今回は、にかほ市で『ダリア』や『小菊』を栽培、販売している花卉農家の齋藤 大樹さんにインタビューしました。

花を育てる花卉農家の1日とは…?ルーティンについてお聞きしました!

Q:はじめに齋藤さんの経歴と現在の活動内容について教えてください。

仁賀保中学校を卒業して仁賀保高校に行って、専門学校入学のために東京の方に行って、卒業後は就職はせずにフリーターみたいな感じでした。25、26歳くらいで携帯の販売の契約社員を1年くらいやってから、パソコンの保守とかネットワーク保守、ソフトサポートのコールセンターに行って、そこで7年くらい働いていました。最終的には、そこの管理職みたいなのをやって、32歳のときに、にかほ市に戻ってきて就農しました。今は『ダリア』とか『小菊』、親の方の小菊の手伝いをしています。一応経営は分けてやっています。来年、再来年くらいには全部引き継いでという感じですね。

Q:昔からやられているという感じですか?

代々やっていますね。うちの家系図みたいなものを見ると結構前からやっているのかなという感じですね。

Q:小さい頃から親がやっているのを見てきているという部分もあると思うんですけど、最初から自分が継ぐというのは思っていたんですか?

小学校の頃は継ぎたいみたいなことを言っていたんですけど、中学校高校になって他にやりたいことができて、そのための専門学校に行ったりもしました。自分以外に兄が2人いるんですけど、2人とも大工をやっていたので、継ぐのは自分だろうなというのはずっとどこかにありました。

30歳過ぎくらいに『園芸メガ団地』というのがここで始まるということで、戻ってくるなら今しかないんじゃないかっていう話になって、じゃあ戻るかという感じでした。同じ年に同級生も会社を辞めて、この『園芸メガ団地』に入るっていうことだったので、タイミングいいかなと思いました。

Q:ではそのままルーティンの方に入っていきたいと思います。まずは仕事前のルーティンについて教えてください。

AM 6:00 起床、スマホチェック

10〜15分程度、SNSでニュースや話題を確認。

AM 6:30 ハウス見回り、出荷作業

ハウス内の作物の病気、虫の有無を確認する。出荷がある日は箱詰め作業。

朝6時に起きてSNSチェックとか、ニュースを見たりとかします。そこから今の時期(※取材時2022年12月)だと、ここのハウスに来て、病気が出てないか、虫が付いていないかとかを確認します。もし虫とかが付いているようであれば、それを殺すための薬を撒かなきゃいけないので。あとは出荷がある時期だと、切って調整したものを朝に箱詰めしないといけないので、朝に箱詰めします。

AM 7:30 朝食

そして7時半くらいにご飯を食べて1時間くらい休憩します。

Q:6時くらいに起きて、先に一度見回りをしてからご飯を食べるという感じなんですね。

そうですね。ご飯も7時半と決まっているので、その前にある程度見て今日は何をしようかとか…。前の日の段階で立てているんですけど、朝ハウスに来たら状況が変わっていたりもするので。

Q:そうなんですね。病気とかはなりやすいんでしょうか?

ハウスの中の物は特になりやすいですね。花は見た目が勝負なので、ちょっとでも傷んでるとだめなんですよ。それでだいぶ価値が下がっちゃうので。

Q:やっぱりそうなんですね。

花だけでなくて、葉っぱもダメージを受けたらだめなんですよ。軽い病気だと白い斑点ができたりします。それを殺さないといけないのですが、放っておくと葉っぱ全体が白い斑点だらけになってしまいます。1回出始めると結構止まらなくなるので、1回薬をかけて2、3日後に斑点が増えてきてるなってなれば、1週間くらいほぼ毎日薬をかける作業になったりもするので、薬代も結構かかります。普段は週1で予防するための薬をかけているんですけど、今の時期はハウスを締め切っていると中の湿度が高くなって病気が発生しやすくなりますね。

Q:夏場だと虫の方が大変そうですね。

虫はとにかく多いですね。(笑)一応全部ハウスに防虫のネットを張っているんですけど、それでも出やすいですね。葉っぱを食べたり、花を食べたりします。葉っぱを食べる『ハダニ』という虫がいて、夏はハウスの中が乾いているとダニが発生しやすくなるんですけど、かと言って水分が多すぎると蒸れて病気になったりします。

