今回は、フリーパーソナリティとしてラジオやテレビのアナウンサーや司会をしている永田 佳乃子さんに取材しました!

フリーランスとして、秋田県内を拠点として活躍している永田さんのお仕事にまつわるルーティンを教えていただきました!

Q:はじめに永田さんの経歴と現在の活動内容について教えてください。

大学卒業後、ABSのテレビのアシスタントに採用されまして、一年間勤めました。

その後は、フリーランスになりました。同じくABSのラジオや、FM秋田、NHK秋田局で、レポーターやパーソナリティ、キャスターなどを務めてきました。

もともと生まれは秋田市ですが、結婚を機に由利本荘市に住みました。子どもができたので、今度は夫の地元であるにかほ市にきて20年になります。

Q:私自身、アナウンサーの仕事のことはわからないんですが…一年間アシスタントの仕事をしてからすぐフリーランスになるのは、独立出来るのが早いと感じるんですが、いかがでしょうか?

局アナだった方とは別かもしれませんが、私たちはもともと番組契約のような形で、一年単位で契約しています。本当にその番組がやっている期間だけの契約だったりするので、割とそういう人は秋田県のタレントさんには多いです。

Q: そうなんですね。

ルーティーン

司会や放送原稿の下読みをしてイメージをふくらませる

前日はアルコールや辛いものなどの刺激物を控え、早めに就寝する

Q:アルコールや辛いものなどの刺激物は、次の日まで影響しちゃうものなんでしょうか?

アルコールだと次の日に、ちょっと声がかすれたりとかしますし、辛いものだと喉に痛みが走ったりもしますし…あとお腹の調子ですよね。

司会中に「うっ…!」ってなったら大変ですよね。やっぱり前日はそういった刺激物はできるだけ取らないようにして、本番に備えるっていう風に心がけています。でも全く飲まないわけではないです。

Q:気をつけている上で、当日調子が悪い時の対処法などありますか?

そうですね。もし万一、お酒が残っているなと思ったら、 ビタミンCを大量に取って、 お水もたくさん飲んで…一刻も早く体から抜けるように頑張ります。

あと喉スプレーとかってあるじゃないですか?あれって実はよくないんですよ。

喉の痛みの対策でスプレーする方が多いと思いますが、本当は喉に良くないので、 できるだけ使わない方が良いっていうことをアナウンサー学校で教わりましたね。

ひたすらうがいをして、喉飴を舐めて、改善するように直前まで努力します。

Q:ちなみに、喉を管理するにあたって、お勧めな飲み物や食べ物はありますか?

よく喉には『カリン』が良いっていいますよね。だからといって、積極的にカリンを取るわけではないんですが、カリンが入っている飲み物があったら、「あ、なんとなくいいんじゃないかな」っていう気がして取るようにはしてます。

できれば本当は司会中の飲み物は、何にも入ってない水が一番いいです。お砂糖とか炭酸は絶対NGです。

仕事前 

司会の時は移動中の車内で発声練習をする。(家や現場でやると周囲に迷惑なので必ず車の中)

食事は本番の2時間前までにすませるようにする

Q:発生練習や原稿の読み上げは、あまり声をはらず、周りに響かないイメージです。迷惑になるとのことですが、しっかり聞こえたりするものぐらいに発声するのでしょうか?

発声に関しては、腹式でがつんと出さないと本番でも声が出にくくなるので、家でやったらえらいことになるんですよね。(笑)

Q:テレビで見てる分には声ははっきり聞こえるけど、実際はそんなに大きい声ではないのかなっていうイメージでした。

むしろアナウンス学校だと、声を出さないで発声をしたら怒られるんですよね。「ちゃんとお腹から声を出さないとだめです」って言われるんですよ。

Q:長時間、しっかり声を出すのは大変ですよね。

そうですね。腹式呼吸すると痩せるって言われてますよね。私は全然腹式じゃないからか全く痩せないんですけども…。松田聖子さんなんて本当にすごい痩せてるじゃないですか。聖子ちゃんは何にもしなくても呼吸してるだけで、あのスタイルだって聞いて…

Q:腹式呼吸、確かに大事ですよね。

仕事中 

表情は声に出るので、仕事中は常に口角を上げる!

Q:仕事中、常に笑顔…というより口角をあげることを意識されている感じでしょうか?

