今回は、にかほ市の象潟漁港で漁師として活躍されている柴田 海さんにインタビューしました!

漁師は時期によってルーティンも異なる職種。今回は3月〜4月末の赤ガレイ刺網期間のルーティンについて伺いました!

Q:ご経歴と現在の活動内容について教えてください。

高卒で製造業に入って1年半くらいやって辞めたあと、漁師になりたいと思っていておじいちゃんに言ったんですけど、色々あってなれなくて。そのとき『かくぜん』というスーパーの魚屋の求人があったので、そこで鮮魚部で働きました。3年くらいやったときに、ちょうど『隆栄丸』(※にかほ市の金浦漁港で活躍する漁師、佐藤栄治郎さんが乗っている船)で「人がほしい」って話を聞いて乗らせてもらえることになりました。そこから漁師ですね。

Q:おじいちゃんも漁師だったんですね。

そうです。そして隆栄丸で3年お世話になって、そのあとおじいちゃんが亡くなって「この船に乗らないか?」って言われて、元々はおじいちゃんと漁師をやりたかったので、その船でやることに決めました。それから象潟の『由福丸』に乗っています。

柴田さんがのっている船『由福丸(よしふくまる)』

Q:高卒で製造業に入ったときは、おじいちゃんに「漁師はダメだ」と言われていたんですか?

おじいちゃんは賛成だったんですよ。親父が今、一緒に船に乗っているんですけど、そのときはサラリーマンだったので、漁師の大変さとかを知っているから「辞めとけ」って言われてなれなかったんです。

Q:それで一旦、一般企業に就職されたんですね。

高校のときは野球をやっていて、土日休みがいいと思って製造業に入りました。

Q:なるほど。ちなみに最近の活動内容はどんな感じですか?

凪(※凪(なぎ)は、風力0(風速0.0-0.2メートル毎秒)の状態のこと。)がよければ漁に出てと言う感じですかね。そのくらいしかしてないですね。

Q:年間を通して1番大変な時期はいつですか?

6月ですかね。毎日凪で休みがないので。出港も早い時間だし、寝る時間がなかったり。

Q:日数も多いんですか?

(1ヶ月で)25日くらいは。

Q:そんなに出るんですね!

27日くらい出るときもあります。気温が高い時に網を置いておくと魚が腐っちゃうので、毎日回収しに行かないといけないですね。

Q:なるほど。漁をしていて1番好きな時期はありますか?

9月ですね。9月は『刺し網』とかがなくて、好きに自分がやりたいことをやれます。釣りをしたり…ほとんど休みなんですけど。(笑)10月、11月もサケがいっぱい獲れれば楽しいですけどね。出勤時間も8時とかでゆっくりなので。

Q:サケの時期は『建て網』なんですか?

はい。

Q:船酔いとかはするんですか?

しないですね。ずっとしなかったんですけど、コロナになってからするようになりました。(笑)

Q:そうなんですね。(笑)

ルーティン

AM 3:40 起床。タバコ、トイレ、朝食、コーヒー、トイレ、タバコ
この流れは絶対に崩したくない。

Q:ではルーティンについてですが、まず「トイレ・タバコの流れは絶対に崩したくない。」というのが気になります。

そうです。お腹が弱いので、朝2、3回はトイレに行かないと万全じゃないんです。起きて家でトイレして、ここに来てトイレして、まだでるときは船で走りながらして。(笑)

Q:トイレのときにたばこも吸うんですか?

いや、たばこを吸うと出やすいんですよ。朝起きてたばこ吸ってトイレ行って、ご飯食べてまたたばこ吸ってコーヒーを飲んだりして、出港に合わせて浜に来る。

Q:だいたいこの流れなんですね。

そうです。

AM 5:00 出港。

夜明けと同時に漁場に着くようにする為、出港時間は夜明けの時間で変わる。

Q:だいたい漁場までは何分くらいかかるんですか?

今は1時間くらいですね。飛島と象潟の真ん中くらいです。

Q:陸から何kmくらいですか?

