こちらの記事は『漁師 佐々木一成氏のルーティン Vol.1』の続編になります。

にかほ市で漁師として活躍し、漁業の魅力をSNSでも積極的に発信する佐々木一成さん。今回は午後からのルーティンについてインタビューしました!

AM 12:00 昼休憩

PM 13:00 出港・漁場へ

― 午後はもう一度漁へ

Q:午後も漁に行くのは漁獲量を増やすためですよね?

そうだね。小型定置網漁の場合は、魚が夜は泳がずに日中に泳ぐこともあって、昼でも魚が入ることもあるから午後も漁に行くよ。それに網を空にしておけばその分の魚も入るから、できるだけ空にしておきたいって感じだね。朝に起こした網をもう一回起こして魚を獲りに行きます。

Q:午前中と作業内容自体は特に変わらない感じですかね?

そうだね。ほとんど何も変わらないね。午後の網仕事も大体15:30ぐらいまでするかな。

Q:実働で言うとどのくらい仕事しているんですか?

6〜7時間ぐらいかな?今の時期(11月)の話だけどね。このスケジュールは年間の中で楽な時期。

春になって日が昇るのが早くなってくると朝4:30に出港して17時に帰る時期もあるよ。

Q:次の日の準備などは終わる時に行うんですか?

特に準備はないね。次回の樽とか籠を補充するだけだから、それが終わり次第、帰るって感じかな。

PM 14:00 帰港・魚の選別

PM 14:30 網仕事。網の修理や新しい網を作る。

Q:破れているのを確認するのは、網起こししている時ですか?

陸にあげて、たぐっていって穴があったら塞ぐって感じ。

Q:破れているのを見つけたから修理って感じではないんですね。

沖で大きく破れてたら応急処置をする。それを陸に網をあげた時に直していくって感じだね。

Q:こういった地道な作業に楽しさを見出すのって難しいって思うんですけどどうですか?

俺は楽しいよ。手を動かして何か作るのが好きだから、網仕事もイメージを立体的に考えられるようになると、「今、網全体のここを作ってるんだな」「水中ではどうなっているかを想像したり」ここはなんでこういう構造になっているか理由が分かってくる。網仕事が嫌いな人は嫌いだけどね。

大きい穴だったとしても、塞がっていくのが楽しいし、網の一辺が同じ長さにできるかとかどれだけ正確に早くやれるかなとか…自分で遊びを見つけられるみたいな。面白くない仕事ってないと思うし、どれだけ自分で面白みを足していけるかが大事だと思う。つまらないっていうのは簡単だけど、それを面白くするのも簡単。自分の中でゲームにするような感じ。

Q:「面白くない仕事はなくて、自分で面白みを足すことが大事」というのは、とても大切ですね!仕事を楽しむ為にゲームにするというのは秘訣かもしれませんね。

Q:網をこういう風に直したらもっと取れるかも…というようにカスタムしながらの修理はしないのでしょうか?

スケールがデカすぎるからそれはしないね。ちょっと直したところで…ってところはあるから網起こしの時に網の構造で作業がスムーズに進まないことがあるんだけど、そのときは親方の指示に従って改修していくことはあるかな。

Q:なるほど。漁師の仕事で網の管理も大切なんですね。

Q:新しい網を作るっていうのは、今使われている網と同じものを作っている感じですか?

同じものを作ってるよ。定置網は『手網』と『身網』に分けられて、身網を作っている。ここら辺だと『身網』って書いて「むあみ」って言うよ。

Q:新しく作っているのは、仕掛け場所を増やすために作っているのですか?それとも今使っている網を変えるためですか?

変えるためだね。網仕事は結び方とかも変わらないから慣れればそんなに難しくない。

Q:網の修繕などはどのくらいのスパンでやるんですか? 

今は網を作ってるから毎日だけど、修繕だったらそんなにないかな。

Q:新しい網はどのくらいで完成するんですか?

1ヶ月くらいかな。今は15人くらいいるから1ヶ月だけど、4人(丸共丸の船員)だったらもっとかかるね。

PM 15:30 解散・帰宅

PM 16:00 読書

Q:これは朝と同じような感じですよね?

そうだね、朝の続きって感じだね。それと飲食店に卸した魚がある場合は、それを管理する事務作業をしたり。

Q:どんなジャンルの本を読むんですか?

ビジネス書が多いかな。これからビジネスしていく上で知識として必要だと思うから読んでる。今は『SDGsが開くビジネス新時代』を読んでるよ。メディアで取り上げられているのに自分はあまり知らないなって思って。

PM 21:00 就寝

Q:ご家庭があるとのことで、育児も両立されているとか…

そうだね、子どもと遊ぶというか…。3歳からはパパが全力で遊ぶのが大事らしい。これも本から学んだことなんだけどね。

Q:勉強熱心ですね。

勉強熱心っていうより、興味があるんだろうね。学ばないといけないって思ってやってなくて知りたいからやっている。好奇心が旺盛なんだと思う。

Q:子育てをしながら、Youtubeの編集や隙間時間を見てSNSの発信などしている感じですね。

そうだね。だからTwitterはやりやすいね。

Q:どういう内容を発信しているんですか?

やっぱり写真と文章の方が見やすいと思うから、漁の現場とか、今日どれぐらい獲れたか、珍しい魚が取れた時とか。

読んだ本の紹介などもしたいけど、フォロワーの方は漁師の話を見たいだろうから、もう少しフォロワーが増えたらやろうかなと思っている。まずはジャンルを”漁師の仕事”に絞っている。1日1回はツイートしておこうかなって感じ。

Q:なるほどです。SNSも戦略的に運用されているんですね。

Q:では最後の質問です。一成さんにとって、にかほ市とは?

自分の育った町って感じだよね。やっぱりアイデンティティとして鳥海山と海は揺るぎないものだし。帰りたくなる場所って感じかな。やっぱり海に沈む夕日が綺麗だったり、自然が豊かで小さい頃から生き物取ったりして自然が身近似合って、生き物に触れ合うのが楽しかったから、自分が子育てするときに、自然の多いところで育てたいと思っていたから子育てには最適な街だと思う。

どんな仕事もゲームのように考え楽しむことは、漁師の仕事だけではなく、どんな業界でも使える秘訣だと感じました。漁師のどんな仕事にも楽しみながら取り組まれている一成さんの姿で、漁師を目指す人も増えるのではないでしょうか。今後もSNSでの発信や一成さんの新しい取り組みが楽しみです!

佐々木一成さん、ありがとうございました!

この記事を書いた人

佐々木一成

にかほ市で漁師として活躍している佐々木一成(ささきかずなり)さん。鮮魚店での勤務経験もあり、SNSで『漁チューバー』としても活躍している。