今回は金浦にある『ベーカリー&ビストロ CRUST』を営むペーターさんと、奥様の亀崎さんにインタビューしました!オランダから日本へ移住し、にかほ市でパン屋兼飲食店をオープンしたペーターさんと亀崎さん。大人気のお店の1日のルーティンに密着です!

Q:まず初めにペーターさんのご経歴と現在の活動内容について教えてください。

<ペーターさん>今41歳で、オランダ人です。2年くらい前(※取材時2022年冬)に日本に来て、1年前くらいに『ベーカリー&ビストロ CRUST』を始めました。あとは息子が2人います。

大学では食品技術とビジネスを勉強していました。大学へ進む前にレストランでシェフとして働いていたことがあり、自分の店を持つことがずっと夢でした。オランダにいた頃は主にずっと経済関係の仕事をしていて、1番最後の仕事は銀行です。銀行ではカスタマーサービスの社員たちのトレーニングをしていました。

今は去年オープンした『ベーカリー&ビストロ CRUST』というお店をやっているので、忙しくて趣味の時間がないです。(笑)子ども2人も小さいので余計にですね。でも店舗兼住居という場所を見つけられたので、そこはすごく助かっています。

うちで出している物は基本的にヨーロッパがベースになっています。”日本のパン屋”っていうイメージを最初は持たれていて、自分たちもそういう部分は心配に思っていましたし、そういうのがないといけないかなと心配していたんですけど、自分たちが好きな物じゃないと作れないので、ハード系メインのパン屋になっています。

Q:そういった中でも日本っぽく変えている部分もあるんですか?

<ペーターさん>サイズです。小さいのが好きとか、ちょっとずつ色々な物を食べたいという日本人の好みに合わせていて、最初の頃よりもスライスするものは増えました。最初は丸ごと出したりしていたんですけど、その分単価も上がってしまうし、結局「カットしてくれますか?」というリクエストも多かったので。でも料理の方はあくまでもヨーロッパスタイルです。

Q:私も食べに来たことがありますが、いつ来てもお客さんでいっぱいのイメージです!

<ペーターさん>ありがとうございます。週末は特に忙しいですね。

Q:ではルーティンのお話も聞かせてください。まずは仕事前のルーティンについて詳しく教えてください。

AM 5:00 〜 7:00 起床、起きたらすぐエプロンをつける

<ペーターさん>5時〜7時の間に起きます。そのときに何を焼かなきゃいけないかで前後します。起きたらすぐエプロンを付けます。寝室の階段から真っ直ぐ降りてきて、正面がすぐドアになっています。

パンをオーブンに入れコーヒーの時間。

<ペーターさん>オーブンは寝る前にタイマーをセットしておくので、起きる時間に合わせて温まるようにしています。オーブンに最初のパンを入れてからコーヒーの時間です。天気が良いときはテラス席でコーヒーを飲みます。そこの海を見たり、鳥海山を見たり。あと車のスピード違反がいないか見ています。(笑)ここを走るのは保育園に行く人くらいで、逆にみんな油断して行くので。

Q:なるほど。(笑)

新しい生地を混ぜたり、その日に焼くパンの準備。

<ペーターさん>コーヒーを飲み終わったらミキサーを回して新しい生地を混ぜたり、その日に焼く物の準備をしていきます。

前日から発酵していない物を準備していきます。7時になったら、妻が起きてるか確認しに来ます。7時くらいに起きて子どもたちの朝ご飯を作るので。

朝ご飯が出来たらみんなで一緒に朝ご飯を食べます。朝ご飯の席にタイマーを持って行って、オーブンやミキサーを見ながら出たり入ったりしています。”家族みんなでご飯”というのは大切だと思うので、そこは必ず一緒に座るようにしています。

Q:家族との時間は大切ですよね。

<亀崎さん>7時に私が起きてご飯を作っている間、息子はもう起きてテレビを見て待っているんですけど、たまにお店の方に来てパパの仕事を覗いていたりします。「チーズちょうだい」とよく言っていて、キッチンを漁りに来ます。あるのを知っているので。(笑)

朝ご飯が終わったら息子たちは保育園に行きます。保育園まで50mです。朝ご飯のあと保育園に送っていくのは私の役目です。今2人目も保育園に行っていて、やっぱり2人送るとなると結構忘れ物が多くて、戻ってきてまた行ったりします。近くて便利です。(笑)

Q:たしかに便利そうです!(笑)

<亀崎さん>送るのがだいたい8時半くらいで、送る前はおむつを替えたり着替えさせたりを一緒にやります。送って帰ってきて、10時開店なので、それまでの間は仕込みをしたり、パンを焼いたり、店内の清掃をしたりします。基本的に10時か11時くらいまでは結構バタバタしています。

