今回は、にかほ市で活躍する漁師の池田 成竜さんにインタビューしました!成龍丸の船長であり一人で漁にでている漁師の1日のルーティンに密着です!

Q:成竜さんのご経歴と現在の活動内容について教えてください。

出身は湯沢市です。高校は湯沢高校へ行っていて、進学校でした。当時は向いてる仕事が一切分かんないな…と思っていたんですが、自分は結構釣りが好きだったり、野山を駆け巡って暮らしていた子供時代で、自然が好きだと思っていました。

進学校だったので、すぐに働くような流れではなかったので、何もやりたいことがなくて探していたら、漁師の学校が静岡県にあって、そこに入って1年間、全寮制の漁師をやりたい人たちが集まる学校に行きました。

Q:そういった学校があるんですね。

その学校は、中卒から入れる学校で監禁されているような環境でした。そこで、とにかくお金になる仕事がしたいと思って、1番きついと言われていた『海外まき網』っていう船に乗ろうとしたんですけど、学校の先生に「お前は辞めておけ、殺されるよ」と言われて『カツオの一本釣り』に落ち着いたんです。

その中でも日本一と言われている会社に入れてもらいました。結局きつくて続かなかったんですけど、1年3ヶ月くらいで航海日数的には9回くらいしか行ってないですね。1回の航海が1ヶ月半ぐらいの期間だったので。

Q:なるほど。

その後「自分が続けられる漁ってなんだろう」と思って、次は10日で帰ってくるキンメダイの船に乗ったんですけど、1ヶ月で辞めちゃって…。航海の数は3回でした。10日間なので、帰ってきてまたすぐ出航…みたいな感じでした。それも続かなくて、人のやる仕事じゃないというのが当時の感想でした。

今度は、もう遠洋とかお金を気にしないと思って、神奈川県の小田原っていうところの定置網をやっている船に乗ったんです。そのときは、たくさん魚が獲れて、陸に毎日帰って…っていう一般的な会社員のような働き方でした。タイムカードを切る会社だったんです。

Q:そうだったんですね。

今まで働いた場所は、大漁するとその分が給料に反映されて夢があったんです。今の場所は、タイムカードを切って、大漁しても給料も変わらない…魅力ってなんだろうと思いました。

そのときに祖父が象潟にいて、季節限定タコとスズキの釣り漁師をやっていたんです。家もあったので秋田県に帰ってきて独立を目指そうと思って、独立するために修行できるようなところがないかなって思って、後先考えずににかほ市に来ました。

Q:すごい行動力ですね。

にかほ市に来て1週間くらいは本当に悩みました。乗せてくれるような船がなくて…。でもそこで拾ってもらった船が平沢というか西目の船籍で、のりつぐさんという『憲洋丸』の方でした。そこの船に行って修行をして、3年目に差し掛かったときに『仁昭丸』っていう船の親方が、自分がずっと独立したいと言っているのを知っていたから、「来年、俺は辞めるからお前にこれ(船)をやるけど覚悟ある?」と言われて「覚悟はあります」って即答で、何も相談もせずにやってしまいましたね。すぐ「やります」と言ってスタートしました。

Q:引き継いでやられているんですね。

そうですね。引き継いで1人でやっています。

成龍丸(せいりゅうまる)池田 成竜さんがのっている船

Q:親がやっていて…という方もいらっしゃると思うんですけど、そういう流れではなかったんですね。

そうです。こういうタイミングがないかなってちょっと期待していました。後継を探しているようなとこはないかなって探しに来たところに、うまく当てはまったというか…。

Q:タイミング的にもよかったんですね。その中でも漁師の学校に行って、という方もいるんですね。

まず、漁師は伝手がないと始められない仕事だと思っていたのと、何も知らないで乗ると危険なんじゃないかなと思っていました。仕事が分からないのもあるけど、船なので人間関係が悪かったり、そういうブラックなところが多いっていう危険性を最初に危惧していたので。(笑)

Q:そういった理由だったんですね。

Q:ではお仕事のルーティンのお話に入っていきます。

ルーティン

Q:まずお仕事前のルーティンについて教えてください。

AM 2:30 起床

とにかく朝が弱いので一日で一番不機嫌。忘れ物にはとにかく気を付ける。

2時半に起きます。これは1番頑張っている時期の話です。まず起きたらとにかく忘れ物チェックをします。(笑)出たらもう戻ってこれないので。1人なので携帯を忘れたら終了な場合もあるし、とにかく朝は忘れ物に敏感になりますね。

Q:なるほど。そして朝は一日で一番不機嫌なんですね。(笑)

はい。とにかく朝が嫌いなんですよね。夜の方が好きです。

Q:漁師さんだと結構大変じゃないですか?

