こちらの記事は、『ままのぱんや Chelsea 齋藤彩花氏のルーティーン Vol.1』の続編になります。
にかほ市で『ままのぱんや Chelsea』を営む齋藤彩花さん。
前回は手書きのお手紙やPOPなどのこだわりを聞かせていただきました。今回はお店をオープン後のルーティンについて伺います。
Q:GLAYの音楽がお好きとのことですが…
そうなんです。チェルシーという店名もGLAYの曲から取っています。GLAYのために生きています。(笑)
Q:お店の名前の由来もGLAYなんですね。もうずっと好きなんですか?
ずっと好きです。9歳から好きなので二十数年GLAY一筋です。
PM 15:00 クローズ
Q:そして15時にお店を閉められるんですね。
そうですね。パンの残り具合で『リベイク』に送ったりするので、その作業をします。時間によっては娘のお迎えもあるので、だいたい15時半くらいになったらママに戻ります。ここで、にこにこしている私じゃなくて超怖いママに戻ります。(笑)
そして怒涛の家事が待っています。洗濯してとかご飯作ってとか。娘の宿題をみないといけないですし。そういうのをやっていたらあっという間に20時は過ぎちゃいますね。
でもその間に娘と一つドラマを見るというルーティンがあります。娘はドラマが好きなんです。とにかく何でもドラマが見たくて、前日録画したドラマを見るというのを毎日やっています。そして寝かせてからまた残っている家事などをやったりしています。
Q:やっぱりすごく娘さんとの時間を大切にされているんですね。
大切になんてそんな綺麗なことは言えないけど…怒ってばかりです。(笑)
2人きりだからやっぱり喧嘩もするし、バチバチしますよね、女同士だから。
Q:私も母親とバチバチしてましたね。(笑)
やっぱりそうですよね。それも成長だとは思っているんですけど、やっぱりカッとなりますね。(笑)
Q:でも小さい頃に母が側にいてくれたことは私も覚えていますね。
覚えてるんですね。覚えてくれてるかな。(笑)
夕飯も料理が好きなのでいろいろ考えて作っています。そういうのをどれくらい覚えてくれているか分からないけど、私はご飯でしかコミュニケーションを深くとれなくて。そこは大事ですね。お風呂とか別々に入るけれど、夕飯は一緒です。
Q:味は記憶に残るんじゃないですかね?
どうなんですかね。あまり給食が好きじゃないみたいで。いつもお腹を空かせて帰ってきます。少食な方だからそんなに食べない方かもしれないですけど、普段より給食を我慢した分、食べますね。
この間、ふと娘って市販のパンを食べたことがないかもと気付いて。赤ちゃんのときからパンを作って食べさせていたので、もしかしたら市販の菓子パンを食べたことがないのかもと思いました。
Q:やっぱり市販とお店のパンは全然違いますもんね。
全然違うと思います。味の残り方とかが違うと思います。私ももう市販のパンが食べれなくなりました。菓子パン系は一個も食べれなくなって。多分、身体が添加物無しに慣れたというのもあるかもしれないです。
Q:なるほど、パンを作るときにこだわっている部分はありますか?
こだわりはただ毎日食べるものだから、やっぱり優しさが一番と思っています。
奇抜な味もありますが『本当に優しさが詰まったパンを作りたい。』というのだけはこだわっています。
あたたかさを感じる食べ物ってなかなか最近ないなと思います。例え、郵送で目の届かない人が食べても、なんか優しかったなと思ってもらえるようなパンにするのはこだわりですね。
作っているパンは砂糖とかも少ないです。小麦粉は北海道産を100%使用していて、小麦自体が甘みを感じます。本来の粉の甘さ、それを消さないように砂糖は控えめに…などいろいろとしています。
Q:素材の良さが生かされているんですね。本当の優しさへのこだわりを感じます。
Q:一番人気の商品は何ですか?
パンは日替わりですが、毎日出している『ちぇるしー』という渦巻きの食パンがあります。中身は毎日味が違うから、みんな楽しんでいるかもしれないです。
あとは私はベーグルが好きなんですが、理想のベーグルってなかなか出会えないし、この辺のパン屋さんでベーグルを買っても違うって感じてしまって、狂ったようにベーグルを作りました。
それで、うちのベーグルは私好みの配合のベーグルです。だから結構ベーグルが苦手なお客さんも食べやすいと言って食べてくれて、ベーグルファンを今ちょっとずつ増やしています。
ベーグルを買いにくるお客さんも増えていて、ベーグルは人気ですって言いたいです。すごい時間をかけて、開店前はベーグルと食パンを研究しました。本当はベーグル屋さんをやりたかったくらい好きです。でもベーグルを知らない人が多くて…。店を始めたとき、ベーグル屋さんはちょっと無理だなと思いました。自分の出したいパンっていうのはいっぱい他にあるんだけどお客さんのニーズもあるので。だからそこら辺をすり合わせながらメニューを決めています。
Q:『ちぇるしー』というパンはやっぱりGLAYの曲をイメージしていたりするんですか?
