中華レストラン『ファミリーレストラン123(ひふみ)』の店主、村上 拓哉さんにインタビューしました。

123(ひふみ)では、人気の坦々麺を中心に多様なメニューを提供しています。にかほ市の家族が集うレストランを経営する店主の1日に密着です。

Q:まず初めに村上さんの経歴と現在の活動内容について教えてください。

ファミリーレストラン123(ひふみ)に入る1年前の平成27年に秋田市のビューホテルの中華の部門をやっていました。1年経ってにかほ市に戻ってきて、ファミリーレストラン123で働きました。それから秋田支店をオープンして、3年やって戻ってきて今に至ります。

Q:そして今までずっとこのお店でやっているんですね。

そうですね。

Q:元々料理に興味があったんですか?

そうですね。やっぱり親が飲食店を経営していたので、頭のどこかには家業だというのがありました。それでも最初は敷かれたレールを進むのは嫌だなと思って。(笑)ノースアジア大学にも入って、普通の会社に勤めようかなと思いました。1年間は普通の会社で働いていたんですけど、それでもやっぱりな…と思うようなところがあって、頭の中でずっと引っかかっていました。それで飲食店をやろう、継ごうという決断になって、まずは修行じゃないですけど行こうということで、秋田市内のホテルに勤めたという感じですね。

Q:ファミリーレストラン123自体はオープンして何年ぐらい経つんですか?

44年前からですね。昭和53年からやっていますね。

Q:今まで何十年と続けてこられているんですね。よくこの道を通るといつも混んでいるなと思って、123は混んでいるというイメージがありますね。

ありがとうございます。44年もやって、だいぶ地域に浸透していたのかなというのはありますよね。お客さんの客層も家族連れも多いです。平日の昼は会社員の方が多いですけど。

Q:結構幅広いですよね。

だと思いますね。

ルーティン

まずは仕事前のルーティンについて教えてください。

AM 7:00 起床、愛犬にご飯をあげる

Q:まずは7時頃に起床して愛犬にご飯をあげると。

そうですね。というのも、ほとんどの時間お店にいるので、家のことってなかなかできないんですよね。だから妻を助けてあげられないみたいな。なので犬のご飯もそうですけど、掃除とか洗濯とかちょっとの時間でもできることはやって、家のことは少しでもできるようにしようという感じですね。

AM 8:00 出勤、スープ作り。朝食は食べない。

Q:なるほど。そして8時には出勤されるんですね。

はい。最初にスープ作りですね。

Q:具体的にどういうことをするんですか?

その日の営業用のスープを作ってという感じなんです。

Q:スープ作りにおいてこだわりとかはありますか?言える範囲で大丈夫です。

丁寧に作ります。(笑)

Q:丁寧に作るって当たり前かもしれないですけど、一番大事な部分ですよね。

毎日の作業なのでちょっと雑になりがちなんですけどね、もしかしたら。でもそのスープを作ったあとに、お客さんがいるわけじゃないですか。だからそこはすごいイメージして作っているのはありますね。

Q:なるほど。そして朝食は食べないんですね。

そうなんですよ。それも理由があって、お腹いっぱいのときって味の感じ方が違いませんか?

Q:たしかに、それは分かるかもしれないです。

ですよね。お腹いっぱいのときに買い物すると、欲しい物があまりないのとちょっと似てる感じです。お客さんはお昼にお腹を空かせて来るわけじゃないですか。私もその状態にして、味のポイントのところを、面じゃなくて点でとらえたいんですよね。塩1gでも違う差があって、そこの点で勝負したくて。すごいお腹が空いてても、ちょっと我慢してお昼は空腹みたいな。(笑)というのがこだわりですね。

Q:理由があって朝食を食べていないということなんですね。

そうです。見た時はふーんっていう感じだと思うんですけど、実はちょっと意味があって。

お昼も、みんな15時にまかないを食べるんですけど、そのときもなるべくお腹いっぱい食べないようにして、食べています。17時から営業なので、そんなにお腹いっぱいにしたら…みたいな。(笑)そこは気を付けていますね。

AM 11:00 オープン、お昼の営業開始

Q:そういう下準備をして11時から営業開始なんですね。お昼時はやっぱり一番忙しいところですよね。

そうですね。

Q:今働かれている方って何人くらいいるんですか?

