こちらの記事は、『Leather & Diner knc 木内正信氏のルーティーン Vol.1 』の続編になります。
ハンバーガーと革製品のハイブリッドなお店、『Leather & Diner knc』を営む、木内正信さん。今回は、お店がクローズしてからのルーティンをお聞きしました。ハイブリッドなお店を経営するうえで大切なルーティンとは?
PM 18:00 閉店 片付け、次の日の準備
Q:そして18時頃に閉店になるんですね。
そうですね。18時頃に店を閉めてそのまま片付けだったり、次の日の準備とかをします。それが終わってから使った道具の手入れとかメンテナンスをして、その後、事務処理とかオーダーの見積もり出しなどをしています。
PM 19:00 革関係道具のメンテナンス
PM 20:00 新商品企画、デッサン等
その後にというか、並行しているんですが、”1日1回何かのアイディアを出そう”と決めています。本当に些細なことでも、既存のある金具をこう使ったら面白いんじゃないかとか、この革をこう使おうとか、本当に何でもいいので一つだけでも出すだけで次へのステップが一歩早くなるので。
どんなものでもいいので1日1つのアイディアを出す。
Q:アイディアが出ない時とかもありますか?
ありますね。ありますけど今は情報社会なので。そういう時は雑誌を読んだりネットサーフィンしてこういうの面白いなとか探します。
一つ情報を入れるだけで自分の知識の幅が広がるので、何かの時の引き出しを作るみたいな感じです。革に限らずハンバーガーもそうですけど。
例えば、Instagramを見ていて美味しそうなハンバーガーだな、これ何使っているんだろうとか。やっぱり情報ってすごく大事だなと思います。
県内でも新しいお店ができましたとか、そんなのやってるんだっていうアンテナを張っておきたいなというのはあります。
2022年の夏に出した「糸ピンス」が、それこそ秋田県内で一番最初に出せたのは日々そういう風に情報をチェックしていて、こういう面白いのあるなというのがあったから一番最初に出せたのかなと思います。
※糸ピンスとは…
「ピンス」とは、韓国語でかき氷のことです。シロップをそのまま凍らせ糸状に削った韓国で流行した新感覚のかき氷です。
Q:糸ピンス、人気でしたよね。
すごかったですね、2ヶ月で1,000杯くらいは出したので。あっという間に出ましたね。なのでやって良かったなと思います。
Q:味も色々出していましたよね。
そうですね。やっぱりこれいいだろと思って試作しても全然美味しくなかったときもあるし、頭の中だけじゃ難しいので、実際にいろいろ試してみるっていうのはすごい楽しいですけどね。
Q:糸ピンスの機械も特別なものですよね。
そうです、特別なやつがあります。案外他のソフトクリームの機械とかに比べるとハードルが低くて…。
基本的に人に驚いてもらうのが好きなので。「わあすごい」と言ってもらいたいので、何をするにしても驚かしたいというか、喜ばせたいというか。
Q:ハンバーガーも「チョーカイサン」とか。
ですね。(笑)そういう顔を見るのがすごい楽しいので。これから先もどんどん新しいことをあぐらかかずにやりたいなと思います。
Q:毎月マンスリーバーガーも出していますよね。
あれも大変なんですよ。(笑)どうしようと悩むのですが、最終的に結構いい感じのやつができあがります。
Q:毎月全部違うものですもんね。
もちろんです。12回とりあえず今は変えて。来年からまた頑張らなきゃなって。(笑)
Q:新しい「フレッシュネスチキン」も出ましたね。
これはレギュラーメニューですね。金額も下げて…。本当は夏に出したかったんですけど、冬に出すものではないですけど。(笑)それでも夏に向けて定着してくれればなと思っています。サンドイッチ感覚で食べられるので。
PM 21:00 帰宅
Q:そして次の日の準備などをして21時頃に帰られるんですね。
そうですね、21時から22時の間くらいには家に帰って。普通にお風呂に入って、ご飯を食べてという感じですね。
Q:仕事関係は全部ここで終わらせるんですね。
家に持って帰っても全然スイッチ入らないので。(笑)
結構家に持って帰ることもあったんですけど、全く何も進まないですね。革の方が忙しいときは泊まり込みとか徹夜しながらやったりするので。
Q:革製品をつくる上でこだわりはありますか?
結構革製品を作っている人って多くて、何年か前からハンドメイドブームで沢山の人が始めたと思っています。その中でもデザイン然り、使いやすさ然り、例えば縫い目の綺麗さとか、もちろん上には上がいっぱいいるんですけど、その中でも負けたくないなっていうのはあります。
革製品にしても、面白さ、可愛さ、かっこよさや「こんな風に使うの面白い」っていう驚きを与えたいなと思っています。
でもそこに使いやすさがなくなってしまったら、本当に見た目だけのインパクトで出落ちみたいな感じになってしまいます。絶対に使いやすさっていうのは大切だと思っています。
なんぼ綺麗でもなんぼかっこよくても革製品って道具の一つなので。あくまで普段使いできる感じのイメージは崩したくないというのが根底にあります。
Q:革製品って長く使いますもんね。
そうですね。使えば使うほど味が出るっていうのもすごい魅力です。
綺麗なまま使いたいっていう人もいるんですけど、同じ革を使って同じ財布をつくったとしても使う人によって味の出方も違うので、それもまた面白い魅力の一つです。悩む前に使ってくれって感じです。(笑)
Q:ちなみに…ハンバーガーの方のこだわりはありますか?
