以前文化人で取材した吉川栄一さんが所属する鳥海山小滝番楽のお盆公演(令和5年8月13日)にお邪魔しました。コロナウィルスの影響により中止を余儀なくされ、今年は4年ぶりの開催となりました。
過去の記事はコチラから
吉川栄一さんの記事:https://tegake.com/bunka-8/
−小滝番楽の歴史
小滝番楽は、鳥海山の山岳信仰によって修験者に伝えられたと言われる伝承芸能で、約400年以上前から受け継がれています。式舞、武士舞、狂言舞の3つの舞の種類があり、現在は15演目が継承されています。天下泰平、国家安穩、武運長久、五穀豊穣など、若者が奉仕する「天下国家の泰平と豊作」を祈念する舞として伝えられてきました。平成元年には「秋田県無形民俗文化財」、平成24年には「国の記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」として指定されています。
−小滝番楽の紹介
現在保存会の人数は20代〜70代まで40名程度が所属しています。主な公演日は、金峯神社例大祭の宵宮祭(5月最終金曜日)とお盆公演(毎年8月13日)の2日間の開催だそうです。
−地図、アクセス
開催場所は、小滝集落の奈曽会館前に特設ステージを準備し、屋外で舞われます。
※雨天の場合は、会館向かいの生活改善センターにて開催されます。
住所:〒018-0153 秋田県にかほ市象潟町小滝北田124−1
−開演
鳥海山がすぐそばにあり、ロケーションが素晴らしく感動しました。また、4年ぶりの開催ということもあり、集落の方々やお盆で帰省した方、初めて見る方などたくさんのお客さんが楽しみに見にきてました。
−舞台裏に潜入
今回は準備をしている舞台裏にも潜入させていただきました。皆さん自分の衣装が入っている風呂敷を広げ、各々準備していきます。
舞で仕様する道具(手の甲につけるコテや帽子)
たすき掛けなどは師匠から
なんと!今日からデビューする20代の若者(2名)もいるそうです。どの保存会も継承者不足の中メンバーが増えるということはとても嬉しいことですね。
三社様のお面を祀り、公演が始まる前に保存会一同で御拝礼するのが儀式とのことです。
(写真左から翁面、若子面、吉田面)
−開演
番楽部長の挨拶
見ている子ども達は自然と体が動き、真似をする場面も。
伝承芸能の要素はもちろんありますが、他地域と同様集落に根付いた娯楽という要素が強く、見るからにハードな舞では歓声が上がったり、舞手の名前を呼びながら「〇〇頑張れー!」という声も聞かれます。伝承芸能なのに応援するというのは、意味合いが変かもしれませんが、地域のコミュニティーがそれだけ親密なのだと実感する場面でもありました。
小滝番楽の1番の特徴としては、演目によって太鼓のバチの太さを使い分けることです。テンポが速い細バチの「三拍子」の演目とテンポが遅い太バチの「五拍子」があります。
また、他地域と同様に『四方固め(東西南北の四方向に向かって舞いをする)』を行なっていました。
−舞の紹介(一部)
『大江山』
京都の「大江山酒呑童子(おおえやましゅてんどうじ)」というお酒好きな鬼を退治する舞です。源頼光、渡部綱、鬼に捕らえられた池田中納言姫が登場します。
舞には登場しませんが、昔話の「金太郎」も実は、最後は「坂田金時」というお侍になり、源氏とともにこの鬼を退治したんです。
『松迎え』
現在小滝番楽にしか存在しない演目。青竹をかつぎ、気品のある目出度い優雅な舞です。
『三人立』
他の地域では「三人太刀」と言って、字のごとく三人で太刀をもって舞うところもあるのだとか?にかほ市内の保存会では、棒をもち、三人が離れそうで離れない、絡まないようにくぐり抜けて舞うのが特徴的な舞です。
新人の登竜門の舞とも言われていて、今回は新人のデビュー日でもありました。
他にも個性ある舞が多数。
全15演目が終わったのは、22時頃。それまでお客さんはほとんど耐えることなく、公演をみておりました。
4年ぶりの公演ということもあり、たくさんの拍手が沸き起こります。「久しぶりの公演を見れてよかった」「やっぱりお盆はこれをみなければ帰ってきた気がしない」という地域の方や帰省した方の声も聞かれました。
小滝番楽保存会の皆様本当にお疲れ様でした!
にかほ市やお隣由利本荘市では、『本海流』という流派の番楽が数多く存在していますが、小滝番楽の流派はないということです。しかし、流派は違えど同じ演目が伝承されているのは、「どこかで混じっている可能性がある」と保存会の方がおっしゃっていました。太鼓のバチを使い分けるのも、何か関係していそうですね。 太鼓のバチを使い分け、リズムの変化がおもしろい小滝番楽を是非生で体感してみてはいかがでしょうか?
また過去の記事
小滝番楽『400年の文化を継ぐもの』も是非チェックしてみてください!