AM 10:00 オープン

<亀崎さん>基本終日食事OKなので、ずらして来る人もいますね。でも11時くらいから14時くらいの時間帯が1番忙しいので、できるだけパンはその時間は焼かないようにしています。オーダーが入ったら調理するのは基本的に彼なので。私たちのお昼ご飯は14時くらいです。忙しければ15時とか、ご飯を食べないときもあります。

Q:やっぱりそういう日もありますよね。

<亀崎さん>そうです。2人目の子どもができてから10時になりました。その前は9時オープンで、1番最初は7時半オープンでした。朝ご飯の時間に営業したかったんです。7時半オープンは結構すぐ諦めました。(笑)結局その時間までに準備を終わらせないといけないので。去年は開店時間から並んでいる人もいました。

<亀崎さん>お昼のピークの時間が終わった後は、お買い物のお客さんも来るので、基本的にここにいるんですけど、合間に経理をしたり家の方の掃除や洗濯もします。

<ペーターさん>冬は除雪機です。次の日のパンの準備もします。

うちで作っているパンは発酵時間が長いので、一般的に思う”パン屋さんは朝が早い”っていうのをしなくていいです。朝3時に起きてミックスして…という感じではなくて、前日にミックスを終わらせて、ずっと発酵させてというのが多いので便利です。

Q:なるほど、そうなんですね。

お昼過ぎにパンの売れ行きをみて、明日は何を準備するか判断

<ペーターさん>お昼過ぎにパンの売れ行きを見て、明日は何を準備するか判断して生地を混ぜていきます。

Q:ラインナップは結構変わるんですか?

<ペーターさん>今はそうでもないですね。8割くらいは同じ物になっているんですけど、残りは実験で出している物とか、そのときそのときで新しい物が出たりします。

Q:変わったりもするんですね。

PM 17:00 クローズ

PM 18:00まで 片付けや清掃

<亀崎さん>そして17時にお店を閉めて、18時までは片付けや清掃をします。そのあと17時50分くらいに保育園に迎えに行きます。清掃しながらご飯の準備もします。ご飯の準備は私がしたり彼がしたり、そのときによります。

夕食後も作業

<ペーターさん>その日によって、焼き終わっていなければ、朝と一緒で、夜も夕飯を食べた後に焼く作業をしたり梱包作業をしたりします。最近は20時までには終わります。子どもたちがいるので、できるだけ遅くならないように気を付けています。前は遅くなることも多くて、それだと子どもとの時間も取れなかったので。

Q:そうですよね。

<ペーターさん>夕飯はだいたい18時半から始まって、食べ終わったらお風呂に入って、テレビを見ながらおやつをあげたり、デザートを食べたり、絵本を読んだりという時間です。

お風呂のあとの時間は息子がアニメを見たがるので、見せている間に日本語の勉強をします。教材を結構持っているので。

上の子があまりベッドに早く行かないタイプなので、遅くなることが多いです。大変です。20時半に寝かせたいけど21時とか21時半になることが多いです。

PM 23:00 寝る前に読書

<ペーターさん>子どもたちが寝たら2人の時間です。1時間くらいは2人でゆっくりする時間で、その時間でお店の予定とかメニューのことなどを相談することが多いです。そしてベッドに行くのは23時頃です。寝る前に絶対本を読むので、寝る時間はもっと遅くなります。

Q:勉強もされているんですね。日本に来てお店を初めて、大変なことはありましたか?

<ペーターさん>オランダにいたときと今では全然生活が違うので、比べるのが難しいです。オランダにいたときは、保険だったりの書類関係のことは全部私がやっていました。しっかり把握できていたんですけど、日本に来てからは何も分からないので、私(奥さん)に頼るしかないので、それがもどかしいです。説明しても自分で全部の文字を読める訳ではないので。

Q:そういった部分の難しさはやっぱりありますよね。

<亀崎さん>私は高校を卒業して日本を出ているんですよ。日本で社会人をやっていないので、あまり常識を知らないというか、日本の普通の常識を知らなくて…。1番最初に引っ越してきたときも、電気の契約やガスの契約もどういう風にやるものなのか分からなくて。(笑)ゴミの分類も分からなくて、今、電化製品で壊れた物とか、スピーカーがあるんですけど、燃えないゴミの袋に入れるのか、どこかに持っていかないといけないのかも分からなくて。

Q:高校を卒業されてすぐ日本を出たんですね。

<亀崎さん>そうです。ゴミ出しも重いので、結構彼がやってくれるんですけど、電池を出すのを忘れたり…。これもよく分かっていないので、いつも忘れて溜まったりしてしまいます。日本に来てという難しさで言うとそういった部分です。それ以外で言うとやっぱりお店をやっているから、子どもがいるから、という大変さです。

Q:なるほど。その中でも日本へ来てお店を始めて良かった部分はどんなところですか?