ハンバーガーも見た目のインパクトも大事ですけど、やっぱり味ですよね。
味がしっかりしてないとっていうのはあります。何でもかんでも組み合わせればいいってものではなくて、案外シンプルな作りに見えて実は結構細かいところにこだわっています。
ソース一つにしても野菜の大きさ一つにしても結構緻密な計算で作っています。
Q:改良などされているんでしょうか?
結構してますね。ハンバーガーソースにしても、あれを足したりこれを抜いたりっていうのはしています。ここら辺はやっぱりハンバーガーと言ったら『マクドナルド』とかしかないので、結構年配の方とかも来てくれて初めてハンバーガー食べたとかっていう人もいたりいます。
ハンバーガーをお客さんに持って行ったときの驚きがまた嬉しいですね。「これどうやって食べるの?」みたいな。
あれはすごいいいですね、気持ちいいですね。(笑)秋田県内でもハンバーガー専門店自体がすごく少ないので…そう言った意味ではハンバーガーっていうのを出せてよかったかなと思います。これがラーメンだったら全然違いますからね。ラーメン屋で雑貨を並べてたところでっていう感じです。お互いがお互いを引き立ててるかなと思います。
Q:ハンバーガー屋自体がここら辺はないですもんね。
ないですね。グルメバーガーっていうのは。秋田県でみても10個もないんじゃないかな。5〜6個とかしかないと思います。
Q:ハンバーガーや革製品をにかほ市でやるというのはハードルがありませんでしたか?
だいぶハードルはありましたね。向こう(関西)から帰ってくる時に、完全に引っ越しが決まる前に各所に挨拶へ行ったらにかほ市じゃ無理ですよ、せめて秋田の駅前でやらないとみたいなことを言われました。でもそれで逆に火がついて、見とけよこの野郎って。(笑)
今はネット社会なので、店のオーダーとかもネットでも受けられるし多分大丈夫だろうという気持ちはありました。
実際、そのネットのオーダーより来てくれる人の方が多くて、本当に遠いところから来てくれることもあります。逆に場所は関係ないなと思いました。
他にお店がないから競合相手がいないので、うちに来てくれるみたいな感じです。一回行ってみようという感じがあると思います。
Q:にかほ市以外からもお客さんは来られるんですね。
来ますね、県外からも来たりします。
Q:皆さんSNSを見て来店されているんですか?
だと思いますね。みんな宣伝してくれるじゃないですか。(笑)
宣伝するつもりなくても写真撮ってあげてくれるだけで「ここどこ?」ってなるので。
Q:見た目がすごく写真を撮りたくなりますもんね。
そうですね。そういうのって大事じゃないですか。自慢したいじゃないけど、誰かに見せたいと思うようなものを作りたくて。特に女性の方なんかはSNSにあげてくれます。
Q:最後に…木内さんにとってにかほ市とは?
自分の生まれ故郷なんですけど、僕は一回県外へ出た身で全然帰ってくるつもりなかったんです、最初は。こんなところにいても…という気持ちがありました。
実際、歳をとって自分の子どもができて、やっぱり地元で育てたいなっていうのが大きくなって帰ってきたんですけど、そういう人をもっと増やしたいなって思います。
僕ら世代もそうですけどその下の世代も、やっぱり県外とかに憧れるじゃないですか。東京出たい関西出たいどっか出たいっていうのはもちろんあると思います。
そういった中でも、例えば帰省してきたときに「あそこのお店行こう」みたいな、「にかほ市にもこんなのあるんだな」っていうのをもっと増やせれば、地元の魅力っていうのは絶対上がると思っています。
そういった意味では店舗さんって、今は実店舗を持たないのもあるじゃないですか。ネットだけでとか。十分事足りるんですけど、街の魅力作りとしては店舗があることが必要だと思っています。シャッターが閉まってる商店街より全部開いてる方が絶対活気があるし、行ってみようとなると思っています。
そういった意味では国道7号線沿いに店舗を出せて、夜はネオンを光らせて…だいぶ浮いてるかもしれないですけど。(笑)でも街の魅力作りをしたいなという気持ちがあります。
にかほ市は絶対に無くなってほしくないです。秋田県が一番先に無くなるという風に言われていますが…。(笑)少しでも魅力作りに貢献したいなって思っています。
にかほ市で革製品・ハンバーガー専門店を開業し、それが街の魅力作りに繋がっていると感じました。お店も鮮度が高く面白い取り組みばかりだと思いました。
木内正信さん、ありがとうございました!