全員で8人です。シフト制で回しています。

Q:お昼のピーク時とかは回すのは大変じゃないですか?

そうですね。みんなお昼の時間が限られているので、それをいかに効率良く回すかっていうのは44年やってきたノウハウもあると思うんですけど…。お昼は5人ぐらいでやっている感じですね。

Q:そうなんですね。123さんの坦々麺ってここだけのものという感じがありますね。

ありがとうございます。

Q:その秘訣というか、ポイントはあるんですか?

卵が入っているというのは、なかなか珍しいのかなと思うので、見た目は卵ですかね。味はラー油をお店で作っているんですけど、色々なスパイスを混ぜ合わせて作っているので、かなり独特な香りです。そのラー油の匂いを嗅ぐと123の担々麺だ、みたいな。(笑)そのラー油はかなり特徴的で、普通の醤油ラーメンでもラー油を入れるだけで、123の匂いがするみたいな。ラー油が123の匂いになってるんですよ。(笑)それが特徴だと思いますね。

Q:卵が見た目の特徴とのことですが、オープン当初から卵は入っているんですか?

そうですね、うちの父のときからです。

Q:何か理由はあるんですか?

一度だけ聞いたことがあるんですけど、まだ一般的に担々麺っていうのがそんなに食べられていないときに始めたそうなんですけど、担々麺といえば高級中華料理店で提供されるような、チンゲンサイと肉しかのってないような、そういうものが一般的だったみたいです。

そうじゃなくてもっと庶民的に…ラーメンに卵を入れたりするじゃないですか、袋麺とか。(笑)そういう感覚で卵を入れてもっと庶民的な感じにしたかったっていうのは言っていましたね。

Q:そういう理由があったんですね。

もちろん辛さを和らげるために食べたりっていう、そういうところもあるとは思うんですけど。

Q:ちなみに4種類ある坦々麺の中で何が一番人気ですか?

今は結構『黒胡麻担々麺』が人気になってきています。その前までは『NEW担々麺』がやっぱり一番だったんですけど。『黒胡麻担々麺』もマイルドな辛さなので、それこそ幅広い年齢層で食べられるものだからなのか、結構売れてきていますね。1位が変わるんじゃないかっていうぐらいです。

Q:私も『黒胡麻坦々麺』は結構好きですね。(笑)

ありがとうございます。(笑)『黒胡麻坦々麺』の何がいいですか?

Q:あのネギがたっぷりなところも好きですね。

なるほど、あと黒いとちょっとヘルシーかなみたいな。(笑)黒胡麻だと。

PM 15:00 休憩、忙しくても必ず休憩する。

Q:そして15時に一旦休憩に入るんですね。忙しくても必ず休憩すると。

はい。夏場が一番忙しいんですけど、どうしても夜の準備があるので座らずに、ご飯も立ったまま食べて…となりがちなんですけど、ご飯を立ったまま食べてでも、早く仕込みを終わらせて、20分でも10分でも座って休みたいんです。

なんで休みたいかというと、頭を1回リセットしたいんです。ずっと忙しいまま夜の営業に入ってたんですけど、頭が回らなくて。それだと夜のお客さんに申し訳ないなと思い、本当に少しでも切り替えるために休もうって思って休んでいます。

Q:休むことも大事ですからね。

逆に効率が上がりますからね。

Q:夜の営業は何時から何時ですか?

