今回は、にかほ市の小砂川漁港で漁師として活躍している浅倉 智さんにインタビューしました!オールマイティに活躍する姿は、まるでフリーランス漁師。そんな浅倉さんのルーティンをお届けします!

Q:ご経歴と現在の活動内容について教えてください。

生まれは小砂川です。高校は仁賀保高校に行って中退して、海洋高校に行って中退して、すぐ土田水産で働いて、そこで成人式を迎えました。それから22歳くらいのときに船に乗りました。

Q:元々家が漁師だったんですか?

いや、全然。ただ小学校3年生か小学校5年生の文集に、「将来の夢は漁師になることと宝くじを当てること」って書いてたんだよね。自然が好きで釣りとかが好きだったから、最初は潜りたくて漁師になったようなもんだったんだけどね。漁師になりたくて船に乗って、1つ目の船は2年くらい乗って辞めて、『海寳丸』には5年か6年は乗ったかな。その後『松宝丸』に5年近く乗ったかな。辞めて、今度は『建て網』の船に乗って。月々の給料は今時期はないけど、アオサとか自分で商売した方が年収は上がるなって思って自分でやりました。

Q:今はアオサがベースですか?

今は海藻系がメイン。春から忙しくなるんだよね。

Q:オフのときは他の漁師の手伝いに行ったりするんですか?

呼ばれれば他の船に手伝いに行ってます。「乗ってけ」って言われれば乗っていくし、色んなパターンがあるかな。オールマイティに仕事してる。(笑)お金にはならないけど、それはしょうがないかな。

Q:色々な漁師の人を見てきたんですけど、浅倉さんが1番フリーランスっていう感じがしますね。

めちゃくちゃフリーランスだよ。

Q:そうですよね。でもベースは潜りなんですよね。

そう。潜りとアオサともずくだな。

Q:これは刺し網ですか?

これは刺し網。

Q:これもご自身のものですよね?

そう。去年の秋使う網が全部なくなっちゃって。引っかかって上がってこなくて。

Q:そうだったんですね。刺し網はここから出てるんですか?

そう。小砂川から出てる。船外機で出て、ちょちょっとやって。

Q:1年の流れはどんな感じなんですか?

1月〜3月の中旬までが冬休みで、手伝いに行ったりフリーランスをやって、3月の中旬からアオサ採り。アオサを採りながら、刺し網をやって、イイダコ漁やって、5月になったらもずくをやり始める。もずくとナマコをやって、6月から潜るかな。6月〜8月まで潜って、9月は去年は『海寳丸』にのったけど、普段は釣りしたり、刺し網したりして遊んだり。9月はフリーランスで、10月〜12月は鮭網に乗ってっていう感じかな。フリーランスだな。

Q:すごいですね。

フリーランスっていう言い方いいな。まるで大門未知子(※テレビドラマ『Doctor-X 外科医・大門未知子』の主人公。特定の病院や医局に属さない、フリーランスの女性外科医の活躍を描くドラマ)だな。(笑)よく考えればフリーランスだよな。

Q:今っぽいスタイルですよね。

なんか大門未知子だな。失敗されないな。(笑)(※テレビドラマ『Doctor-X 外科医・大門未知子』の主人公の名セリフで「私、失敗しないので。」というものがある。フリーランス女医の大門未知子はセリフの通り手術で失敗をしない。)

Q:ですね。(笑)ではルーティンのお話も教えてください。これは潜りの時期ですか?

そう。6月からのルーティンです。

ルーティン

AM 5:00 起床、コーヒーを飲む。

Q:だいたい5時に起きて…。

そう。5時とか4時半頃起きて、すぐコーヒーを飲む。たばこを吸いながらコーヒー飲んで1日が始まると。そして犬の散歩に行き、子どもたちを起こして子どもたちの準備をして。

6月は洗濯も早いな、前の日にやるか。犬の散歩に行く前に回していって、帰ってきてから干す。

AM 5:30〜6:30 犬の散歩

AM 6:00〜6:30 港へ

Q:なるほど。それが終わってから港に行く感じですか?

そうだな。

Q:朝食は食べないんですか?

ほとんど食べない。食べるときはまずない。

Q:基本1日2食なんですね。

2食か1食。夜だけとか。ほとんど1食かな。潜りのときも朝は食べないな。

Q:体が動かないとかはないんですか?

