんですよ。
いつも見ているものとは違った大自然!360度パノラマみたいな感じだし、鳥海山は海が近いので、海と一体化しているような、海から山が生えてきたような感じで面白いんです。海岸線沿いを眺めると男鹿半島なんかも見えて、天気予報でよく見る秋田県の形もなんとなくわかります。
山から下界を眺めると、「俺らってあんなところに住んでるんだな。ちっぽけだな」って感じちゃいますよ。(笑)
あとは夕日やご来光ですね。山頂から太陽が海に沈んでいくところが見れます。山小屋に宿泊して新山や外輪山側に登れば朝日も見れて、タイミングがよければ『影鳥海』という現象も見れます。朝日が鳥海山を照らして、その影が日本海に映るんです。日が昇る側と山頂付近と日本海側全てが晴れてないと見れないすごく神秘的な景色なんです。
Q:季節的に登れるのはいつ頃までなんですか?
10月頃までは行けますが、だいぶ寒くはなっていますね。初めて登るのであれば、7月半ば〜9月くらいが気候的にオススメです。山頂に雪が積もっても行けることはいけるんですが、ちゃんとした装備を揃えていないと危険ですね。自分は冬登山はしたことがなくて、基本夏場の登山と春先のバックカントリースノーボードに行ったりするくらいです。
すべし3ヶ条目
「高山植物を楽しむべし。」鳥海山は夏山ランキングの1位になったこともあるんですが、その理由は高山植物が豊富だからと言われています。
海が近いので、景色を観にくる登山客ももちろんいますが、高山植物目当てでくる方もいます。鳥海山だけで、世界の高山植物の1割があると言われていて、200種類以上あると聞きました。
Q:高山植物の特徴などありますか?
風に強かったりですかね。チョウカイアザミという鳥海山の固有種があるのですが、田んぼのあぜ道に生えているアザミと違って、茎が太く、花は下に垂れていて、風に耐えるような形で自生しているんです。
また、チョウカイフスマという花は小さくて可愛らしさがあるんですが、岩の間から生えてきたりと力強さもあります。
すべし4ヶ条目
「いろんなルートを楽しむべし。」実は、鳥海山の登り口は9ルートあるんです。
いろんなルートを登ると見え方が全然違って、とっても楽しいんですよ。鳥海町の百宅(ももやけ)口からだと、象潟(きさかた)口とは違って海は見えないんですが、振り返ると山並みがすごく綺麗に見えるんです。
自分は長坂口と二の滝口以外は登りました。全ルートの中で、長坂が超ロングコースなんですよ。標高的に300m〜400mぐらいからスタートするので、もしも登った場合は山頂までは行かず中間地点の御浜(おはま)で折り返すかもしれませんね。
Q:登ったコースでどれが一番よかったですか?
百宅コースが一番よかったですね。でも、登山口までのアクセスが悪いんですよ…車一台しか通れないような砂利道をずっと登っていくんです。こんなところ行って本当にたどり着くのか?と心配になるくらい。(笑)
公衆トイレや登山道はすごくキレイで、ブナ林の中を登っていくとどんどん開けてきて、山並みが綺麗に見える景色が最高なんです。それと、途中クマ公(溶岩でできたクマにそっくりな自然造形)に会えるのも楽しみの一つですよ。
すべし5ヶ条目
「下界から鳥海山を眺めるべし。」これは山に登った前提の話なんですが、登り終わった後に改めて眺めると今まで見ていた鳥海山とはまた違った感覚になるんです。「あそこにいたんだ俺」みたいな…それでなにかを実感するというか。
鳥海山って東北で2番目に大きい山なんですけど、それも含めて考えてみれば、辛いことがあっても鳥海山をみれば頑張れるんじゃないかな?って思うんです。
にかほ市は『鳥海山の恵み』をたくさん受けています。例えば「水」と言った目に見える物だけではなく、「感情」や「バイタリティ」などの恵みを鳥海山から頂いているということも実感してもらいたいです。
Q:公さんにとって、にかほ市とは?
「公」という人格を作り上げてくれたものですかね。自分が今の感覚を持っているのも、今後はこういうことをやってみたいって思っているのも、にかほ市の自然や文化、鳥海山から学んでることがあるからだと思うんです。
大人になった今でも山、川、海で遊んでいて、それぞれから学ぶものがあって、鳥海山がなければこの地域に山岳信仰というものは伝わらず、そこから派生した伝承芸能もやることはなかっただろうし…となれば、また違う人間になってたと思うんです。うまく表現できないけれどそういう感じですかね。
『山に登る』ことだけではなく、『鳥海山に登る』魅力を感じました。ただ登山するのではなく、すべし5ヶ条を意識し、登山することで心境に変化がありそうですね。
佐藤公さん、ありがとうございました!
佐藤公さんは、秋田県にかほ市の『裏』観光情報を届ける「にかほ市裏観光マップ」に出演しています。
Webサイト:https://www.nikaho-urakanko.com
裏観光マップの記事はこちら:https://tegake.com/release5/