17時からで、20時半ラストオーダーですね。

PM 17:00 夜の営業開始

PM 20:30 ラストオーダー

PM 21:00 帰宅、愛犬にご飯をあげる

Q:そして21時に帰宅、そして愛犬にご飯をあげると。

日課ですね、それは。本当のルーティンです。

PM 21:30 晩御飯、家族と話をする

Q:そして21時半にご飯を食べて家族と話をする。これは大事な時間ですよね。

はい。最初に行った通りで本当に家にいる時間がないので、妻がいるんですけどなかなか話す時間がなくて、妻がずっと家にいても誰も話す相手がいなくて犬しかいないんです。(笑)そういったストレスもあるだろうし、色々話したいこともあるだろうから、疲れていてもご飯を食べて風呂に入ったら寝るんじゃなくて、ちゃんと話したいなって思っています。

Q:土日も営業があるとなかなか時間が取れないですもんね。

そうなんですよね。21時に帰るってなっていますが、もっと押したりしますからね。

PM 23:00 経済ニュースを見る

Q:そして23時に経済ニュースを見られるんですね。これには理由はありますか?

はい。飲食店をしていると会う人がお客さん以外はほぼいつも同じ人です。業者さんもいつも同じだし、情報が入ってくる量が少ないんですよね。社会から取り残されているまでじゃないですけど、情報量が少ないんです。飲食店のIT化率が低いのもそういうところと言われていたりもして、社会を知るためにもニュースを見ています。

Q:たしかにお店にこもっているとそうなりますよね。

そうです、本当に。まさにこもっているという表現が合っていると思いますね。何か新しい事業をするときには、新しい人と出会うかもしれないですけどね。普通に営業をずっとやっていくっていうのは、なかなか新しい人と会うこともないと思います。

自分から積極的に取り入れようとして情報に触れないと、なかなか厳しい業界なんじゃないかと思っています。

Q:たしかにお店をやられている方ってそこはあるかもしれないですね、お店を空けることもできないですし。

そうです。なのでニュースを見たりとかっていう時間しかなくて…そういう手段しか選べなくて欠かさず見ていますね。

Q:なるほど。そういうニュースを見て、そこから得るものもありましたか?

そうですね。もちろん社会全体の流れも見ていますが、ミクロで、あの企業がこういうことをして成功したっていうのも見て参考にしています。うちでできるかは分からないですけど、知識を増やすようにしていますね。

Q:それこそ123さんはアプリも始められてますよね。

そうですね。

Q:アプリを始めるきっかけはあったんですか?

うちで『担々麺カード』っていうスタンプカードを発行しているんですけど、皆さんだいたい「忘れました」って言うんですよね。(笑)それで、なかなか運営するのが最近は大変になってしまって…。最近だと財布も持ってきてなかったりするじゃないですか。今はスマートフォン一台で会計もできるし、じゃあスタンプカードもスマートフォンで完結したらみんな便利で嬉しいんじゃないかみたいな感覚で始めました。

Q:スマートフォンだと忘れることがないですからね。

そうなんですよ。自分もご飯食べるときはスマートフォンしか持たないですからね。財布は置いていくので。それをしたいなと。(笑)そんな店だったら行きたくなるなという感じです。

Q:アプリを利用されている方は多いですか?

増えてきましたね。初めはやっぱり若い人が多いです。でもまだまだ認知されていないところもあると思うのでクーポンを配信したりして、知ってもらっていければなって思っています。

Q:私も入れてスタンプを貯めています。(笑)

ありがとうございます。なかなかアプリの更新もできていないんですけど、どんどん使っていければなって思ってます。頑張ります。(笑)

Q:やっぱりクーポンはチェックしちゃいますね。

ですよね。クーポンが新しい商品に触れてみるきっかけにもなると思うので、そういうので使えたらなと思っています。

AM 24:00 就寝

Q:そして24時に就寝。だいたいこの流れですかね?

そうですね。

Q:営業している上で大切にしている部分とかはありますか?