ちょっと可愛い感じの渦巻きが、年輪じゃないけどそれがイメージがいいかなと思って。あとはスーパーとかには売ってないような形のパンですし。
名前がついたのは、店の名前が先だったけど、その店の看板になるようなパンは『ちぇるしー』という丸いパンしかないかなと思いました。
Q:なぜチェルシーという曲を選択したんですか?
すごく個人的な意見ですけど、また会おうね的な歌詞でファンとGLAYが歌うので、そういう意味もあったりします。
お客さんとの「またね」もあるし、個人的に私はまたGLAYに会いに行くために仕事を頑張るっていうのも正直あって。(笑)
会いたくて会いたくてたまらないというような歌詞なんですよ。それを込めましたね。『ままのぱんや』は娘が書いたんですよ。「ママ、パン屋さんやるよ」っていう話をしたときに、お絵描きをしていて、看板に『ままのぱんや』って書いていてそれをもらおうと思って。看板もそのまま字を使わせてもらいました。
Q:色んなところに猫が入っていますが意味があるんですか?
猫が好きなんです。だから全部猫です。
Q:お店の内装も凄く可愛いですよね。
この内装になったばかりです。(※取材当時2021年12月)12月3日にが3周年で、3周年の日にレイアウトを変えたばかりで私もまだ慣れていないです。(笑)前は棚が2つだけがある状態でしたが、ちょっとイメチェンしようと思ってこんなごちゃごちゃした感じになってしまいました。クリスマスは結構焼き菓子が出るので半分お菓子屋さんになったりします。
Q:やっぱりその時期に合わせて変えたりしているんですか?
そうですね。本当に時期次第です。秋は、かぼちゃ、さつまいも、いちじくとかを使っていました。12月19日に金浦でイベントがあるのでその辺で季節ものは終了して、クリスマスです。
Q:イベントも出店されるんですか?
本当にコロナがなかったときは毎月のようにイベントがあって結構行ってたんですよ。それがコロナになってから毎月というのはないですね。
年に1回〜2回とか、今年は4回ですね。やっぱりイベントがないと辛いですね。イベントの日は前日寝ないで焼き続けるんですよ。前日の昼からずっと寝ずに焼き続けて、そのまま行きます。じゃないと間に合わなくて…お店のオーブンが小さいので。オーブンが大きかったら1回でバッと焼けるんですけど。やっぱりオーブンで個数が決まっているのでなかなかいっぱいは焼けないし、それで袋詰めしてラベルを貼ってとかをやっていると1人じゃどうしても時間がかかってしまいます。
なのでイベントが続くと大変です。月一のときは結構きつかったですね。月に2回とかあったときもあって。まだ最初の時は20代だったのでやっていけたけど、もうできないと思います。(笑)やっているときはアドレナリンが出てどんどんできるんですけど、終わったあとの死に具合が…。(笑)
Q:お店をオープンしている間にお客さんが来た時の対応など、意識されていることはありますか?
お客さんが来た時は一言二言は喋るようにしています。「天気いいですね」とかだけでもいいから。話しかけないでっていう雰囲気の人もたまにいるけど、大丈夫そうな人には話しかけて、次に来た時も話しかけてくれるような雰囲気にはしています。喋りに来てくれる人も多いですね。年配の人も多いし、やっぱり喋っていきたいっていうのもありますからね。
そういうのでもいいかなと思います。1人で家にいらっしゃる方も多いと思いますし。
Q:喋りに来るだけでもいいですよね。ここを活用してもらえると。
本当にそうですよ。長話になるとちょっとあれですけど。(笑)
世間話をして、パンに+αで楽しみがあるといいかなというので、私で良ければと聞いています。
Q:常連さんも多いですか?
