今回は株式会社グリーンフォレスト仁賀保の本間 慎二さんにインタビューしました。植林など林業を主に行う会社を起業した本間さん。なぜ起業することに至ったのか、お仕事の日のルーティンと合わせて伺いました!

Q:まず本間さんのご経歴と現在の活動内容について教えてください。

西目高校出身です。昔おじいちゃんが一人大工をやっていて、中学校の頃に測量とかを手伝った経験があって、将来は測量に関する仕事をやりたいなと思っていました。西目高校は、土木系列があるのでそこに行きたいなと思って土木を学びました。

就職難の時期だったので就職をどうしようかなって考えているときに、同級生が本荘由利森林組合の求人票を先生と見ていて、そこの欄に”測量”という業務内容が記載されていたので、じゃあ私も行こうかなって思って、ノリでというか…。そこに応募した他の人が落ちちゃって自分が受かったっていう。(笑)

ただ、林業関係は全く分からなくて、杉の木とか、そういうのもあまり分からず入社したっていう経緯があります。まず測量をメインに、山の中の道づくりなどの工事をメインでずっとやっていて、12年、本荘由利森林組合さんに勤めていました。

Q:現在はどのようなことをやられているんですか?

20歳くらいから現場を任されるようになって、当時から植林や保育業務の班を任されていました。それで平成28年の秋に、阿部浩美先生の『創業塾』開催の広告を現総務部長の堀井に教えてもらい受講しました。

講義3日目の最終日までは起業したいとは思っていなかったんですけど、最終日の午後に発表する場があって、その場で「あ、辞めよう」と急に思いました。帰宅途中、書店に行って色々買い揃えて、次の日にはもう「3月に辞めます」と、そのとき2月だったんですけど、退職願を出して、4月1日に起業しました。

本荘由利森林組合さんのときに山形の林業会社さんとも取引をしていたので、そちらの社長さんに相談したら協力してくれるという話になり、4月からその会社にお世話になりました。

今もうちの業務のほとんどが、その林業会社さんからの受注している仕事というような感じなんです。前職と同じように植林とか、木を育てることをメインに業務を行っています。

Q:すごい行動力ですね。

そのときは急に思いました。(笑)それまでは何とも思わずに『創業塾』も2日間受講したんですけど、最終日の午後発表の場で急に辞めようと思いました。

Q:それは何か感覚ですか?それともきっかけがあったんですか?

同年代くらいの方で「由利本荘市で居酒屋をやりたい」という方がいて、その人には申し訳ないのですが…見た目とか内容など勝手な判断で、「この人にできるなら俺にもできるんじゃ!?」とちょっと思っちゃって。

Q:それで今に至るんですね。

そうですね。(笑)

Q:『グリーンフォレスト』さんの強みは何かありますか?

人が嫌がるような仕事も引き受けているというところもあるんですけど、特に草刈りは得意分野だと思っています。実際に山での作業って本当に厳しいので、街中で夏場の暑いときの草刈りは平坦な場所も多くそこまでは苦労はしないですね。(笑)

Q:頼もしいですね!

あとはこの業界の中では、平均年齢も若いのでそこも強みというか、力があるというか、そこは同じ業界の中でも違う点かなと思います。

Q:ではルーティンのお話を聞かせてください。まず仕事に入る前のルーティンについて教えてください。

ルーティン

AM 5:00 起床

AM 5:30 朝食

昔から早寝早起きだったので今も5時前後には起きてます。朝起きたら、だいたい毎日アプリのゲームを色々とやったり時間をつぶして、5時半頃に朝食を食べて、6時前後には会社に来ています。

AM 6:00 出社

メール、SNSの確認

会社に来たらメールやSNSの確認をします。6時半頃から従業員が出勤するので現場で使うような資料を準備したりとか、そういった作業を7時までの間にやっています。

Q:『グリーンフォレスト』さんは、SNSを結構更新されているなと思って、よく拝見しているんですが、始めようと思ったきっかけはありますか?

林業の会社は由利本荘市もにかほ市もたくさんあるんですが、ほとんどSNSを活用していなくて。だけど「人材が不足している」とか、「人がいない」と言っているので、SNSで発信すれば見る人は見るだろうし、もしかしたら採用に結びつくかもしれないし…。ここら辺ではほとんどSNSをやっていなかったのでやろうかなという感じで始めました。

Q:SNS上で反応はきますか?