僕たぶん向いてないと思います。(笑)漁に出ないと夜型になっちゃって、昼は寝ていて夜は起きてるみたいになります。

AM 3:00 出港・漁場選び

氷を積んで出港。寝坊しなければ自分が思った所で。

Q:でも2時半に起きて、3時にはもう出航なんですね。

そうですね。これは1番頑張らないといけない『アマダイ』の時期のルーティンになっています。

出航のときは氷を積んで、また忘れ物チェックをして、何か道具を積み忘れていないかとか、燃料はあるかとか。前の日にも確認はするんですけど、念には念を。

Q:そして出航されて、寝坊しなければ自分の思ったところへ行くと。

はい。(笑)寝坊したら他の漁師に聞きます。自分の目星をつけた場所が空いていなかったりするので。

Q:そういうときは空いているところを聞いてそこへ向かうんですか?

空いているところを聞いたり、行ってみてだめだったら隣がいいかとか…結構シビアです。

AM 4:00 投網

自分が一緒に落ちないように気を付ける。ミスがないか確認。

Q:そして4時頃に網を入れるんですね。

はい。投網ですね。

Q:自分が一緒に落ちないように気を付けると。ちょっと怖いですね…。

1人で網を入れるのは、船の中を動き回るし、ロープに足が絡んだりすると落ちていっちゃうので、1番神経を使いますね。

Q:網を1人でやるとなると結構大変そうですね。

船を操船しながら道具も落としてやって…という感じなので結構忙しいですね。

Q:忙しいし、力作業でもあるような感じがしますね。1人だと大変というか、危険な部分ですよね。

危険ですね。毎回ここだけはちゃんと考えます。死にますので。

AM 4:00 〜 9:00 網引き

潮の加減を見ながら引っ張り方を考える。

Q:そうですよね。そして網を引いていくとのことですが、潮の加減を見ながら引っ張り方を考えられるんですね。

そうですね。考えながら引っ張っていきます。

Q:その日の状況で変わったりするんですか?

やっぱり引っ張っていけないこともありますし、潮の流れを見て「どういう風にロープに力を加えたら進むかな」とか。

Q:なんだか難しそうです…。(笑)

やっぱり経験しながら…ですね。

Q:そうですよね。

AM 9:00 〜 PM 13:00 場網 魚外し

魚の鮮度が落ちないように少しずつ網を上げて、外した魚をクーラーボックスへ入れる。

Q:9時頃に揚網…揚網って何ですか?

網を上げることですね。網を上げる機械を『揚網機』って言います。

Q:なるほど。魚の鮮度が落ちないように少しずつ網を上げるのがポイントなんですね。

そうです。一気に上げちゃうと、刺し網なので外しながら上げていかないといけないというか。

Q:刺し網ってどういうものですか?

網に魚が絡んでくるというか、タモ状になるというか。アマダイは網を引っ張るので、網の目がタモの枠みたいになるんですよ。そこに魚がぶつかると網の中に入ってくるんですよ。

Q:そういうことなんですね。

PM 14:00 ゴミ外ししながら帰港

Q:そのあとは14時頃にゴミをはずしながら帰港されるんですね。

ゴミは場所によっては多かったりしますね。魚と一緒にゴミを外すと魚の鮮度に影響するので、網にかかってきた魚だけをはずして、ゴミはあとで帰るときに外すという感じです。

Q:外す作業も魚の鮮度に関わってくるんですね。

PM 15:00 水揚げ 網たき

魚を最高の鮮度で水揚げするためにとにかく急ぐ。

Q:帰港後は水揚げをされるんですね。

水揚げも1人でやったり、手伝ってもらってやったりもするんですけど、スピード命という感じで、とにかく急ぎますね。網たきというのは、次の日に網を綺麗にやれるように揃えておくことです。

Q:そういった作業が一通り終わってから帰宅という感じですか?