Q:そこが難しいんですね。

食べ物と違って、花はバンバン薬を使って予防するしかないですね。虫も基本的に『ハダニ』とか『アブラムシ』とか『スリップス』っていう花を汚すような虫もいたりするので、毎回別の薬をローテーションでかけています。

AM 8:30 採花、出荷

出荷に適した花を選別し収穫。病気等ついているようであれば防除作業。

出荷がある日は出荷後に採花、ハウス見回り等

そこから花を採ったり、出荷がある日は出荷に向かったりという感じですね。あとはちょっと花をいじったりとか、薬を撒くのも1、2時間はかかるので、そういう作業をして午前はだいたい終わりますね。あとは手入れしたりとか…。ただ今の時期は割と空くときは空くので、のんびりできるにはできますね。

PM 12:00 昼食

PM 13:00 出荷調整作業

午前に採った花を出荷用に調整

そして午後は出荷の作業です。午前中に採ったものを長さを揃えて下の葉を落とします。今の時期だと、だいたい16時くらいには暗くなっているので、15時半とか16時くらいで終わらせます。

PM 16:00 終業

PM 17:30 トレーニング

週2〜3程度で筋トレ、有酸素運動、ストレッチ等を実施

家でやることをやって、日によってですけど、筋トレとか有酸素運動を2時間くらいやります。

PM 20:00 夕食

PM 20:30 各種作業や趣味

PC等での業務がある場合は作業。または作業時に気になったことを調べる。無い場合はゲームやネット閲覧、映画、ドラマ鑑賞。

そこから家に帰ってご飯を食べたり晩酌をします。作成する資料があったり調べ物があったらそれをやることもあります。作業中に「これをやってみたらどうだろう」とかがあれば、調べてみたりという感じですね。特に何もなければゲームしたりネット見たりしています。そして23時くらいに寝ます。

PM 23:00 就寝

Q:時期的に1番忙しいのはいつですか?

8月ですね。お盆に向けての出荷が1番ですね。だいたい10万本以上を毎年出していて、出荷の作業や箱詰めとかがあるので朝の3時とかから箱詰めして、6時に終わってそこからまたハウスに行って薬をかけたりして…夕方18時くらいまでずっと花を採って、そこから翌日の箱詰め作業のために色々やって20時くらいに終わるというのが1週間〜2週間くらい続きます。

Q:家族総出で作業されるんですか?

そうですね。家族3人と、その時期はバイトの方を10人くらい呼んでやっています。外で花を採る人が4、5人で、採ってきた花を調整する人が4、5人で、10人くらいでお願いしたいところなんですけど、なかなかバイトが集まらなかったりするので『半農半X』とかがあればなと思って…。

(※半農半X(はんのうはんエックス)とは、半分農業、半分別の仕事=Xを持つ生き方)

Q:それで『半農半X』も取り入れてやられているんですね。

そうですね。

Q:これからもっとそういうのも活用していけたらいいですよね。

そうですよね。人がなかなか…こっちも安定して雇えないというのもありますし。雨だと仕事が無くなったりするので。冬場も何か作物を作り続けていけば、常時雇用できるとは思うんですけど、そうするともっと土地を広げてやっていかないといけないので、労力の割に儲けがどのくらい出るのか、そこまでする必要があるのかどうかっていうのはやっぱり思っています。

Q:なるほど。作業自体も腰にくるような作業ですよね。

そうですね。あの時期は腰が痛くなりますね。毎年痛くなります。その作業が終わっても1週間くらい痛いときもありますね。

Q:そういった部分の大変さの他に、この仕事をしていて大変なことはありますか?

大変なのは天気ですかね。ハウスの中は大丈夫なんですけど、外のものは、8月ぐらいの暑さの中でやるのもそうですし、雨が降ると花の収穫ができないので、雨が1週間続くとその期間は出荷できないというのは厳しいですね。

最近は9月、10月に強めの台風がくるので、それによって花がだめになったりとか、雨が降りすぎて腐ってきたりとか…結構ありますね。天候は厳しいですね。にかほ市は風が強いので、台風じゃないのに。(笑)

Q:そうなると、ハウスの中だけがいいのでしょうか?

