今回は、にかほ市の象潟漁港で漁師として活躍している佐藤 賢さんにインタビューしました!

漁師は時期によってルーティンも異なる職種。今回は8月ごろからのシーズンのルーティンについてお話を伺いました!

Q:経歴と現在の活動内容について教えてください。

象潟生まれです。象潟小学校、象潟中学校、仁賀保高校、経法大学を卒業して就職。

Q:漁師は何歳のときになったんですか?

32歳くらいです。

Q:今は何年目ですか?

今52歳だから20年経ったくらいかな。

Q:漁師の前は何年くらい他の仕事をやっていたんですか?

10年くらいかな。で、漁師になりました。

Q:なんで漁師になろうと思ったんですか?

うち(家業)でやってたので。

Q:漁師になるタイミングがあったんですか?

特になかったな…?元々小さい頃から手伝いはしていたし、ハタハタを父さんたちがグループでやっていて、自分の仕事に行きながらだけど、そのときになれば、夜も深夜も手伝いに行かなきゃいけないんだよ。それを当時、仕事に行きながらやってたんです。

Q:そうだったんですね。

その時に漁師ってやっぱり面白いなと思って…それがきっかけと言えばきっかけだったかな。元々は漁師になるつもりはなかったけど、忙しいときは行かなきゃいけなかったから、手伝いに行くようになって「やっぱりいいなあ」と思うようになりました。

Q:そういうきっかけがあったんですね。

Q:ちなみにメインは『延縄漁』をされているとのことですが時期によって違うんですか?(※延縄漁とは、一本の幹縄にたくさんの枝縄(延縄)をつけて、延縄の先端に釣り針をつけた漁具で行われる漁法です。)

うんうん。

Q:今の漁のスタイルは昔から一緒なんですか?

お父さんがやってた頃を見れば変わったかもしれないです。獲れる物が違ってきたというか。

Q:シーズン的には1月だと、どんなことをするんですか?

1月だったらトラフグ。12月〜3月は延縄漁。4月からは網刺したりアオサをとったりします。

Q:それは何月までやるんですか?

6月まで。そして7月と8月は素潜り、9月からはまた延縄です。

Q:9月はアマダイとかが獲れるんでしょうか?

去年までだったらサワラがきてたから、サワラばっかりやってたけど、去年はサワラがあんまりこなかったからアマダイをやってました。たまたまアマダイが今年はいる年というか…釣れたというか。

Q:結構状況で変わったりもするんですね。

そうだね。

Q:仕掛けは毎回違うんですか?

獲る魚によっては違います。

Q:仕掛けには餌を付けるんですか?

そう。餌を付けます。

Q:フグのときはどんな餌を付けるんですか?

今はイワシ。

Q:そうなんですね。餌のイワシは前もって獲っておくんですか?

買ったやつです。ネットでイワシを買って…。前はサンマとかを使ってたけど、高くて買えなくなってしまったので。

Q:なるほど。アマダイとかサワラのときはどうするんですか?

アマダイはイカ。サワラはイワシ。

Q:サワラは海の上の方を泳いでいるからですか?

どっちかと言えばそんな感じです。

Q:ではアマダイは深いところにいるんですか?

底に穴を掘って、穴に潜っていく。泳いでるっていうより、自分の”すみか”がある感じです。

Q:なるほど。魚によって餌や習性も異なって面白いですね。

佐藤賢さんがのっている船の姫丸(ひめまる)

Q:1年を通して楽しい漁はいつですか?

やっぱりフグとか。今年アマダイを初めてやったけど、面白かったです。

Q:どういうところが面白いんですか?

やっぱり生きた魚が上がってくれば面白い。(笑)

底から白いのが上がってくれば「きたきた!」ってなるね!

Q:そうですよね。

ルーティン

AM 3:00 起床、必ずコーヒーを飲む。

Q:ではルーティンのお話に入りますが、だいたいいつも3時くらいに起きるんですか?

今は日が短いから起きる時間も遅いけど、だいたいそんな感じ。今は4時半とか。これは秋の時期かな。

Q:なるほど。朝は絶対にコーヒーを飲むんですね。

飲む。必ず家で飲んでます。

AM 4:00 出港、漁場へ。仲間とミーティング。

Q:船は今何人でやられているんですか?

1人です。

Q:仲間とミーティングというのはどういうことをするんですか?

これは、それぞれ他の船があるから「今日はどうする?」みたいな感じだね。

Q:漁場まではどのくらいですか?

1時間もかからないけど、早く漁場に行って、夜が明けてからやるっていう感じです。明るくなってから。

AM 5:00 延縄(はえなわ)入れ。手に針を刺さないように。

Q:延縄はエリアとかは決まっているんですか?

エリアは特に決まってないかな。他の操業してる人たちの邪魔にならないようにはしてます。

Q:縄を入れて、しばらく放っておくんですか?

入れて、30分くらい待って、それから上げます。

AM 7:00 延縄揚げ

Q:だいたい何分くらいで入れ終わるんですか?