<ペーターさん>上司がいないことです。色々なことを自分で作り出すことができます。あとは、食に関する仕事ができているということです。上の子が今2歳半過ぎたくらいで、結構パンに興味を持ち始めていて、パンを捏ねているのを見たがったり、やりたがったりということが最近すごく増えて嬉しいです。銀行や会社で働いていたら、そんな姿はあまり見えないですし、そんな風には思わないだろうと感じます。

Q:子どもが興味を示してくれるのは嬉しいですね。

<ペーターさん>フライパンで調理しているのを見たがったりもします。火が上がっているのを見て「火事!火事!」と言っています。(笑)

Q:可愛いですね!(笑)お店を経営している上で、大事にしているところはどんなところですか?

<ペーターさん>ヨーロッパの物を作るというのがまず1つのこだわりで、あくまでも”本場の物を提供する”ということです。もう1つは、”一般的な食材で美味しい物を作りたい”。食材にすごくこだわっているお店も多いじゃないですか。それで付加価値を付けていくっていうのもあると思うんですけど、そういうのにこだわるのではなくて、誰でも手に入れられる食材で美味しい物を作りたいです。あまりストーリー性ばかりにこだわるよりも、味を大切にしたいです。

Q:素敵なことですね。

<ペーターさん>ストーリーも嫌いとかではなくて、どちらかというと”由来”とか、「こういう風に食べられているんですよ」というのは伝えます。

今はできていないんですけど、この先進めていきたい方向が、有機栽培の物とか自然に優しい物とかを使って作っていきたいというのはあります。ちょうどオーガニックを扱っている会社を見つけて。フランス系の麦なんですけど、日本だと全然流通していなくて、こういった物を使って向こうでしか食べられていないようなパンを作りたいです。

Q:これからも楽しみですね。

Q:気になっていたんですけど、外にパンの自動販売機がありますよね?あれはどういった経緯で置くことになったんですか?

<ペーターさん>日曜日営業を辞めないといけなくなって、そのときに「じゃあ自動販売機はどうかな?」という話になりました。開店して最初は土日営業をしていていました。営業日は今まで、結構変わっているんですけど、土日営業はずっとやっていて、それを今年の春に辞めたんです。2人目を妊娠していたのもあるし、日曜日はやっぱり家族の日にしたいというのもありました。上の子も2歳になって、分かってきたというか、一緒に遊ぶ友達がいるかいないかっていうのも重要になってきているのもあって、いずれ小学校に行ったら日曜日って家族の日になるし、今のうちにそうしておこうというので、春に日曜を閉めました。

Q:そうだったんですね。

<ペーターさん>でもお客さんはやっぱり日曜が多かったので、日曜を閉める代わりに、その間でもお買い物をしてもらえるようにというので、自動販売機を設置しました。

Q:飲み物以外の自動販売機をあまり見ないし、パンの自動販売機は面白いなと思っていました。

<ペーターさん>フランスだと”フランスパン専用の自動販売機”っていうのがあるんです。色々と、どういう自動販売機がいいのか調べていたときに見つけて、発酵させておいた生地を入れておいて、買うときに焼いてくれて、焼きたてのフランスパンが手に入るっていうのもあります。(笑)でもそれはフランスパン専用で他のはできないので諦めました。もう1台導入したいと考え中です。営業時間外で買ってくれる人が結構いるので。

Q:色々な種類があるんですね。

Q:では最後の質問になるんですけど、ペーターさんにとってにかほ市とは何ですか?

<ペーターさん>自然の近くで住める都会です。ど田舎ではなくて、自然がたくさんあるけど、都市機能も備えた町に住める、そのバランスがすごく気に入ってます。こういう組み合わせはすごく珍しいと思います。自然のスケールがダイナミックなのに、都市のレベルっていうのはなかなかない組み合わせだと思います。

にかほ市でヨーロッパ風のパンや料理を食べることができ、地域に愛されるお店のベーカリー&ビストロ CRUST。今後の新しい取り組みがとても楽しみです。これからもベーカリー&ビストロ CRUSTから目が離せませんね!

ペーターさん、亀崎さん、ありがとうございました!

この記事を書いた人

ベーカリー&ビストロクラスト

秋田県にかほ市金浦にあるオランダから移住したシェフが営むパン屋。
ハード系のパンを中心とした店頭販売、パニーニやサンドイッチのテイクアウトもあり。店内飲食もでき、地域に愛されている。