いや、笑顔ですね。笑顔でいると間違いなく口角が上がっているので、今もずっと上がるようにしてますね。

Q:明るい番組であれば、ずっと笑顔だと思うんですが、報道的なものとか、明るい楽しいイメージじゃないものの時とかって、それに応じて表情を変えたりとかもしてるんですかね?

原稿読みの時だとなんだろう…決してニコニコはしないんですけども、でもやっぱり口角が上がってないと声がこもっちゃうんですよ。

マイクに声が乗らなくなるので、口はしっかりと開けて、ただ決してニコニコしないでっていう風にしてます。

Q:そうですね、ちょっと難しそうに感じます。

やっぱりなかなかできなかったです 。最初の頃はしょっちゅう注意されて。

炭酸飲料や、砂糖の入った飲み物は喉に引っかかるので飲まない

Q: 練習で出来ていても本番では緊張で出来ないっていうこともやっぱりありますか?

まず本番だと大体、生放送じゃないですか。時間も見て、かつ内容も…。初見だったりすることもあるんです。口ではここの行を読んで、目は次の行を見て…とかしないといけないですよね。

Q:読む早さとかも大切ですよね。次を見ながら、それも顔とか表情に出ないように、しっかりやり切らなければいけない。相当なプレッシャーですよね。 

でも生放送だとまず時間がくれば終わるじゃないですかね。だから終わった瞬間は、「あ〜終わった」って(笑) 

Q:落ち着きますよね。

そうですね。落ち込むことはしょっちゅうですけど。

常に聞き手をイメージして語りかけることを心がける

Q:原稿内容によってはイメージしにくいものとかもあると思うんですけども、事前に調べたりしているんですか?

事前に原稿をもらっているのであれば、それに合わせて、もし分からない内容があれば、おっしゃる通り調べて、自分の中で解釈して話をするようにしてますね。

例えば、花火大会でアナウンスする時は、大勢の人が聞いているので『一対一』ではない状況です。けれど、そういう時でも一対一で喋っている気持ちで語りかけているようにします。

花火のタイトルは、タイトルとして読んで、それ以外の文章は、一対一でしゃべっているような感じで、聞いてくれてる人がいるっていうことを常に意識して話すようにしています。

仕事後

しょっちゅう落ち込んで反省するけど、とりあえず飲んでぐっすり寝るとだいたい元気になる

Q:仕事後にしょっちゅう落ち込んで反省する。先ほども言ってましたね。とりあえず飲んで、ぐっすり寝ると大体元気になるっていうことで、お酒はお好きですか?

嗜む程度だって書いといてください(笑)

Q: わかりました。(笑)お仕事が終わったらリラックスする時間も大事ですもんね。

反省はするんですけども、「引きずっちゃだめだよ」っていうのをよく先輩方に言われてました。「そうだな」って思って、なるべく引きずらないようにしてます。

でも失敗したことは次に必ず生かすように心に留めてまた次の仕事を迎えるようにしてます。

Q:最初の頃は先輩が沢山いて、聞くことの方が多かったと思うんですけど、今は後輩が出来て、聞かれることっていっぱいありますよね。

いつの間にか歳をとっていたので、 あれこれ聞かれることはありますね。

もう本当に先輩方にはすごく教えていただいて、ABSのアナウンサーの方とか、NHKのアナウンサーの方とか、もちろんですけども、フリーランスの先輩方にも、色々教わったことがいっぱいありますね。

食事は二時間前までにすませるというのも教わったことですね。

Q:二時間前っていうのは、何か理由があったりするんですか?

お腹に食べ物がたまってるという声が出づらいんですよね。お腹いっぱいだと。でも、やっぱり食べておかないと声が出ないんです。 

Q: 元気も出ないし、やっぱり体力とかもありますよね。

そうなんです。そこで、「ちょうどいいの が二時間前だよ。」っていうのを教えてもらったんです。

飲み物が糖分や炭酸も絶対ダメっていうのも、先輩方に教えてもらったことですし、引きずらないっていうのも先輩に教えてなかったことです。

もし私が後輩に聞かれたら、全部教えてあげたいなって思いますね。

Q:そういうものはありますよね。

そうですね。後輩からの質問はありますね。

「緊張するんですけど、どうすればいいですか?」って聞かれて「そんなん私だって毎回緊張するよ〜」ってね(笑)

でもやっぱり笑顔を作ってると、脳が錯覚して、今リラックスしてるって思うから、とにかく笑ってると落ち着くよって言ってます。

私の先輩はとてもすごくて、どんなに緊張しても、マイクを持った瞬間に落ち着くそうなんです。
始まっちゃったら「緊張してる…」とか言ってられないし、私も早くそこまで慣れるように頑張ります。

Q:本番の直前に、何か必ずしてるルーティンなどありますか?