10kmくらいですかね。

AM 6:00 網の巻き揚げ

AM 9:00 網揚げ完了、次回の網を入れ帰港。

道中にカスベの皮剥き、タラの頭を落とす。

Q:網は何ヶ所も仕掛けるんですか?

2つですね。

Q:それを上げて、また網を入れて帰ってくるんですか?

そうです。こっちの網を上げて、次回はこっちを上げて…っていう感じで順番にやっています。

Q:1回ごとということですか?

そうです。片方上げてまた入れて帰ってきて、次回出港のときは、もう片方に行きます。

Q:それはどのくらい時間がかかるんですか?

巻き上げに3時間で、ロープとか入れれば3時間半とかです。

Q:そんなにかかるんですか!?深いんですか?

だいたい300mとかです。

Q:そんなに深いんですね。

深いのと、網は横も長いですね。だいたい4kmくらいですかね。でも3時間くらいはかかりますね。

Q:それはおじいちゃんがやってた漁法と同じなんですか?

そうです。昔は3艘やっていたんですけど、今はうち1艘だけですね。

Q:少なくなっているんですね。

他よりは手間がかかりますね。獲れる物としては、アカガレイとかタラとか。基本的には『底曳き』をやっている場所なんですよ。なので基本的には深いところにいる魚ですね。たまにエビとかも入ってきたりしますね。

Q:そうなんですね。

AM 10:00〜10:30 帰港、網のゴミや残った魚をはずす。

時化で日にちのたった網の時はゴミはずしに2日かかる時もある。

Q:漁をする上でこだわりや、何か気を付けていることはありますか?

基本的なことはロープに足を入れないとか、怪我をしないようにとかです。特にカニとかは傷がついたり足がもげたりすると値段ががくっと落ちるので、カニに傷をつけないように網を破いて取ったりとか。

Q:網を犠牲にするんですね。

そうですね。基本的にカニは網を破かないと取れないので。それくらいですかね。魚に傷をつけないように、網の跡がついたりしないようにすることは気を付けてます。

Q:なるほど。

Q:どんなときにやりがいを感じますか?

やっぱりでっかいカニとかが獲れたときです。いいやつは活魚で出すんですけど、そういうのが掛かってきたときは興奮しますね。1kg以上のカニとか。

Q:船の中に生け簀とかがあるんですか?

生け簀はないんですけど、すぐ帰ってくるので氷に上げたり直接触れないようにしています。早くはずして早く持って帰ってくる感じです。

PM 13:00ごろ 昼食後、魚の箱詰め作業

PM 14:00 次回の投網準備

Q:帰ってきてからは陸でご飯を食べるんですか?

浜で食べたり、コンビニで買ってきたり。今時期は手伝いが7人くらい来てくれるので、みんなで弁当を食べたりします。

Q:その後に魚を箱に詰めたりするんですか?

はい。はずすのが大変だからお手伝いが7人くらいいないと終わらないです。3人だと絶対に1日じゃ終わらないです。

Q:船の上で全部はずしてくるわけじゃないんですね。

いいカニとか、いい魚だけですね。

Q:残ったやつは陸ではずすんですね。

そうそう。魚を全部はずしてその後にゴミをはずして。日にちが経つと食われて骨になってるときもあるので、タラの骨とかが1番やっかいですね。

Q:なるほど。この辺の漁法だと1番手間がかかるんですね。

そうですね。カニとかサメはひどいですね。

Q:いっぱい入るんですか?

めちゃくちゃ掛かってて、サメは網に刺さって暴れて網が絡まっていくので、ねじれて結ばれてたりします。それをはずしながら次の準備したりするのが1番大変ですね。

Q:結構大変なんですね。そういうのがあると、網を直すのに次の日丸一日かかったりもするんですか?

