今回は、にかほ市の象潟漁港で漁師として活躍している渡辺 貞之さんにインタビューしました!時期によって仕事内容やスケジュールが変わる漁師。今回は4月以降のルーティンを教えていただきました!

Q:ご経歴と現在の活動内容について教えてください。

象潟生まれで象潟小学校、象潟中学校、由利工業高校。

Q:何かスポーツはやっていたんですか?

サッカーを高校の途中まで。怪我して辞めて『123』でバイトしてた。(笑)(※123(ひふみ)・・・にかほ市内のファミリーレストラン)

Q:そうだったんですね。

高校卒業して、電子部品製造の会社に入って9年くらい働いたとき、親父のおじさんが船に一緒に乗ってたんだけど亡くなって、もう1人のおじさんと2人でだと仕事ができない状況になって。仕事しながらちょこちょこ手伝いはしてたんだよ。だから、別に漁師になっていいかなと思って。

Q:電子部品製造の会社に入社された理由を教えてください。

とりあえず入るところがなくて…。「県外には絶対行くな」って親から言われてたから、それで県内の電子部品製造の会社に入った。ちょうど俺が辞めるときに液晶テレビ作ってたんだよ。液晶テレビの売り込みをし始めて、液晶テレビ買えばポイント付くとかってあったんだよ。そのときじゃんじゃん(テレビを)作って、ある程度の数を作りきったら、注文がなくなったんだよ。そのとき辞めた。それから漁師になった。

Q:お父さんが漁師をされていたと伺いましたが…

親父とおじさんがやってた。今ちょうど『アカガレイ網』やってて、アカガレイとカニを『刺し網』でやってたんだよ。でも2人で作業するのは大変だから「乗ってくれないか?」ってちょうど仕事もなくなったときに言われて。

Q:タイミングも良かったんですね。元々漁師をやるつもりでいたんですか?

いずれはやらないといけないかなって。ただ親も「漁師はいいから、まず会社に入って社会経験してこい」って言ってたから。ただ「県外に行ったらお前は帰ってこない」って言われてたから。(笑)会社に入ってもちょこちょこ手伝いはしてたんだよ。ハタハタのときとかに。「漁師は面白いぞ」ってじいさん達はうるさいし。(笑)別にすぐ乗ってもよかったんだけどね。

Q:会社には9年も勤めていたんですね。

そう。28歳くらいまではいたかな。28歳の途中から漁師になった。

Q:船酔いとかもしなかったですか?

全然。小さいときから船に乗ったりしてて、日中釣りに行ったりしても何も酔わなかった。

Q:それだといいですね。

じいさんたちが「漁師は面白いぞ」とか「休みいっぱいあるぞ」って言ってて。(笑)休みいっぱいあっても、お金なればいいけどね。

Q:会社勤めから漁師になって収入は変わったんですか?

俺は”潜り”やるから乗せてくれって言って、歩合制。いっぱい獲れたときはいっぱいくれるし、ないときはないでいいからって。でも会社にいたときとあんまり変わらないかな。いいときはいいけど。

Q:でも休みは増えましたよね。

休みはいっぱいだ。(笑)

Q:いいですね。(笑)

Q:ちなみにルーティンのお話なんですけど、これは今時期のルーティンですか?

これは4月以降。今は4時半過ぎに起きて、5時か5時半くらいに出港してる。

AM 3:30 起床。トイレと歯磨き。

Q:なるほど。起きてから必ずすることはありますか?

トイレに行って歯を磨いて、あと弁当を温めたりとか準備する。そのあとは出港しながら朝飯食べたりかな。

Q:向かってる途中で朝ご飯という感じなんですね。

うん。

AM 4:00 出港・漁場へ

Q:漁場まではだいたいどのくらいですか?

40分〜1時間とか。

Q:メインは刺し網ですか?

メインは刺し網。4月になれば平沢の沖まで行くから1時間くらいかな。

Q:何kmくらいあるんですか?

何kmかな。ただ4月になれば陸から4マイル外まで行けるようになるから、今は4マイルまでしか行けないんだよ。

Q:そうなんですか?時期によって違うんですか?

3月いっぱいまでは4マイルまでしか行けない。4月になれば行けるけど。

Q:なるほど。それは刺し網が4マイルまでしかいけないということですか?

そう。

AM 5:00 網を引き揚げ

Q:網を引き上げるのにどのくらい時間がかかるんですか?

1本上げるのに1時間くらい。上げながら魚もはずして、上げてまた網刺して、1時間ちょっとかな。

PM 13:00〜 帰港。食事、荷上げ

Q:そのサイクルなんですね。それを繰り返して、だいたい昼過ぎに帰ってきて、まずご飯を食べるんですね。

まずご飯食べて、荷上げして、そのあとまた刺し網をたき直しして、次の日の準備をして帰る。今、職員がいないから底曳きの手伝いもしてくれって言われてて。

Q:人が足りてないんですか?

3月で1人辞めるから、そしたら2人しかいなくなるから。競売すれば、競る人と書く人と2人は必要だから、そしたら2人で競売してれば、底曳きの氷割る人いないでしょ。機械を使うとワイヤーがはずれたりするから、「使ったことがあるのはお前しかいないからアルバイトとしてやってくれ」って言われて。(笑)

PM 15:00 帰宅

PM 17:00 夕食

Q:忙しいんですね。帰ってきてからはどんなことをするんですか?

帰ってきて着替えて、1杯やってご飯食べて。晩酌してる。

Q:何を飲むんですか?

