今回はair-clue株式会社に勤めている藤田 星美さんにインタビューしました。
ドローンは無線操縦で飛行する小型無人機で、主に娯楽用と産業用の2種類があります。現在は産業用として様々な場面で活躍しているドローンに携わる仕事人の1日に密着です。
Q:まずはじめに藤田さんのご経歴と現在の活動内容を教えてください。
高校を卒業して、いくつかの業種を経て2018年に『秋田マテリアル』に入社しました。2021年にドローン事業が立ち上がるということが決まって、自らドローン事業に立候補して異動しました。2023年3月に秋田マテリアル株式会社から子会社化し、air-clue株式会社として新たにスタートします。
今行っている業務は、講習がある日は主にご受講者様に、座学と実技でドローンを飛ばす上で必要な知識や操縦技術を教えています。講習のない日はお客様の問い合わせ対応やイベントの準備、機体のメンテナンスや、卒業後の生徒さんの技術証明書の発行をするための事務手続きをしています。
Q:元々ドローンには興味があったり、使っていたという感じですか?
私は『秋田マテリアル』の現場で働いていました。フォークリフト(※油圧を利用して昇降および傾斜が可能な荷役用のつめ(フォーク)を車体前面に備えた荷役自動車)を操縦して出荷や金属の検収、解体や仕分けをしていました。男性に混ざって力仕事をしていて、何歳までこの仕事を続けられるかな?体力的にもどのくらい続けられるかな?と思っていました。以前からドローンの操縦に興味があって、将来的には資格を持っていたら今後違う仕事もできるかもしれないと思って、ドローンの資格を取ろうと考えていました。
職場以外でもドローンについて耳にすることがあって、小学校で「この子たちの将来はこうなりますよ」というお話の中で、無人バスの説明のときにドローンが出てきたことがありました。こういう世界についていかなきゃなみたいな。(笑)
既に秋田県内にもいくつかスクールがあったので、「資格を取ってみたいな」と思って調べていたら結構金額が高くて、すぐに受講という形にはならなかったんです。検討していたら「当社でドローン事業やります」「ドローンスクールをやります」となったので、ターニングポイントかなと思いました。教官になりたいとかではなかったですけど、凄くいいタイミングでした。(笑)
Q:タイミング良くドローン事業部の立ち上げの話があったんですね。
はい。それでドローンの方にすすませてもらった形です。
Q:基本的にお一人で動いているのでしょうか?
最初は既存メンバーからは私だけで、新入社員と業務委託を含めて3人でスタートしました。現在は、air-clue株式会社として主に3人で活動しています。
ルーティン
Q:まず仕事前のルーティンについて教えてください。
AM 6:00 起床、愛犬と家族の朝食準備、白湯を飲む
まず6時に朝起きて、家族と愛犬の朝食を準備して、自分は白湯を飲むようにしています。元々冷え性で朝が弱いので、体温を上げるために。(笑)本当は朝、散歩にも行きたいんですけど、朝が苦手なのでなかなか行けてないです。
AM 8:00 出社、朝礼
それから出社して毎朝朝礼があります。そして朝礼が終わったら、各自の業務に移ります。講習がある日は、講習準備をします。
AM 9:50 ドローン講座の受講者とアイスブレイク
初日はお客様が「何の目的でドローンの資格を取ろうとしているのか?」「どういったことに使いたいと思っているのか?」とか、どういう分野なのかで同じ基本コースの授業でも、目的別によって伝えることが変わってきたりするので、何を求めてるのかなっていうのはコミュニケーションをとるようにしています。お客様のお話を聞いて、それから授業に入ります。
Q:なるほど。
AM 10:00 授業開始
授業に入ったら時間割通りに座学や実技をやっていきます。2日目以降は実技からスタートになるので、朝イチに体育館の方に来てもらっています。体育館で「機体の組み立てやそういうところから覚えてますか?」って。(笑)癖をつけてもらって、飛ばしていくという形ですね。
講座では10時間ドローンを飛ばす
講習が終わったらお客様が飛ばした飛行時間の確認です。10時間飛ばさなきゃいけないので、その10時間の飛行ログを同期したりします。飛行時間が足りないことの方が結構多いですね。バッテリーの持ち具合とか、お客様が疲れていたりすると無理はさせられないので、それで飛行時間を計算して、残り時間をどう進めていかないといけないのかを計算したりしています。
『JUAVAC』(※一般社団法人日本UAV利用促進協議会(JUAVAC)とは、産業分野におけるドローンの活用をリードする団体)って全国に39校あるんですけど、本部が東京にあって、技術証明書を申請するときに飛行記録の入力が必要なので、こちらとしてもデータが消えたら困るので、忘れないように気をつけています。
Q:そういった業務もあるんですね。だいたいはこの流れで仕事を進めていくという感じなんですね。
そうですね。使用したバッテリーとコントローラーも充電したりとかそういう雑務です。あとエラーが起きないようにメンテナンスをしたり、次の日の講習に向けての準備をしたりする感じですね。
Q:今(※取材時2022年)はどのくらいの方が講習を受けに来られているんですか?
人数でいうとうちはまだ全然少ないですが、今年1月から6月まで入校が続いていたので、今30人くらいという感じです。
Q:皆さんはどういう理由で来られるんですか?