しますね。

Q:大変ですね。その分カニが大漁だと魅力的ですね。

そうですね。結構ドヤ顔で魚を運んで。(笑)「おっ大漁!」って言われても「大したことないですよ」って言って内心は「獲ったぞ!」みたいな。(笑)

Q:いいですね。(笑)

PM 16:00 帰宅、着替え後すぐに学童保育、保育園の迎え。

着替えないと子どもたちから魚臭いと言われる。

Q:そして終わったあとは娘さんを迎えに行くんですね。

はい。帰ってからが大変なんですよ。ほぼほぼワンオペみたいな。18時半にならないと奥さんが帰ってこないので、仕事で。

Q:そうなんですね。帰って着替えないと子どもたちに臭いと言われると。

はい。(笑)泥だらけで行くときもあります。17時とかまでかかるときもあるので、そのときは着替えないで急いで行くので。仕事を終えて迎えに行って子どもたちと遊んだり、天気がよければ散歩に行ったりして、お風呂入ってご飯作って髪を乾かして。

Q:すごいですね。

漁師らしくないかもしれないです。漁師って基本的に家のことを何もしないイメージがありますよね。今のこの時代はそういうことをやっていると夫婦関係がうまくいかないので。(笑)

Q:なるほど。(笑)1番忙しい6月はだいぶ大変そうですね。

しんどいですね。7月や8月も潜ったりするので大変ですね。顔に水中眼鏡の跡をつけて保育園に迎えに行って…恥ずかしいですね。(笑)

Q:その後に家のこともやっていて、すごいですね。晩酌とかはするんですか?

軽くしか飲まないですね。昔はめちゃくちゃ飲んでたんですけど、今はあんまり飲まないですね。ご飯作りながらとか。

Q:ご飯も作ってるんですね。

ほとんど毎日ですね。

Q:1日稼働してるんですね。

そうなんです。だから休みはないんです。寝る時は気絶するような感じですね。

Q:今は割とゆっくりできているときなんですか?

そうですね。シケが多いとやっぱり家のことを優先してやれるので、ゆっくりですね。3人子どもがいるので。2人だったら全然余裕ですね。1人なんてもうなんともないですよ。

Q:かっこいいですね!

でもご飯作るときに手伝ってくれたりもするので。

Q:上の子は何歳なんですか?

小学校2年生です。「やだやだ」って言うんですけど、自分がやりたいときは率先してやってくれます。

Q:基本は家に帰ったら子どもの面倒を見ることがほとんどなんですね。

時間はないですよね。

Q:趣味なども時間がないですよね。

ないです。空き時間を見つけて『ウイニングイレブン』(※サッカーのゲーム)が好きなのでやったり…そのくらいですかね。ご飯を食べてると21時とかになって、次の日も漁があるとすぐ寝なきゃいけないので。

Q:漁師は朝早いですもんね。今まで取材した漁師さんの中で1番忙しそうです。

他の船と比べると休みは多いです。1月の底網は網を入れて漁に出てるし、2月になれば刺し網も始まるんですけど、俺らは底曳きとの兼ね合いで2月18日からじゃないと網を入れれないんですよ。場所が決まってるんです。だから18日以降なら網を入れてもいいってルールが決まってるらしいです。許可は2月1日からあるみたいなんですけど。

Q:ローカルルールみたいな感じなんですね。

ですね。9月も漁はないから夏休みみたいな感じで、1月と2月は冬休みみたいな感じでまとめて休んでるような感じですね。だいたいそのときは網仕事とかしています。

Q:お休みはぎゅっと詰まっている感じですね。

そうですね。

Q:では最後に、柴田さんにとってにかほ市とは何ですか?

にかほ市から出たことがないから、今の生活とか環境が当たり前というか…。特に市がどうっていうことは考えたことはないですね。ただ子育てをしていると手当とかが厚いと思うので、そういうところの政策は助かってます。あとは海があって、山があって、楽しい町です。

漁法や期間によって漁師の仕事も大きく変わるのだなと思いました。大きな網やロープを使うのはとても大変な作業だと思いますが、驚くほど大きな魚介類が獲れた時や大漁の瞬間は、漁師でしか味わえない体験だと思います。子育てと両立する漁師もかっこいいですね!

柴田 海さん、ありがとうございました!

柴田 海さんは漁師図鑑に登場しています。ぜひ漁師図鑑もご覧ください!

この記事を書いた人

柴田海

にかほ市の象潟漁港で活躍する漁師。にかほ市で発行している『漁師図鑑』にも登場している。