ハウスの中だけにしたいんですけど、本当はそれが1番良いんですけど、どうしても露地くらいの規模でやらないと、ハウスはハウスでお金がかかるのと、品質があまり良くないんです。風とかが無いので細くなる部分があるんです。出荷のタイミングとかは調整できるんですけど、花の強さがないというか、しなしなで持ちが良くないというか…。露地の物の方が良かったりはしますね。

Q:菊は品種ごとにハウスと外と分けているんですか?

そうですね。菊は品種で分けていますね。『小菊』という仏花でほぼ使われるようなものは露地で、観賞用の『スプレー菊』というのはだいたいハウスの中ですね。スプレー菊は観賞用で持ちも良いので、割と値段が付きやすいです。時期を選ぶので、時期をはずすとガクンと値段が下がるんですけど、ハウスの中で遮光したり電気を付けたり色々と調整ができるので、そこを狙って作りやすいです。

Q:天気が相手だと、どうしようもできない大変さがあると思うんですけど、逆にやりがいを感じる瞬間はどんなときですか?

出荷は基本的にJAさんに出して終わりは終わりなんですけど、新しい品種だったり、新しい形でチャレンジして、「これどうですか?出荷しても大丈夫ですかね?」みたいにJAさんと相談するときがあるんですけど、思ったより良い物ができたりとか、買ってくれた方からたまにフィードバックがくる時です。

あとはうちの母が作っている『一輪ギク』という菊があって、ある年に聞いたんですけど、毎年、「生産者番号の何番のこの品種をください」という風に注文が入っているらしくて、そういうのはどんどんフィードバックしてほしいなと思いますね。喜んでもらっているというのが分かりますよね。

あとは基本的には、ちゃんと売れてお金が入ってきたときですよね。それがないと暮らしていけないので。(笑)出荷してから2、3週間後に振り込まれるんですけど、出荷した翌日くらいに「今回の出荷で、この品種はいくらで売れていますよ」という情報がくるので、自分が出した品種が高めで売れていたりすると、もっと頑張ろうとなりますね。

Q:頑張る活力になりますよね。ちなみにこれからこんなことをやってみたいなど考えていることはありますか?

皆さん今までやっていたのは、ハウスで収穫を終えたものは抜いて、違う品種を植えるのが普通だったんですけど、去年くらいから研究しているのは、一度収穫してそのまま、また肥料を追加してどこまで伸びるのかとか…。それもだいぶ売れるくらいにはなってきました。

ただやっぱり秋から冬になる時期なのでちょっと温度が足りず、半分くらいは捨てる可能性があります。加温しないと厳しいかも…というのがあるので、植える時期をちょっとずらしてみたり11月とか10月くらいに売れるようにした方がいいんじゃないか…など試行錯誤しています。過去にやった人もあまりうまくいかなかったらしいです。背が小さいまま終わってしまったりとか。電気代もかけて、どのくらいまでできるのかやってみようと思っています。

去年ちょっといけたのがあったので、同級生にも教えて「やってみよう」と今広がりつつあります。そういう感じで”実験”でやってみて、来年に向けてまた調整して、うまくいったら他の人にも共有して始められるようにしたいと思っています。

Q:そうやって広がっていくのはいいですね。

そうですね。なるべく費用は少なめにしてできるようにしたいです。

Q:では最後の質問になるんですけど、齋藤さんにとってにかほ市とは何ですか?

生まれ育った場所なので愛着もありますし、仲間もいますし、できるだけみんな幸せにというか、うまくやっていけるようにと思っています。同じ農家仲間でも、所得を上げたりとか、別の仕事でもちゃんと稼げるようにとか、良い方向になってほしいです。どんどん人が減っていってるんですけど、もっと住みやすいところになってほしいです。今、お店が少なくなっていたり選択肢があまりないですけど、人が増えたらそういうのも活性化してくると思いますし、にかほ市を良くしたいです。もっとにかほ市が良くなるようにしたいですね。



”花は見た目が勝負”ということで、花を栽培することは繊細で難しい仕事だと思いました。しかし、齋藤さんのように”実験”のように楽しみながら花を育てることが出来るのは、花卉農家の仕事の魅力の一つなのではないでしょうか。
齋藤 大樹さん、ありがとうございました!

この記事を書いた人

齋藤大樹