その前に次の日の買い出しに行きます。船の中にいる時間が12時間くらいで長いので、多めに色々と買っておきます。

Q:作業は基本的に船の中で全部済ませるという感じですよね。

そうですね。出航しながらとか、網を引っ張りながらとか。帰ってくるときは忙しいので、そんなに食べれなかったりします。

PM 18:00 次の日の買い出し

船の時間が長いので何が食べたくなるか飲みたくなるか考える。

PM 18:30 帰宅

PM 18:30 〜 19:30 ペットのお世話

生体のコンディション、温度・湿度の管理。餌やりと掃除。

Q:ペットも飼っているんですね!

爬虫類とメダカですね。結構な数を飼っています。

Q:それも全部お一人でやっているんですね。

そうですね。(笑)生体のコンディション、温度と湿度の管理、餌やりと掃除です。あまり手間がかからない生き物なので、毎日こうやっている訳ではないです。

PM 20:00 風呂、食事

PM 21:00 就寝

Q:ペットのお世話が終わってからお風呂に入ったり…という流れなんですね。

お風呂に入ったり、あとは就寝です。まあ寝ないんですけどね。(笑)寝れないので朝が弱いんです。(笑)

Q:なるほど。(笑)1番忙しい時期はだいたいこういったルーティンなんですね。

そうですね。休みの日のルーティンはペットのお世話くらいです。

Q:年間だいたい何日くらい漁に出られるんですか?

底曳きの倍くらいは出るんですかね。結構漁に出る方なのかもしれないですけど、明確には分からないですね。

Q:アマダイは何月頃がピークですか?

7月が1番忙しいです。でも、サケとかハタハタもあるので、僕が1番忙しくなる時期は6月〜9月の半ばまでという感じです。

Q:去年(※2022年)はどうでしたか?

去年の7月まで全然獲れなくて、1日1箱しか獲れない状況がずっと続いていました。2ヶ月くらい我慢していたんですよ。それで7月に入ったら急に獲れだして、助かりました。(笑)

Q:良いときで何箱くらいの魚が獲れるんですか?

良いときで最高58箱くらいです。

Q:差があるんですね。今は引き継いでどれくらい経ちましたか?

3年経って、今年で4年目ですね。

Q:最初から自分が思っている通りにうまくいったんですか?

最初は前の船の持ち主が1年間の流れを教えてくれるために、付いてきてくれたんですよ。1人でやらせてくれて、それを見守ってくれていたんです。やっぱり危険なので。それで2年目から1人で漁に出ました。完全に1人で初めてからは今年で3年目ですね。水揚げとか網たきとかはお手伝いしてもらいながらやっています。

Q:漁師という仕事をしていて、ご自身が気をつけているところはどんなところですか?

死なないことですかね。安全第一。

Q:たしかにそれって1番大事なことですよね。1人でやられている大変さもある中で、やっていてよかったことは何ですか?

「こうしよう」と思ったことを自分が思った通りにやれることです。仕事を自分が思った通りに動かせるっていうのはやりがいがあるし。でもそれと同時に大変なことでもありますね。

Q:全部を自分で決めなきゃいけないということでもありますからね。

1日の作業だけでなく全部そうで、漁に行くか行かないかも全部自分なので。だから寝坊もするんです。(笑)行かないというときもあるので。

Q:なるほど。(笑)行かないときもあるんですね。

Q:では最後の質問になるんですけど、成竜さんにとってにかほ市とは何ですか?

みんな良い方です。優しい町だなと思いますね。僕はあとから来て生活しているので、人の繋がりとか、面倒を見てくれる場所だなって感じます。その面倒を見てくれている人たちがいなくなっちゃったら大変だなと思います。そうなったときに大変な町だなと思いますけどね。この記事を見て興味がある方がいたら港でお声がけください(笑)

様々な場所で、様々な漁法の漁師経験がある池田さん。行動力があるからこそ、独立し一人で活躍できるのだと思いました。そんな池田さんの今後の活躍が楽しみです!池田 成竜さん、ありがとうございました!

池田 成竜さんは漁師図鑑に登場しています。ぜひ漁師図鑑もご覧ください!

この記事を書いた人

池田成竜

にかほ市の平沢漁港で活躍する漁師。にかほ市で発行している『漁師図鑑』にも登場している。