潜る前に食べたら戻しちゃうじゃん。だから基本食べない。食べなきゃいけないんだけどね。

Q:犬の散歩のあと港に行くんですか?

そう。1回朝集まるから。だから1回港に行くんだよ。

AM 7:00 子どもを送る。

Q:それで戻ってきて子どもを送っていくんですね。

7時に子どもを送って、戻ってきたら準備して。

AM 7:30 出港の準備

Q:それから7時〜8時の間くらいに海に…。

そうです。

Q:漁場は近いんですか?

そのときそのときかな。今日は深いところ嫌だなって思えば浅いところに行くし。

AM 8:00 海にダイブ!

Q:そうなんですね。だいたいどのくらいの時間潜ってるんですか?

6月だったら2時間くらい。早朝から10時ぐらいまでとか。ナマコを採りに行けば昼くらいまでは潜ってるけど。

Q:2時間くらいずっと海に浮かんでるんですよね?結構体に負担がきそうですね。

でもちゃんとたばこ吸いたくなったら吸うから。(笑)

Q:普通に水に入ってるだけでも疲れるから潜ってるなら相当ですよね。

海にはお金が落ちてるから。自動販売機の下に500円あったら拾うでしょ?(笑)それと同じ。みんなそうじゃないのかな?

AM 10:00 港へ帰る!

Q:今、小砂川でちゃんと水揚げ上げてるのって浅倉さんくらいですよね?

小砂川漁港でって言ったらそうかもしれない。若い人は底曳きとかに乗ったりしてるからね。

Q:小砂川漁港を拠点にしてる人って結構年上の方ですか?

年上ばっかり。今は7人くらいかな。

Q:そんなにいるんですね。みんなほとんど潜りですか?

刺し網ばっかりもいる。

浅倉 智さんがのっている船、海星丸(かいせいまる)

Q:そうなんですね。あと気になっていたんですけど、小砂川漁港ってどうやって船を上げるんですか?毎回陸に上げるんですか?※小砂川漁港は船が停泊しておく場所がない。

毎回上げる。ウインチがあるんだよ。エンジンかけてワイヤーで。

Q:特攻かけていくのかと思ってました。(笑)

最初はぐわーっと上がっていくよ、やっぱり。じゃないと波があるときに、ぐわーっと上がっていかないと…上まで行ってウインチ回してる間に横になったりするから。

Q:一度見てみたいです。

潮引いてるときは大変なんだよ。

小砂川は岩場観光するなら最高に面白いところだよ。洞窟みたいなのもいっぱいあるし、保育園の先生とかも乗せて行ってたんだよ。船で、凪のときしか行けないような岩の洞窟みたいなところとか。通り抜けはできないけど、入って行って。あちこちに湧水があったりする。

Q:そうなんですね。すごいです。

そうそう。

PM 13:00頃まで 選別など!

Q:カキのときはだいたい10時頃に戻るんですか?

カキだけのときは1回10時頃には戻るな。そこでカンカン(※カンカン・・・牡蠣の殻をトンカチなどでカンカンと叩き余分な部分を取り除き成形する作業)やってもらいつつ、別のを採りに行くか。

自分たちが採って、高く売れればそれでいいって漁師もいるじゃん。でもそこを直していかないと、将来的に「ここのカキは美味しくなかったから買わなくてもいいじゃん」ってなっちゃうじゃん。

Q:そうならないように毎回チェックしてるんですね。

毎回だよ。潜って一発目のカキは必ず殻割って、ここは大丈夫っていうような感じでうちらは毎回やってる。

Q:そういう話を聞くとやっぱり『小砂川ブランド』ですね。

小砂川ブランドだよ。徹底してる。大きさはちょっと徹底してないけど、品質の良さは徹底してる。だからお盆前だからなんだろうが、産卵始まったって言ったらあと辞める。お盆前とかは頼まれたとかならいいところで採るけど、競売に出すのはあといつで辞めようとか。誰かがそのくらいしないと始まらないんだよ。

Q:採るだけ採ってたらいなくなりますよね。

そう。「じゃあアワビにいくか」とか「アワビ増やすか」とか。去年の最終日のアワビも9kgとか。

Q:そうなんですね。

昔から親父から「アワビは浅いところ探せばいる」って教わって、その通りだなって。

沖に行っても海藻がないんだから。海藻があるのは波打ち際で、アワビは海藻を食べるんだからって。

そして石の深いところ。次の日行ってもちゃんとそこにアワビがある。『アワビ穴』ってあるんだよ。必ずアワビがいるところ。アワビとお話すれば、今日は石の下じゃなくて、上をただ泳いでるだけでアワビ採れるな…とかもちゃんと分かるんだよ。ただ採ってるだけじゃなくて、アワビと会話しながら採ってるんだよ。(笑)

Q:去年も普通にアワビは採れたんですか?