Instagramは結構反応があります。TwitterやFacebookはまだそこまでなんですけども。

Q:SNSで発信すれば会社の雰囲気も分かりますし、いいですよね。

そうですね。

AM 7:00 ミーティング

各現場の当日作業について打ち合わせと指示。その後は現場へ出発。

7時からはミーティングです。従業員の人数が12名ほどいますので、1つの現場ではなく、2〜3箇所に分かれています。なので、各現場の今日やる仕事の打ち合わせをしています。その後は、当日必要とされる現場に自分も一緒に向かったりします。

AM 8:00 〜 PM 12:00 現場作業

午前中は現場作業ということで、実際に現場に行って個々に指示を出したりします。各現場で必ず工事現場みたいに黒板を立てて写真を撮らないといけないので、そのような写真管理をやったりします。

その日でなくても、この先入る現場へ確認作業のために行ったりもしています。あとは現場が遅れているときや、仕事量が多いときは、刈払機で作業をしたり、植林をしたり、従業員と一緒に現場で汗をかいて仕事することもあります。

PM 12:00 〜 13:00 昼食、休憩

12時〜13時まで昼休憩です。

PM 13:00〜PM17:00 現場・事務作業

午後も忙しいときは、現場で午前中の続きを一緒に作業したり、事務所に戻って写真のデータを整理したり、色々な事務仕事をやったりしています。

Q:この仕事をしていてやりがいを感じる部分は何ですか?

林業っていうと、山の中で木を伐採して、山から切った木を搬出して各工場に出荷・運搬みたいな感じなんですけど、うちの場合はほとんどそれをやっていないです。うちの場合は、伐採して山に木がなくなったあと、またそこに木を植えて、新たな木をイチから育てています。

木を植えれば、翌年から”下刈り”という作業が夏場にあるので、毎年自分たちで植えた木の成長も見れますし、木を育てるというやりがいもあります。

Q:逆に大変なところはどんな部分ですか?

時代も令和で、デジタル化が進んでいますが、自分たちがやっているような植林や下刈りと呼ばれる草刈りの作業は昔と変わらない人力の作業になっているので、そこが大変です。下刈り作業はどうしても夏場なので。

Q:そうですよね。

30度ぐらいの猛暑日になっても、朝から夕方まで汗だくになりながら作業しています。蜂に刺される人もいるし、軽い脱水症状みたいになってしまう方も稀にいるので、そこが大変なところですね。

PM 17:00 ミーティング

各現場の進捗確認

17時くらいになれば、従業員が現場から帰ってくるのでミーティングをします。仕事の進捗確認だったり、翌日に違う現場へ移動するときは、翌日の現場の指示や人員配置などの話をします。ミーティング後は、また事務仕事をして18時半頃に帰ります。

Q:ミーティングをよく実施されていると思いますが、従業員の方と関わる上で意識していることはありますか?

今11名の従業員がいて、それぞれの得意な作業や苦手な作業、作業効率が上がるメンバーの組み合わせをだいたい把握して、それを自分なりに見極めてやっています。

人員配置や翌日以降の作業についての指示をする時には、この人にはこう言った方が伝わるんじゃないかとか、考えながら従業員一人ひとりにしっかり伝えるようにしています。

Q:高校を卒業してすぐ入られる方もいるんですか?

今、2人いますね。5年目と6年目の方がいるんですけど、仲良くやっていて、この2人にはグリーンフォレスト仁賀保のTikTokも撮影・投稿してもらっています。(笑)

PM 18:30 帰宅

PM 19:30 夕食

プロ野球開催時は毎晩テレビでプロ野球観戦。

そして19時半頃夕食で、プロ野球をやっているときは毎晩テレビで野球を見ています。

ヤクルト1000を飲む。

あと今年に入ってから『ヤクルト1000』をほぼ毎日飲み続けています。

PM 21:30 就寝

就寝前には牛乳を飲む。

そして21時半頃には寝るので、歯を磨く前に牛乳一杯を必ず飲むようにしています。それは昔から変わらずのルーティンです。

Q:気になっていたんですけど、『ヤクルト1000』と寝る前の牛乳は何か意味があるんですか?

今年に入ってから、ヤクルトさんが会社に来てくれるんですけど、『ヤクルト1000』をおすすめされて、飲んでみようかなと思って買ってみたのが始まりです。ただ、いつも良く眠れているので『ヤクルト1000』を飲めばこれがこう効くとかあまり感じなくて。(笑)

牛乳も昔から好きで、学生の頃から寝る前には牛乳を飲んで寝ていたので、これは完全に習慣付いていますね。特に意味はありませんが、寝る前に牛乳を飲まないと口が寂しいというか。お酒を一切飲まないので、牛乳以外では甘めの飲み物が好きです。

Q:なるほど。それがある意味リラックスというか、リフレッシュにもなっているんですかね。

なっていますね。

Q:ちなみに…プロ野球観戦がお好きなんですね。

野球好きですね。

Q:特にどこがお好きなんですか?

『横浜ベイスターズ』が昔から好きです。昔って地上波で巨人戦中心にやっていたと思いますが、その頃からベイスターズが好きです。

中学校の修学旅行がちょうど2000年で、そのときのコースの中に横浜スタジアムというのがあって、試合を見に行ったらすごくテンションが上がって。(笑)社会人になっても都会が苦手だったというのもあって行けなかったんですけど、28歳か29歳くらいのときに「1回、行って見よう」という気持ちになって、1人で行ってみたらハマっちゃいました。それから年間10回まではいかないですけど、7・8回くらいは横浜スタジアムに行っています。

Q:テレビ越しだけでなくて現地に行っているんですね。

そうですね。年々知り合いも増えてきて、行けば必ず会う人もいて、コロナ禍になる前は交流が深まって試合後に一緒に飲み会をしたりしました。野球シーズンが終わっても、冬にファンの人たちと集まって飲み会をしたりしていたので、飲み会のためだけに横浜に行ったりしていました。

Q:どんどん輪が広がって交流がすごく楽しそうです。

今年(※取材当時2022年)も数年ぶりに1回行けたんですが、そのときは記録に残るボロ負けの試合で…。(笑)

Q:それは残念でしたね…(笑)

Q:お仕事の話に戻りますが、今後の展望はありますか?