やっぱりお客さんを大事にしているんですけど、今はどこのお店に行ってもうまいじゃないですか。その中でうちを選んでもらうには…を考えています。同じメニューを提供しているんですけど、作る側は「もっと美味しくなるんじゃないか」って常に考えながらやっていて、それはお客さんのためでもあるし、自分たちのためでもあるんです。そういう風にもっともっと…みたいな感じで意識しながらはやっていますね。それが大事だなと思っています。いつも一緒の変わらないものを作るのも大事なんですけど、よりもっと良くなるんじゃないかなっていう風に考えながら営業しています。

Q:ちょっとずつ改良されていっているんですか?

そうですね。お知らせはしていないんですけど、こっそりちょっとずつ変わっている部分はありますね。作る工程とか、ラー油を作る温度とか、色々試行錯誤していますね。そういうのを公表した方がもしかしたら面白いのかもしれないですけどね。作る過程みたいな。でも秘密が多いからな…。(笑)なかなか難しいところがありますね。

Q:やっていて大変なことはありますか?

経営側なのでやっぱり労働時間が少し長かったり、お休みが取りずらい、そこらへんですかね。飲食店といえば。でもあんまりそういうことを言うと働きたいスタッフが減っちゃいます。(笑)スタッフにはしっかりお休みも取ってもらってます。

でもそういう認識が広がっているからなのか、スタッフ募集してもどこのお店もなかなか応募がこないことがあるみたいですね。2連休を増やすお店も結構出てきていたりしていて、そういうのもすごい増えていますね。

Q:逆に良い部分とかはありますか?

自分の提供したものを目の前でお客さんが食べて、目の前で表現してくれるわけじゃないですか、感想を。それはもうめちゃくちゃ嬉しいです。最高に美味しかったって言って笑顔で帰ってくれたらすごく嬉しいです。飲食店をやっていて、これ以上のものはないなって思います。これは魅力だと思いますね。働きがいですし、これがないと厳しいと思います。

Q:これからこういうことをしてみたいなどはありますか?

今は決まったメニュー、グランドメニューで営業しているんですけど、ここら辺って美味しいものが沢山あるじゃないですか。そういうものを使って、その日の限定の商品とかを出して、この地域のものを味わってもらうっていうのをできたらいいなと思いますね。

Q:今まではそういう限定メニューみたいなものはなかったんですか?

そうですね。地元のものを使って提供するっていうのはあんまりなかったですね。もっと仕込みが大変になるかもしれないですけど。(笑)でも生産している人が近くにいて、それを使ってみんなに美味しさを知ってもらうっていうのも、地域に根差すお店をやっているとそういうのって必然的にやらなきゃいけないよなって頭では思っています。余裕があればやりたいです。(笑)

Q:楽しみにしています。では最後の質問ですが、村上さんにとってにかほ市とは何ですか?

ちょっと個人的なことなんですけど、先日娘が生まれたんですよ。

Q:おめでとうございます!

ありがとうございます。今までそんなににかほ市とかって意識してなかったんですけど、自分の子どもがにかほ市で成長していくって考えると、にかほ市って本当に海があって山があって資源も豊富で、この町で生まれ育って良かったなって思えるような町をつくっていきたいと思うんですけど、なかなかつくっていくっていっても自分が発信するって難しいじゃないですか。でもレメデさん(にかほ市内のレストラン)とかすごい一生懸命発信してるじゃないですか。だからそういう人の協力をするっていうのでも、十分力になれると思うんですよね。自分には全然力がないって思っているんですけど。(笑)にかほ市はそういう人もたくさんいると思うので、これから色々にかほ市のために協力して頑張っていければなって思っています。

名物の坦々麺をはじめ、沢山のメニューを提供し、にかほ市の幅広い年齢の方が集まるレストランだなと感じています。地域に根付くお店にするための試行錯誤など飲食店を経営する難しさも感じました。ファミリーレストラン123の今後の新しい取り組みも楽しみです。

村上 拓哉さん、ありがとうございました!

この記事を書いた人

村上拓哉

ファミリーレストラン123(ひふみ)の店主。
ホテルの中華部門を担当後、ファミリーレストラン123の店主に着任。
人気商品の坦々麺を中心に様々なメニューを提供している。