ビールだな。

テレビを見る

Q:テレビは何を見るんですか?

そのときやってる面白いやつ。昨日とかだとWBC見てた。(笑)

Q:なるほど。(笑)天気予報とかもチェックしますか?

見るよ。見るけどあんまり当てにならないから、天気予報は携帯で見るかな。

Q:他にも何かすることはありますか?筋トレとか。

筋トレは早く帰ればやったりするよ。ちょっとだけ。

Q:そして就寝っていう感じなんですね。

PM 21:30 就寝

Q:ちなみに漁をしていて特に気をつけていることは何かありますか?

怪我しないようにかな。

Q:1番危ないというか、怪我をするのは網に巻き込まれたりとかですか?

網に巻き込まれるとかはないけど、風が吹いてきて船が揺れたりするとき。

Q:なるほど。たしかに危険ですよね。何月の漁が1番好きとかはありますか?

やっぱりヒラメ網が面白いかな。4月だな。

Q:それは何でですか?

いっぱい獲れれば面白いから。(笑)

Q:やっぱりそこなんですね。(笑)それと疑問なんですけど、ヒラメって刺し網に刺さるイメージがなくて…。

ヒラメって砂の中に隠れてて、小魚とかいれば、そのときにバッて砂から出るんだよ。潮の流れとかで、網がゆらゆらしてればエサかなって思って寄ってくるんだよ。魚の通り道に刺すのが刺し網だから。底曳きとか底網に入るヒラメは刺し網には絶対入らないし。

Q:やっぱり違うんですね。

泳ぎ方が違うからね。刺し網にいっぱい掛かるときは底網には入らないんだよ。魚のいる場所と泳ぎ方がやっぱり違う。海の中の定置網は、家の中に入ってその中にいるけど、刺し網の場合はやっぱり飛び越えようとしたりとか。底曳きだって網引っ張れば、エビとかが網の上を飛び越えようとするから、上網付けるみたいな。1回底曳きのエビが飛び越えようとしてる動画見せてもらったりしたけど、近寄っていけば飛ぶんだもんね。

Q:動画って水中のものですか?

そう。何かの研修会で秋田市に行ったときに、底曳き網の研究してる人がその動画を見せてくれて。

Q:そうなんですね。

例えば、網が底の砂をバッとかいていくと、砂が舞ったときに、上にヒュンヒュン飛んでいくんだよ。網のところに小さいカメラを付けてるんだよ。

Q:面白いですね。ヒラメは、ある程度かたまっているんですか?

かたまりでいたりする。この間は1本の網に40枚とか50枚とか。(笑)

Q:そんなにいるんですね!(笑)

条件がいいときは溜まったりしてるんだよ。今日は入ったから明日も入るんだろうなと思って次の日行ったら2枚とか。(笑)

Q:そういう場合もあるんですね。(笑)一番大変なことは何ですか?

やっぱりゴミが掛かったりとか。ゴミは結構あるよ。ナイロン系がやっぱり多いかな。魚だけ獲れれば一番いいんだけどな。(笑)

Q:それが一番ですよね。(笑)

Q:ちなみに休みの日はどんなことをしているんですか?

今は漁が終われば網仕事しないといけないからね。荒れてる日は漁の準備とか、嫌になればどっかに出かけたりとか。

Q:冬はスノボに行ったりするんですよね?冬以外は何かしたりするんですか?

冬以外はドライブ、釣り、遊び。

Q:釣りは海ですか?

船外機で。大きい船だと油ももったいないからね。

Q:なるほど。『天惣丸』は油は何Lくらい入るんですか?

2000Lかな。

Q:そんなに入るんですね!

あんまりタンク小さいと心配だな。(笑)

Q:いつ作ったんですか?

平成27年とかかな。設備投資は早めに。借金するなら早いうちがいいでしょ。

Q:今、船はすごく高いらしいですね。

だんだん高くなってる。震災のあとからだよ。今はシンナー系も値上がりしてるから一番なんじゃないかな。

Q:今は見積もりして、施工開始のときに値段が変わってるって言ってましたね。

変わってる。震災バブルだよ。高くてもいいから作れって。国で補助して。高くても半分補助が出るから作らせてたんだよ。でもお金払えなくて手放した人がいっぱいいるって言ってたよ。

Q:そうなってるんですね。

俺はちょうどいいときに作ったな。(笑)ちょうど県の補助もあるときに作ってもらったんだよ。若い人が漁師になりたいって言っても船買うときの予算がね。国でこういうことやってるんだから、県でも少しでも予算出して船買えるようにしたらいいんじゃないかって言って。最高500万か700万くらいまでは補助しますよっていうやつを県でも作ったんだよ。

Q:秋田県は新船を作るのにあまり前向きじゃないですよね。

結局、船作ったりして返せる見込みがある人とない人がいるでしょ。借金抱えたまま返済が滞ってる人もいるだろうし。俺はもう10年返さないといけない。(笑)

Q:なるほど。なかなか難しいんですね。

Q:では最後の質問なんですけど、貞之さんにとってにかほ市とは何ですか?

ずっといるから分からないね。(笑)にかほ市はふるさとだな。



たくさんの魚介類がいて、魚それぞれの習性があるんですね。習性を理解し、どんな漁法で獲るか試行錯誤が必要だと感じました。漁師は体だけではなく、頭も使う仕事。そういったところも漁師の楽しさなのかもしれません。

渡辺 貞之さん、ありがとうございました!

渡辺 貞之さんは漁師図鑑に登場しています。ぜひご覧ください!

この記事を書いた人

渡辺貞之