常連さんも多くなってきましたね。コロナで遠くからは来れないから、前はこの辺の人と圃場方面の人と半々くらいだったんですけど、今はあまり本荘市方面の人が少なくなってきました。この辺の人もだし、ご新規さんで来てくれる人もいっぱいいるんですけどね。
常連さんにだいぶ支えられていると思います。だいたいみんな買うものが決まっているので。問題点でもあるんですけどね。新しいものに手を出してもらいたいなという気持ちもあるので、いつも同じものじゃなくて違うものも食べてみて、と思うんですけど、なかなかみんな冒険しないですね。
Q:よく新しいパンが出ていますよね。
何種類を私が作れるのか分からないです。生地があればどうにでもしてしまえるっていうのがあって。本当はやりたいけど、まだできていないパンとかもあるし、ウケるかが怖くて。(笑)無限にレシピができていくというか、だから毎日日替わりじゃないと出していけないですね。
Q:どういうタイミングで「これ作ろう!」となるんですか?
ふと、急にですね。それこそGLAYのライブに行くたびに、その地方のパン屋さんに行っていました。そこで沢山パンを買って、パンを買い込んで勉強するというか、食べて組み合わせとかを勉強していたんですけど、コロナで行けなくなってしまって…。
でも写真じゃ分からないんですよね。食べないと分からないから、自分でその研究をしないといけないっていうのが大変です。
意外とうちのパンは、バターたっぷりみたいなパンもないから和食にも合うし、夜ご飯にパンっていうのをみんなにやってもらいたいんです。なかなか洋食のときしかパンにしないだろうけど。私は全然きんぴらとか和食だろうがなんだろうがサンドしちゃうし、夜ご飯がパンは結構あります。何でもできるんだけど、皆さんあまり冒険しないですね。
Q:たしかにパンは朝か昼っていうのがありますよね。
そうなんですよ。結構うちでは夜パンありますよ。お菓子系のパンはないけど、ベーグルとか、やっぱりちょっと焼いてバター塗るだけでも食べ方が違うじゃないですか。
クリームチーズだったらもっと違うしとか、無限に楽しめるのにみんなきっとこのまま食べているんだろうなっていう切なさはあります。(笑)
本当はもっとアレンジ、手を加えてほしいなっていうのでシンプルなものを多くしていました。でも意外とシンプルなものがすごく余るということに気付いて、そのまま食べれるものがみんないいみたいです。お客さんのニーズとこっちの思っていることは違うんだなという、現実と理想は違うんだなっていうのは感じています。自分のわがままを通して1ヶ月やってみようかなとか、ちょっと思ったりもしているけど、なかなかできていないですね。
Q:では最後に…齋藤さんにとってにかほ市とは?
ふるさとです。私は上郷生まれなんですよ。だから上郷に行くと実家だなと思います。こんなところが嫌で東京都に行ったんですけど、戻ってきてから意外と見えてなかった良さも分かります。
こっちにいるときは「秋田の空は暗い、日がない」と思っていて…東京に行ったとき、すごく青空に見えました。周りは「東京の空は灰色だ」って言うけど、気分の問題だなと思いました。私の場合は、向こうに行って気持ちが解放されて青空に感じたんだと思います。(笑)
だから意外と、にかほ市に帰ってきて青空があるんだって思った日も多いです。
にかほ市は自然が多いので子供にはすごくいいなと思います。
子育てするには絶対いいです。都会で育つと不便を知らないで育ちます。とりあえず幼少期に不便しておけばいいかなと思います、どうせ都会に行くんだから。(笑)
娘をここで育てるのは正解だったなと思います、絶対に。
通学路におじさんたちが立っててくれるので、なんとなく安心感があって毎日心配して学校に向かわせることもないです。子育てには最適な場所です、にかほ市は。
私は人に恵まれたかなと思います。あまり人付き合いをいっぱいしている方ではなかったですけど…。お店をやる前はパートをやっていて、その時も惣菜を作るだけの狭いコミュニティだったけど、お店を開けていろんな人と接するようになって、意外と私は人と接することができるんだと思いました。みんなが娘を可愛がってくれるといいな、私の知り合いの人たちが可愛がってくれるといいなと思ってイベントも全部連れていきます。仕事しなさいっていって。(笑)
飲み会も一緒に連れて行くんですが、本当にみんなに可愛がってもらってありがたい限りです。その辺はよかったかなと思います。東京じゃそれはできないですね。みんなとても気にかけてくれてとても助かっています。お客さんが来ないとずっと1人で孤独なので。大雨で誰も来ない時は泣きたくなります。(笑)
お店のこだわりや、パンへの想いについて沢山お話をしていただきました。齋藤さんのお人柄もあって『ままのぱんや Chelsea 』が愛されているお店になっているのだなと思います。
子育て目線で感じるにかほ市の魅力も教えていただき、地域のあたたかさを感じました。
齋藤彩花さん、ありがとうございました!
※掲載日(2023年4月現在)では『ままのぱんや Chelsea 』は移転しています。TeGAKe取材時は移転前に行ったインタビューになります。