今回は金浦神楽をされている佐々木慶太さんにインタビューしました。若くして文化を継承している想いや、継承に至るまでの背景についてお話を伺いました。

Q:ご経歴と現在の活動を教えてください。

元々、金浦神楽を知ったきっかけは小学3年生の祭りでした。町内に回ってくるんですが、その時に初めて神楽を習う機会があり、それがきっかけです。

大人になって22歳の頃に保存会に入りました。今28歳になったので6年ぐらい経ちます。

Q:保存会に入るきっかけを教えてください。

小学校の時に太鼓を叩いた時はもちろん楽しかったんですけど、2日間遅くまで騒げる楽しさが当時はすごく特別で…夜更かししても怒られないので。(笑)

次の日は学校だけど、親もいいよって感じで楽しんでいたのがとても印象的でした。

その後に、自分の町内の若い男達が子供が太鼓を叩く時に、”はやし”という襦袢(じゅばん)を着て祭りを盛り上げる役を任されるんですが、当時21歳でその役を担いました。お酒を飲みながら太鼓を盛り上げる感じで2日間やっていくんです。

金浦地域を2日間回るんで地域の人との接点がそこで広がるというか…。

初めて大人になって近所の先輩や後輩、久々に会う同級生と触れ合える機会なんですよね。

2日目に最後子ども達が太鼓を披露して、その後、去年叩いた子ども達が叩いて、親が叩いて…最後に保存会員が叩いて祭りを閉めるんですが、その時の一体感というか、それがすごく印象的でしたね。

地域が一つになっているということを感じて、毎年この祭りに参加したいなっていうのがきっかけです。

Q:保存会に入ったターニングポイントはありましたか?

入るきっかけがないと自分も一歩踏み出せなかったのですが、自分の会社の先輩が保存会員で、小さい頃にお世話になった方だったんです。その先輩に「入りたいです!」と伝えて入ったのがきっかけでしたね。

Q:保存会に入ってからの心情の変化などありましたか?

祭りに毎年参加したいという思いから入ったのですが、それ以外にもいろんな太鼓のイベントに出演する中で、カッコよく叩くところを見てもらいたいって思いました。

小学生の時に叩いていたんですが、入ってから叩いた時にはほぼ忘れていて…記憶を蘇らせて叩くと恥ずかしくて見られないぐらいすごいカッコ悪いんですよ。(笑)

入ってからは友達と一緒にひたすら練習しました。あとは、笛も覚えないといけなくて、先にそちらも…。指を覚えることから始まり、音が鳴るまでは1年かかりましたね。

Q:保存会に入って大変だったことはありますか?

子どもに教えることです。街から招集されるのは小学校3年生〜中学校2年生が対象なんですけど、高学年となれば覚えが早くていいんですけど、小学校3年生だと教えるのが大変です。どう言ったら伝わるかな〜と、教え方を常に考えます。

やっぱり飽きられても嫌だし、楽しく教えるっていうか。子どもの温度感を見ながら教えるのが大変でしたね。

Q:神楽とはどういうものなんですか?

太鼓は正面で叩くのが基本なんですけど、金浦神楽は太鼓を見ないで背に向けて叩くっていう珍しい叩き方なんですよね。

そして、太鼓を叩きながらバチを回す演舞を行います。結構華やかに見えるので、子ども達からするとかっこいいなと思うような演舞だと思います。

Q:現状の課題なども含め将来像などはありますか?

元々にかほ市でやるイベントや、由利本荘や秋田市で行うイベントなどはある程度固定されていて、そのイベントをいかにどう増やしていくのかが課題です。

最近はいろんなイベントに呼ばれたり、一昨年秋田の海作りコンテストというものがあって、前座で呼ばれたりもしました。

徐々にそういうイベントが増えていってるんですけど、それに伴って、保存会員も少なくなっているのが現状です。いずれは地元に残っている人たちにどんどん継承していったり、もっと若い人が増えればと思っています。入りたいと思う子どもたちも増えて欲しいです。

やっぱり無くさないのが一番ですね。地元の人だけじゃなくても、間口を広げて興味のある人は入ってほしいって思いはあるんですけどね。

佐々木慶太さん

Q:保存会での活動に対してどのような想いで取り組まれていますか?

今保存会としてやってきて、若い人に入ってもらいたい思いがあるんですけど、やっぱり好きじゃないと長続きもしないんで強制はできないんです。じゃあどうやって種を蒔いていこうかとなった時に、今の時代はSNSで発信することだと思っています。

例えば、Instagramで練習風景やお祭りの飲み会の様子などを載せてるんですよ。SNSをきっかけに、太鼓の共通の人などと繋がりが生まれてイベントに呼んでいただけるかもしれないですし、「交流しましょう!」とかあればいいなと思っています。

このご時世なんでイベントもできないですけど…でもやっぱりそういう環境をうまく利用して興味を持っていただけたらなって思ってます。

Q:街を練り歩く時ってどんな感じですか?

基本的には代車を動かす人、道路管理、鐘を鳴らす人などさまざま分担されます。お父さん方がこれらを行い、お母さん方は太鼓の周りで子ども達のサポートをします。保存会は笛だけの演奏で、最後だけ太鼓を叩くんですよ。

Q:いろんな方が見にくるんですか?

来ます!各一軒一軒回るので、隣の家の人もみんな出てくるんですよね。1日目・2日目の歩くスケジュールが町内に配られるので、大体の時間帯をみんな把握しています。

Q:観光客の方は来たりしないんですか?

どうなんですかね?見た感じはわからないですけど。自分がやった中ではいなかった気がします。カメラで写真撮っている人はいるので、もしかしたらいるかもしれないですけれど。

掛魚(かけよ)祭りでの公演の際は結構県外の人も来ますね。神楽を観に来るわけではないと思いますが…一番来るイベントは掛魚祭りですかね。

Q:最後に…慶太さんにとってにかほ市とはどんなところですか?

ずっと金浦にしかいなくて、地元の魅力に気づいたのは大人になってからでした。

海があって山があって。海に行って釣りをしたり、鳥海山に登山したりと、いろいろなところに行くようになりました。意外とにかほ市ってアクティブに遊べるところだなって思ってます。

地元には有名なところがいっぱいあるなと思ってますし、そこがすごい魅力的だなって気づきました。県外の方に地元の魅力を伝える時に、食べ物とか場所とかがすごい出てくるなって思いますね。

金浦神楽をなくさないことを一番に考え、時代の波にのりながら活動をされているのが興味深かったです。佐々木慶太さん、ありがとうございました!

この記事を書いた人

佐々木慶太

小学3年生の頃に金浦神楽を知り、22歳という若さで金浦神楽の保存会に入る。現在は、金浦神楽を継承するために活動を行っている。