今回は、にかほ市の金浦漁港で活躍する池田 雅貴さんにインタビューしました!
漁協職員から漁師になった池田さん。漁に出る日のルーティンはもちろん、シーズンごとに変わるさまざまな漁法についてもお話を聞きました!

Q:はじめに経歴と現在の活動内容について教えてください。

金浦町出身で、漁師は約18年前からしています。

Q:漁師になる前は何をしてたんですか?

漁協職員をしてました。

Q:漁師になったきっかけはありますか?

外で仕事をしたいっていうのがあって、漁協の仕事内容が向いてなかったからです。親父も漁師してるし、もし親父が漁師を辞めたらいい魚が食べれないじゃないですか。じゃあ自分でやろうと思って漁師になりました。

Q:今(※取材時2月)はシーズン的にはどういう感じで漁をしているんですか?

3月から『桝網』です。『底網』もやってるけど。桝網が終わって、底網でアジ獲って、夏になったら潜って、9月は丸々休みです。その間は網修理とかをして、10月・11月でサケ、12月でハタハタ、1月:2月で底網です。底網は1月から8月までずっとやってます。

神陽丸(しんようまる)池田 雅貴さんがのっている船

Q:夏は底曳きに出ない期間もあると思うんですが、その期間に『建て網』の漁には出るんですか?

そう。だから朝に魚を獲って、それを片付けてから潜って…。

Q:すごくハードですね。それで9月は休んで整備とかをやる感じなんですね。

そう。その間にサケの準備をして網を出します。

Q:『桝網』や『鮭網』は網が違うんですか?

そうそう。形も全部違います。桝網と鮭網は同じ網を使ってるけど、底網っていうのはまず名前の通り底に沈ませてます。桝網みたいな形じゃなくて箱というか家みたいな感じで、魚を待ってるんです。それを海の底に沈めてます。

Q:なるほど。桝網や鮭網はどんな形なんですか?

それは『漁師図鑑』に載ってる感じです。(※『漁師図鑑』の詳細は こちら

Q:そうなんですね。

Q:象潟にも建て網ってあると思うんですけど、(金浦と)何か違いはあるんですか?こだわりがあるとか。

ないです。基本的には親父たちが作った網をそのまま使ってます。象潟との違いでいえば網目が細かいとか、網の節が太くなってるとか、そのくらいです。形は微妙に違うけど、大雑把に見れば同じかな。

Q:基本的にはそのまま使っていくんですね。

使えるからね。

Q:ではルーティンのお話に入ります。

ルーティン

AM 5:00 起床。天気、風、波のチェック。

AM 6:00 出港前

Q:仕事前のルーティンはありますか?

コーヒー、たばこ、空を見る。(笑)

Q:これはかかさず毎日やっているんですか?

そうだね。仕事の日は絶対です。朝起きて天気、風、波とかを携帯でチェックします。でもこれは結局”数字”だから、実際の海ではちょっと違うかもしれないし。それで外に出て空を見て、出ていくときに潮の流れと波のうねりの方向とかを見ます。空を見て雲が流れてれば風が強いってことでしょ?そういうのを見ます。

漁場に着くまでに潮の流れ、波向を見る。

漁場に着いたら、俺だけやってることっていうのが、仲買人と連絡取り合って「今日はこの魚が多いよ」とかそういう連携をとってます。

Q:なるほど。仲買人に金額などは委ねられてるんですか?

それはね。でもそこは交渉します。あっちからも提示してくるけど、お互いがwin-winになるようにっていう感じです。

Q:そうなんですね。だいたい漁場までどのくらいで着きますか?

普通にいけば20分かからないくらいです。15分くらいで着くんじゃないかな。

Q:漁場に着いてからは、網を入れる日と上げる日がありますよね?1日でどっちもやるんですか?

『定置網』だから、網を上げて魚が獲れたらまたそこに落としてきます。だからずっと海の中にあります。着いたら網を引き上げるんだけど、それが今9つあるので順番にぐるぐる回ってます。

Q:入ってる量にもよると思いますが、1つだいたいどのくらい時間かかるんですか?

入ってないときはすぐ。一昨日とかは朝から昼まで。(笑)約5時間弱です。

Q:網を全部回収するのに約5時間弱ですか?

いや、1つの網で。(笑)

Q:1つですか!?

そう。だから入ってればすごい入ってるんだよ。でも大体いっぱい入ってても1時間弱とかそのくらいやってれば片付けられます。一昨日は特別だったけど。

昼食時も天気予報をチェック。

Q:基本はお昼に帰ってくるんですか?

昼に合わせて1回帰ってくるんだよ。基本的には家に帰ってご飯を食べます。その後、魚を選別して終了です。

Q:網はお昼の時間までに上げられるだけ上げるっていう感じですか?

そうそう。

Q:1回で9つは大変ですよね?

いけるときもあるけど、やっぱり飽きるんだよ。(笑)9つ回れるってことは全然魚が入ってないってことだから。

Q:たしかにそうですね。網の位置は結構近いんですか?

そうだな。魚は今、仁賀保の方から入ってきてるからそっち向きに置いてあります。春になれば向きを反対にして…その時は1回全部の網を上げます。

Q:なるほど。

PM 17:00 夕食。魚価と天気予報をチェック。

Q:そして夕方くらいに伝票が送られてくるんですか?

んだ。それで伝票見て。

Q:ここで天気予報チェックもするんですね。

そう。携帯で見てます。

Q:その後は何かありますか?

例えば16時で仕事が終われば洗濯物を畳んだり、保育園に迎えに行ったり。帰ってきて17時でビール飲んで、18時頃にお風呂入って…。家のことと、子どものことをやってればあっという間に21時になって、寝る支度って感じです。

PM 22:00 就寝

Q:そして22時頃に寝るという流れなんですね。

そうだな。

Q:漁に出る上で意識していることはありますか?

俺は怪我しないようにしてます。怪我をするのはその人のせいだから。その人がちゃんとしてないから怪我するわけだから。波が荒いときとかは言うけど、基本、船の上では喋らないです。

Q:なるほど。

Q:では最後の質問になりますが、池田さんにとってにかほ市とは何ですか?

他の地域のことは分かんないけど、獲ってきた魚とかをもっと宣伝してもらいたいです。そうすれば多少は「秋田県の魚はいいよ」ってなってくるんじゃないかなと思います。

例えば栄治郎(※にかほ市内の漁師。TeGAKeのインタビュー記事は こちら )とかってそういうのを自分でやってるじゃん。俺はそこまではしたくないんだよ。そこまでいけば全部自分らでやらなきゃいけない。やっぱり忙しいときはめちゃくちゃ忙しいし、構ってられないもんね。だから市とか、そういうのを発信してくれるようなことを、漁師以外でやってくれる人がいたらいいなと思います。俺らの仕事は魚獲ってなんぼだからって思います。

にかほ市のいいところは娯楽はないけど災害もないことです。「大雪だ」って言っても大したことないし、そういうところは恵まれてるのかなって。自然もある、山もある、海もある、そういうところがいいと思います。

池田さんが漁師をはじめたきっかけのひとつである『親父が漁師を辞めたらいい魚が食べれない』というのは私たちも同じで、漁師という存在がなければ、美味しい魚を食べることはできません。日本の食文化を支える仕事であることを再認識しました。

池田 雅貴さん、ありがとうございました!

池田 雅貴さんは漁師図鑑に登場しています。ぜひ漁師図鑑もご覧ください!

この記事を書いた人

池田雅貴

にかほ市の金浦漁港で活躍する漁師。にかほ市で発行している『漁師図鑑』にも登場している。