採れたよ。ただカキの注文とかもあるもんだから、アワビに時間かけてもだめだった。去年はアワビは当たり年だったから。10個しか採ってこないじいさんたちにも毎日30個とかあげてたんだよ。俺が採ってきてたから。

Q:注文によっては、別のものを採りに行ったりもするんですね。

ナマコが採れれば採ったり。ナマコはお金になるんだよ。こっちは安いけど高い地域もある。

Q:本当にフリーランス漁師ですね。

酒田の魚屋とかが買いに来るから、その人たちに売る。結構値段も違う。

Q:その酒田の方はこっちのせりには来ないんですか?

来る来る。

Q:浅倉さん以外にも採ってる人はいますか?

いるいる。いるけど安いもん。でも結構上がってるよ、1箱、2箱とか。俺はがっつりナマコならナマコを採りに行くから。お金になるからね。

Q:最近アワビがいないって言いますよね。

いないんじゃなくて探せないだけなんじゃないかなと思うけど。磯焼けはこっちもしてる。まあ人数もいないからなのかもしれないけど…。アワビもいるところには、ちゃんといるんだよ。でもやっぱり数は減ったね。でもアワビで潜るっていうのが分からない。

Q:浅いところにいるんですか?

そう。膝下くらいとか、背が絶対立つような場所。

Q:カキはやっぱり深いところですか?

カキは深いところから浅いところまで様々だけど、アワビに関しては浅い。

Q:カキで深いところに潜るとなると、深くてどのくらいになるんですか?

小砂川は金浦みたいに深い場所ってないんだよ。深い場所って言っても13mくらいが1番深いかな。

でもあんまりいかない。だって浅いところで間に合うならわざわざ深いところに行く必要ないじゃん。(笑)

Q:深いところは採ってないけどいっぱいあるんですね。

あるある。

PM 14:00 金浦の港へもっていく!

Q:無理して行く必要はないという感じなんですね。選別とかカンカンが終わったら金浦へ。

そう。金浦に運ぶ。14時〜14時半くらいに持って行って帰ってくると、子どもが帰ってくる時間になる。すぐそこにバスが止まるから迎えに出て、晴れてたら外で遊ばないといけないし、雨が降ってれば家の中でゲームとか。

PM 15:00〜16:00 子どもの迎え

Q:仕事以外は基本子ども中心に動いている感じなんですね。

そう。嫁が介護をやってて不規則勤務なんだよ。だから子どもの世話は大抵俺なんだよ。医者にも連れて行かないといけないし、習い事も全部俺。

PM 16:30 犬の散歩

Q:なるほど。帰ってきて犬の散歩にも行くんですね。

そう。犬の散歩。

Q:1日2回もするんですね。

雨が降ろうが熱が出ようがちゃんと、一応してる。20時頃帰ってきて、それからでも散歩に行く。

夜ごはんまで子どもと遊ぶ

Q:すごいですね!そしてご飯食べて子どもをお風呂に入れたり。

そう。今年から変わったんだよ、俺のルーティンが。今までご飯の支度から何からしなきゃいけなかったんだけど、家を解体してから全部お母さんがやってくれてて、その辺は全部変わった。

Q:そうだったんですね。

PM 21:00 就寝

Q:ちなみに…鳩を飼っているとか…。鳩のことも聞いていいですか?今何匹くらい上にいるんですか?

今は少ないよ。今50羽か60羽くらいじゃないかな。

Q:鳩は何用の鳩なんですか?

レース。この上にいるのは種鳩。子どもを産ませるための。

Q:鳩も血統はあるんですか?

あるよ。

Q:そうなんですね。レース鳩ってやる時期はあるんですか?

もうちょっと、今週あたりから始まるかな。俺は2、3年休んでるけど。

Q:それは目的地があるんですか?