あったかなあ、なかったかなあ(笑)

司会の時と放送の時でまた違うんですよね。司会の時はできるだけ集中したいので、なるべく原稿を見てて、もうそれで本番です。

ラジオに関して以前後輩にびっくりされたのが、本番って、時間が来たら音楽が流れて始まるじゃないですか。音楽が流れても、まだフェーダー(※スピーカーの音量調整を行う機能のこと)を上げてはいないんですが、曲が流れてる中、私はそのフェーダーを上げる直前までおしゃべりしてるんですよ。

マイクもフェーダーも自分で調整できるから、始まるまで、ずっと一緒に出ている人と、おしゃべりしてて…。

それを見てた、まだアナウンサーを始めたばかりの後輩が、「なんでそんな直前まで喋ってられるんですか…?」って言われたことがありました。(笑)

でもその方が落ち着くんですよね。本番直前でも、喋っていた方が落ち着くんです。

Q:ずっと黙ってると声が出ない時もありますよね。

放送の時はほんとギリギリまで雑談してます。司会の時は、司会の原稿にギリギリまで集中してます。

Q:やっぱり違いがあるんですね。 

そうですね 、なんでかって聞かれると難しいんですが、多分、今おっしゃってた通りで急に喋っても声出ないから、喋ってる方がいいんですよね。

Q: なるほどです。

あと、私、二十年ぐらい前にすごく緊張してずっと噛んでたんですよ。緊張しすぎてしまって、とにかくやたら噛むようになってしまって…。その時に悩んでたら、母がこの増田町のナマズのお守りっていうのを買ってきてくれたんです。

Q:不安解消、冷静沈着、などそういった意味がこもっているんですね。


すごく大切な司会やスピーチを頼まれた時とかも、自分に自信がつくようにメインのお守りになってます。

これを常に持ち歩いてます。袋からも出さず(笑)袋に理由も書いてるから。 

Q:長い間、ずっと持ってるんだなっていう感じが伝わってきます。

母の愛ですね。

他にも持ち歩いているものがあって、これは、アナウンス学校の教本で、何十年も持ち歩いてるから、ボロボロになっちゃってます。これもやっぱり落ち着くんですよね。今までやってきたことがあるから、なんとかなるみたいな感じで。

 Q:すごい!ずっと持ち歩いてるんですね。

Q:今まで長くお仕事をしてきた中で、一番のハプニングを教えてください。

一番失敗したなと思ってるのが、フリーになって間もない頃初めて祝賀会の司会というのを頼まれた時に本当に緊張して、ずっと声が震えてました。今、思い出しても本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになるぐらいに。それはもうトラウマですよね。あとは、生放送のラジオで、時間を読み間違えて一分ぐらい余ってたことですかね。

Q:私からしたら『たった一分だけ』になりますけど、やっぱり一分ってかなり大事なんですね。

生放送で一分余ると、大変なことになります。たまたまそれが生放送の歌番組だったので、一緒に出てた歌手の方が時間を見てて、一分伸ばしてくれたんです。「あ〜、良かった!助かった〜!(泣)」ということがありました。

Q:生放送だと時間が大事ですね。

昔、ABSでタイムキーパーもやってたんですよ。だから時間を読むのには自信があったので、過信したんですよね。その時はもう頭が真っ白になって、終わってからフロアの人に、「永田さんどうしたんですか?」って言われてしまい。「すみませんでした」って。

Q:いつも大丈夫だったものが急に変わってしまうと、とっさにこうできなくなりますよね。

ありましたね。終了一分前に「それでは皆さんさよなら〜」って言ってしまう…言う前にね(笑)

Q:あれっ…?ってなりますよね。(笑)

そう。で、歌手の方が歌ってくれてるので、「このままお別れします」って言って。最後は無事に終わらせてくれました。 失敗は山ほどありますね。

Q:それが成功にどんどん繋がっていくんですね。

Q:そういう時ってやっぱり反省をするって仰ってましたが、自分なりの反省の仕方などありますか?

生放送の後は必ず反省会があるんですよ。そこで共有して今後に繋げていくために反省会をしています。

「この人、そういう人だな」って周りに思ってもらえると誰か助けてくれるから。(笑)

反省会はテレビもラジオもあるんですけど、テレビの方だと一時間ぐらいやってます。

Q:かなり長いですね。

反省会では、やっぱり厳しいことも言われて育ってきました。その時は「ありがとうございます」と受け止めてきました。

Q:なるほど。たくさんお話ししていただきありがとうございます!