獲る魚によって違うんだけど、だいたい1時間くらい。それで30分くらい待ってあげます。

Q:1時間だと針は何本くらい付いているんですか?

針は1回で500くらいかな。

Q:そんなに付いてるんですね!

そう、それを1日2回する感じです。入れるってなれば1時間くらいかかるし、上げるってなれば3時間くらいかかります。

Q:どのくらいの間隔で針が付いてるんですか?

9mくらいです。

Q:仕掛け、すごく長くないですか?

長さで言えば5kmくらいになるな。

Q:すごいですね。それは直線で引っ張るんですか?

そう、潮に合わせて引っ張ります。

Q:深さはどうやって調節するんですか?

底に落としてやる感じです。アマダイだったら底にいる魚だし、サワラだったら上にいるからサワラの仕掛けは浮く感じ。石を付けて玉を付けて、石なら底に沈むし、玉を付ければ浮くし。

Q:そういうことなんですね。魚が暴れて絡まることはないんですか?

絡まるね。

Q:やっぱりあるんですね。

AM 10:00 延縄入れ(2回目)

PM 12:00 延縄揚げ(2回目)

Q:ちなみに多いときは魚は何匹くらい付いているんですか?

サワラだったら普通にいいときは40〜50匹だし、最高だったら100匹以上もあります。悪いと10匹いないときもあるかな。アマダイもいいときは40〜50匹は釣れるし、フグは10匹くらいです。

Q:フグはやっぱり難しいんですか?

わりと。釣れないと0匹っていうこともあるから。フグはそんなもんだな。

Q:そうなんですね。サメは釣れますか?

サメもある、あれは厄介者だな。

Q:他の魚が付いてるときもありますか?

そんなにないかな。アマダイってばアマダイが釣れるし、サワラってばサワラが釣れるし。サワラはサバが付いてきたり、アマダイはタイが付いてくることもあります。

Q:なるほど。

PM 15:30 帰港・せりの準備

そしてだいたいお昼くらいに上げて、2回目を上げ終わって15時頃かな。15時半頃に帰ってきて、”せり”の準備をして…。戻ってきてから氷詰めをします。

Q:これは全部1人でやるんですか?

うちは家族でやってます。お父さんもやってるし、うちのお父さんも船持ってるから、みんなでやってます。

PM 16:30 明日の準備

PM 18:00 帰宅

PM 20:00 就寝

Q:そして家に帰る感じなんですね。帰って晩酌とかはするんですか?

する、する。

Q:家に帰ってから行うことやルーティンはあるんですか?筋トレをするとか…。

そういうのはない。(笑)あればいいんだけどな。晩酌してあとは寝るだけだな。子どもの迎えに行ったりとかはするかな。

Q:迎えに行ってるんですね。

「今日迎えに行ってきて」って言われたら迎えに行く感じかな。でも寝る時間は早いです。ルーティンでは20時って言ったけど、もっと早いな。

Q:19時とかですか?

そうかもしれない。(笑)

PM 19:00 就寝

Q:漁をしている上でこだわりとかはありますか?

一成(※にかほ市内の漁師さん。)ほどはやれないけども、やっぱり鮮度は気を付けてます。自分で処理はしないからな。

Q:聞いたところによると、フグは生かしたまま戻ってくるとか…

フグは生かしておきます。

Q:船に生け簀があるんでしょうか?

(※生け簀(いけす)は、漁獲した魚介類を販売や食用に供するまでの間、一時的に飼育するための施設のこと。)

生け簀はあります。フグって他のものを噛んだりするから1匹ずつ筒に入れて別々にしてます。歯を切らないうちは1匹ずつ分けて入れないといけないです。

Q:歯を切るんですね。自分で全部やるんですか?

自分で帰りに(歯を)切って、フグは空気も抜かないといけないです。腹に針を刺して歯を切って、それでやっと泳ぐっていう感じだな。

Q:活魚で出荷するんですか?(※活魚(かつぎょ)とは、生きたまま飲食店など調理する場に輸送する魚介類)

そう。生かしてね。

Q:せりは生け簀の中でするんですか?

東京に送ってやってます。箱に入れて生かして東京に送って、値段はあっちの値段です。こっちは食べる習慣がないからあんまり売れないからね。

Q:そうですよね、にかほ市では食べるイメージがないです。

Q:漁師をやっていてどんなときにやりがいを感じますか?

やっぱり自分の時間だからな。良くても悪くても面白いし、生きてるものを獲るのは面白いかな。

Q:なるほど。

Q:では最後の質問です。佐藤さんにとってにかほ市とは何ですか?

生まれ故郷!



漁師は、時期によって獲れる海産物や漁法が変わり、一年を通して色々な体験ができるんですね。生き物を獲る楽しさを知れることも漁師の魅力の一つだと感じました。佐藤 賢さん、ありがとうございました!

佐藤 賢さんは漁師図鑑に登場しています!ぜひご覧ください!

この記事を書いた人

佐藤賢

にかほ市の象潟漁港で活躍する漁師。にかほ市で発行している『漁師図鑑』にも登場している。