一斉にトラックでみんな持っていくんだよ、飛ばす場所に。新潟あたりから100km、200km、300km、500km、600kmやって、1,000kmかな。

300kmまでは毎週あって、1週間休ませて400km、500kmやって、1週間休ませて600km、700kmやって、2週間くらい休ませて1,000km。

Q:どういうルールなんですか?自分の家に戻ってくるんですか?

そうそう。チップリングが付いてて、時計をセットしておくんだよ。家に帰ってきたらピーっと音が鳴って、何時何分に帰ってくるか、分速計算して。GPSがあるから、自分の家まで、どこから飛ばせば何kmとか分かるから、その分速を競うんだよ。面白いけど鳩は帰ってこないからな。

Q:迷ったらもう戻ってこないですか?

戻ってこない。たまに3ヶ月後とかに急に戻ってくるけど。でもそういう鳩ってどこかにいたってことだからだめでしょ。

Q:それはいつからやってるんですか?

2006年くらいかな。ってことは俺が漁師になったの2005年とかかな。漁師歴は18年くらいでレース鳩は17年くらいかな。

Q:元々、鳩は家業でやってたんですか?

やってない。親父世代って昔、鳩が流行ったらしいんだよ。昔、迷い鳩が来てカゴで飼ってて、うちの親が「ハトコ」って呼べば帰ってくるようになって…。それで鳩って可愛いなってなって。

Q:お金はかからないんですか?

かかる。でもそんなにかな。鳩は高い鳩を買った人から、その子をもらってくるか買ってくるか。

Q:結構重要なんですね。馬みたいですね。

馬と一緒だよ。だから好きなんだよな。面白いよ。

Q:何か血統とかの名前はあるんですか?

いい鳩にはいい名前が付いてるけど。

Q:トレーニングとかはないんですか?

毎日離すんだけど、最近ずっと離してないんだよ。離して1〜2時間散歩させて、家に入れて、餌やって。こっちは他で育った鳩だから戻ってこないけど、別の場所にいるのはここで生まれた鳩で、小さいうちから訓練を付けた鳩だから。何回も飛ばして、自分で酒田とかに訓練で持って行って帰ってきた鳩をレースに出す。

Q:鳩の訓練って何をするんですか?

持って行って離して家まで帰ってくるか。面白いんだけど大変なんだよ。薬はやらないといけない、ワクチンも注射しないといけない。だいたい注射すれば1羽か2羽くらい当たりどころ悪くて死ぬ鳩もいるんだよ。それを自分でやってるんだよ。(笑)

Q:それは大変ですね。(笑)

全部捕まえて1匹ずつ。

Q:それはどれがどれだか分かるんですか?

足環に番号は付いてる。生まれたときに足環入れて、どの鳩と、どの鳩の子どもっていうのをちゃんと付けておいて。

Q:そういうことなんですね。

そうすれば、どの鳩がレースで優勝したか番号見て分かるじゃん。ぱっと見じゃ分からないから。この鳩とこの鳩の子だから血統を残しておきたいなってなったら、こっちに入れて種鳩にするし。考えられないことばっかりするんだよ、鳩って。親子がけとか。その血を残しておくために。

Q:奇形とかは生まれないんですか?

今のところ生まれたときはないな。でも奇形の子はさすがにレースには出せないから種鳩として、子を産ませるためにとっておくだけかな。

Q:そうなんですね。しばらくレースはやらないんですか?

いや、来年の春くらいには始めるかな。今年は家が建つから。飛ばしててもうるさかったり、家が分からなくなっちゃったりしたら嫌だから。だからしょうがなく。

Q:なるほど。

Q:では最後の質問なんですけど、浅倉さんにとってにかほ市とは何ですか?

10歩歩けば山に着くし、10歩歩けば海に着くし、いい場所だよ。たけのこ採りとかも好きなんだよ。どっちに行っても自然がある。そういうところってあんまりないんじゃない?自然大好きっ子だからね。

様々な海産物を獲る浅倉さん。”フリーランスのように様々な場所で活躍する漁師”は、こんな漁師さんもいるんだという新しい発見でした。漁師にも色んな働き方があるのかもしれません。

浅倉 智さん、ありがとうございました!

浅倉 智さんは漁師図鑑に登場しています。ぜひご覧ください!

この記事を書いた人

浅倉智