Q:様々なお仕事をされた上で、この仕事をやってみたいなとか、やってみたいジャンルのお仕事はありますか?

今までそんなにやってない仕事としてはお葬式とかですかね…。

なんだろう、私のキャラクターが影響しているのか…(笑)

あえて受けてこなかったっていうのもあるんですが、私は披露宴の仕事が多かったです。

披露宴ってやっぱりみんな幸せですよね。それこそ常にニコニコして。でも、友人がだんだん、そういう仏事の方とかにも、色々仕事の幅を広げてきた中で「ああ、これは大事な仕事。皆さんの一生を締めくくるお仕事なんだから、これからはそういうのもやれるようになりたいな」と。

身内が亡くなったりして、自分がお葬式に出たりすることで、ちょっと気持ちも変わったところがあって。

あまり言ってないんですけども、今年、身近な人を亡くして、そのお葬式に出て、ちょっと自分の意識が変わったんですよね。

随分前にお葬式の仕事をやった時に、別に何もクレームもこなかったんですけど、自分の中では「ああ、なんか私、今日ちゃんとやれてなかったんじゃないかな」っていう気持ちが残って、それで避けてきたっていうか…あんまり引き受けないようになっていました。

でもそれも何十年前かな…まだ若い頃に一回、とても大きなお葬式の司会を頼まれてやった時に、自分の中ではなんだか納得いかない仕事だったんですよね。自分がうまくやれなかったことに対して、とても後悔して、それで簡単に受けちゃいけないなっていう風に思って、それで今まではあんまり受けてこなかったんです。

でも、やっぱり自分がいざ出席する方になってみたら、司会って大事だよなあって。やっぱりそういうお仕事もやれるようになりたいです!

Q:では最後の質問になりますが、永田さんにとってにかほ市とは?

私は秋田市生まれで、ずっと秋田市育ちで、秋田市から出たことがなかったんですね。

結婚して初めて由利本荘市に住んで、それから、にかほ市に来てっていう風になって、にかほ市に住んで、二十年になるんですが、すごく暮らしやすいところだなと思ってます。

閉鎖的な地域もあるじゃないですか。でも、にかほ市ってすごくウェルカムですよね。

食べ物も美味しいですし、自然も豊かで、住んでる皆さんの気持ちもとてもおおらかでいいところだなって、ずっと思ってますね。

他の県からにかほ市に来る人が昔からいるので、割と外から来る人に対してオープンなところがあるから、住みやすいところもあるんじゃないかなとも思います。

Q:にかほ市自体の制度とかもいいですもんね。皆さん子育てもしやすいって言ってるので、そうなんだ〜って思ってます。

にかほ市長のラジオを担当していた時に、市長もおっしゃってたんですが、にかほ市自体がそんなに大きくないじゃないですか。「コンパクトな市なので、行政が、ぱっと手を出しやすい。だからもっと大きい市だったら、たくさん人がいる分だけ色々手もかかるけれども、小さい分だけ、にかほ市としては色々あれこれやりやすいので〜」って。

「たしかになあ」って思いましたね。だから、にかほ市に住むことになって、全然困ったこともないですし、すごくいいところだなって思いました。

にかほ市長と3年ほど一緒にインターネットラジオをやってきたんですけども、市川市長がとてもユニークな方で。尚且つ、やっぱり頭がいい方なんですよね。

こちらが、無茶振りしてもちゃんと返してくる。返してきて、今度は逆にこっちにとんでもない無茶振りをしてきたりして。そういうトークの応酬がすごく面白かったんですよね。

そして、やっぱり市長はにかほ市のことについて一番知ってる方じゃないですか。

なので、にかほ市のことについてお話をするのはすごく勉強になりました。

この度、3年という一区切りで 一回お休みしようねっていう風に終わってしまったんですけども、機会があれば是非また復活できたらいいなって思ってます。

Q:そうですね。

皆さんに聞いてもらえるように、また色々努力をしつつやれたらなって。

フリーパーソナリティの仕事をとても詳しく知ることができました!

華やかな表舞台では決して見せない、たくさんの努力や工夫が隠されているんですね。

永田 佳乃子さん、ありがとうございました!

この記事を書いた人

永田佳乃子