今一番多いのが、『空中散布』と言って農薬を撒くためにドローンを飛ばしたいという農家さんだったりとか、測量の方だったりとかですかね。あとは、もうドローンを持っているんだけど飛ばし方がよく分からないとか、法律とかも関わってくるので申請の仕方だったりとか、そういう細かいところが分からないから聞いた方が早いという方もいらっしゃいましたね。
Q:この講習をするにあたって、教える立場として意識していることはありますか?
『JUAVAC』の教官になるにあたって心構えがあるんですけど、まず講習で意識していることは”ドローンを飛ばす楽しさを教えられる”ことです。またそれとは別に、楽しいことだけど、安全に対する意識っていうのを持ってもらえるように心がけています。
結構ドローンの事故が増えているので…。やっぱりドローンとか飛ぶものは落ちるものです。(笑)なので、「家電やスマホみたいに適当に使っていいものじゃないよ」みたいに、そういうところを意識しています。
Q:たしかに事故は増えていますよね。
あとは安全のためにお客様のパーソナルスペースに入らせてもらうんですよ。隣でマンツーマンでいるんですけど、その立ち位置や距離感だったりに気を付けています。
座学ではお客様と家庭教師のように、大勢にというよりは、1対1だったり、1対2だったりするので、発言しやすいように間合いをとることを意識しています。
午前中にドローンを飛ばすと午後の座学が眠くなるのでメリハリつけたりとか、お客様の気持ちも自分も習ってきているので分かるので、そういうところを意識しています。
Q:何か大変だったことはありますか?
大変だったのはやっぱり新規事業だったので前例がないし、どうしていいか分からないことだらけで、その場で対応していくしかなかったことです。
講習自体も人が違うので同じ授業は無いと思っていて、その人の操縦技術だったり目的だったりもありますし、トラブルも付き物ですよね、機体のトラブルとか。そういうイレギュラーが発生したときの判断っていうのは、その講習を受け持っている自分に責任があるので、そのときの行動や判断力が凄く大変だなと感じます。
Q:では逆にやっていて良かった瞬間はありますか?
4日間や5日間ぐらい講習を受けている人より、遥かに知識を持っています。教官という立場上、無茶はできないっていうのはデメリットとしてあるんですけど、仕事で依頼を受けて、実際に山の中で空撮をしたとき、初めて行った現場でも対応できるんですよね。それだけの技術を持てたっていうのと、自分じゃなかなか買えないような高額な機体を飛ばすことができるっていう。(笑)その分怖いですけどね。(笑)
Q:そうですよね。(笑)
あとは元々『秋田マテリアル』って挑戦したいという人を応援してくれるので、挑戦できる環境というのは良かったなと思いますね。
Q:いい環境ですね。ちなみに…気になっていたことがあって、色々なドローンがあると思うんですけど、一番高くていくらくらいなんですか?
当校にある機体で高いものだと、100万円以上はしますね。
機体本体だけで100万円はします。付属品とかバッテリーとかも含めると300万円ぐらいです。カメラだけでも50万円はしたり、なかなか買えない金額だと思います。
Q:高額だと飛ばすのは緊張しますね…。
今も結構怖いですね。
Q:ドローンは初めての人でも飛ばすことができるんですか?
全然飛ばせると思います。初めての人でも操縦方法や使い方が分かれば飛ばすことはできます。
Q:何かこれから挑戦したいこととかはありますか?
ドローン事業自体の分野は幅広いんですけど、その中でもメインは空撮だと思っていて、私はそっちの分野に進みたいということを社長にも話しています。
業務として、できればやりたいなと思っているのが、ウエディングフォトや卒業写真をドローンで空撮することです。写真のスタジオで綺麗に撮ってもらうのもいいんですが、山や海とか、そういう自然の中で高い所からとか、目線の違う風景と一緒に撮る業務も請け負えたらなと思っています。
Q:その写真を見るのが楽しみです!
Q:では最後の質問ですが、藤田さんにとってにかほ市とは何ですか?
自然が豊かで暮らしやすいところです。海も山も川も近くにあるので、「夕日が見たいな」「紅葉が見たいな」とか、思い立ったときにすぐに行けるところが魅力的だと思います。
あと美味しいものがたくさんあるので年々肥えていってます。(笑)
自分自身子どもがいるので、子育ての支援があるのもいいなと思いますね。
Q:にかほ市の好きなスポットとか、よく行く飲食店などはありますか?
ケーキ屋さんはあります。『パティスリー白川』の『トレゾ』が好きです。通っているせいか覚えられています。(笑)他は『湯の台食堂』とかも行きます。『六三五』とか…取材に出ていた方のお店とかは良く行きますね。
あとはちょっとコアな場所なんですけど、象潟の山の方から仁賀保の方に降りてくるところで、仁賀保の町全体と海が見える場所があって。場所の名前と言うと分からないですけど。(笑)そこが凄い綺麗だなって思っていて、ここで空撮写真を撮りたいなっていつも思いながら通っています。
Q:いつかそのアングルからの空撮写真も見たいですね。
そうですね、にかほ市の広報とかに使ってほしいです。(笑)案件をもらえれば飛ばしに行きます。そこの許可が取れれば。(笑)
Q:それいいですね!広報の表紙になるのを楽しみにしています。ありがとうございました。
ドローンが活躍する場所が増えていて、今後さらに講座のニーズが高まりそうですね。
藤田さんのドローンを使っての新しい取り組みが楽しみです。藤田 星美さん、ありがとうございました!