創業してから7年目(※取材当時2022年)になりますが、今もうちの仕事の7割〜8割は山形県の庄内地方なんです。それはこの会社を立ち上げるときからお世話になっているので、今後も仕事を減らしたりはしないんですが、まず秋田県内の仕事、地元の仕事をもっと増やしていきたいというのはあります。

今、由利管内で山の所有者さんと連絡を取り合って契約をして、伐採から植林まで色々とできるようにするため進めているところです。これが自社でできるようになれば、もうちょっと地元にも貢献できるかなとは思います。

あとは年々地元にも、うちの会社が知られてきたかなと少しずつ実感していますが、やっぱりまだまだだなと思います。

創業当初から地域では1番になりたいと思っています。それこそ本荘由利森林組合さんは秋田県の中でも大きい森林組合なので、従業員の数から全く違うんですけど、安全や安心とかそういう部分はナンバーワンになりたいという気持ちは昔から持っています。

一般家庭から「うちの木を切ってください」という依頼があっても、基本的には断らず、まずは現場を確認しています。確認して厳しいようであれば、他の業者さんに一度見てもらったり、なんとかしてお客様の要望に応えられるように毎回いるので今後も継続していきたいです。

あとは自分が起業して1年目はやっぱり苦労したので、今後起業する人がいたら少しでも協力できることがあったら協力したいなと思っています。

Q:この会社もそうですけど、経営者としても何かやっていきたいということなんですね。

そうですね。

Q:起業1年目はやっぱり苦労したと言っていましたが、それでも頑張ろうと背中を押してくれたものが何かあったんですか?

起業しようとしていたとき、本荘由利森林組合さんの上司からは「そのことは誰にも話すなよ」と止められていました。でも、10歳くらい年上のベテランさんで、自分が高校を卒業してからずっと一緒に仕事をしていた班長さんがいて、その班長さんには先に伝えたいなと思っていました。その方に伝えたら、その方と副班長と、もう1人の方が一緒に私に付いてきてくれました。だからその人たちの為にも…と思ってやっています。

Q:なるほど。

前の会社は安定していますが、うちは個人事業なのでいつ倒産してもおかしくないので、付いてきてくれた人たちにはこっちに来て良かったと思われるようにしていきたいと思っていたので、とにかく1年目は必死に動いていました。

やっぱり冬場がどうしても仕事が薄くなってしまうので、雪が降ってくると、うちみたいに植林とか、木を育てる林業会社は仕事が極端に減るパターンが多いです。うちも12月か1月頃に仕事が薄くなったときがあってどうしようかなと思っていました。

でも、仕事が無いから明日は休みというようにはしたくなかったんですけど、その3人から「仕事がないならうちらは休んでもいいよ」と逆に言われたんです。

「これじゃだめだ」と思って必死に仕事を探して、1日も空くことがなく、なんとか今までやってきました。あの時の一言が大きかったですね。やっぱり頑張らなきゃなと思って、とにかく動いているような感じです。

Q:そういう方たちの支えもあったんですね。そんな中で本間さんが一番大事にしていることは何ですか?

どんな仕事も断らず、取引先でも一般家庭のお客さんでも要望になるべく応えられるようにやっていきたいと思っています。そこが1番思っているところです。

由利管内の同業種の方から、「無理なものは無理と断った方がいい」と言われることがあるんですが、庄内の人たちはこれと違う感覚で「受けた仕事はやれ」という感じです。庄内の方々は「自分たちで無理だったら俺たちもいるし、相談に乗るから基本的には引き受けろ」というアドバイスでした。それもそうだなと思って、受けた依頼には応えられるようにしています。

Q:それも大事なことですよね。

Q:では最後の質問になりますが、本間さんにとってにかほ市とは何ですか?

海もあって山もあって、夏も冬も過ごしやすいところだと思うので、そういうところが魅力の1つかなと思います。自然も多いので、そこに少しでも携われたらなというのもあります。また、にかほ市や林業の魅力をもっと周りの人たちに発信をして、林業という視点からにかほ市の自然にも貢献できたらなと思っています。

起業をする行動力や、一番大事にしている『どんな仕事も断らず一度は持ち帰ること、企業でも一般家庭の顧客でも要望に答えれるようにすること』というポリシーがあるからこそ会社を経営することができるのだと思いました。
本間 慎二さん、ありがとうございました!

この記事を書いた人

本間慎二

株式会社グリーンフォレスト仁賀保の代表。本荘由利森林組合に勤めたのち、植林などを行う株式会社グリーンフォレスト仁賀保を設立。