今回は、『寿司酒菜 五島』(ごとう)の森  伸二さんにインタビューしました。
地元に愛されるお寿司屋さんでいつもお客さんで賑わう五島さん。そんなお店を営む1日のルーティンを教えていただきました!

Q:まず始めに森さんのご経歴と現在の活動内容について教えてください。

中学校を卒業して東京にお寿司屋さんの修行に行って、東京に28年いて、親の介護のためにこっちに帰ってきました。こっちに帰ってきて20年だけど、仕事をあちこち勤めて、8年前にこのお店『五島』を開けて今に至ります。

Q:元々お寿司屋さんを仕事にしたかったんですか?

そういうつもりはさらさらなくて、ただ学校の先生に言われて行ったというか…。でもお魚屋さんにアルバイトも行ったから、魚屋でもいいかなと思ってたら、学校の先生が「お前がやろうとしていることは魚屋じゃなくて料理人だ」って言われて東京に行きました。

Q:なるほど。そして修行されてにかほ市に帰ってきて、最初からお店を持ちたいという思いはあったんですか?

そうですね。3年くらい経ってから自分でやろうかなと思ったけど、なかなか象潟に良いお店がなくて。よく探してなかったのかもしれないけど、あちこち声をかけていたら友達が「良い店がある」と言って、ここに移る前(※移転前)のお店を見つけてくれたので、そこでやることを決めたのが55歳です。

Q:そしてもう8年になるんですね。

今度の4月で丸8年、あっという間ですね。

ルーティン

Q:ではそのままルーティンのお話に入ります。まずお仕事が始まる前のルーティンから教えてください。

AM 6:30 起床

まず6時半に起きて、朝起きたら麦茶を飲むことにしていて、それからお風呂に入ります。そこまでで1時間半です。そしてご先祖様にお経を上げて、コーヒーを飲んで仕事に出ます。

AM 9:00 魚屋さんへ

9時になったら魚屋さんに行きます。前の日に魚が上がったと言えば魚を買いに行って、スーパーに行って足りないものを買って、お店に帰ってきて仕込みをします。

買い出し後は店で仕込み

PM 16:00 テイクアウトの注文対応

Q:お店の営業時間は何時から何時までですか?

17時から21時半くらいです。あとはテイクアウトがあるから、16時から注文をこなしたりします。

PM 17:00 開店

Q:他のお店に負けないポイントはどんなところですか?

みんなが言うのは「ビールが美味しい」って。(笑)それは負けないように頑張ります。ビールとお酒の品種を多くするのは負けないようにしています。

Q:たしかに皆さん言いますね!(笑)置いているお酒は森さん自身が好きなものですか?それとも料理に合うようなものですか?

半分は定番なんだけど、半分は新しいものです。酒屋さんのリストみたいなのがあって、前回これを買いました、じゃあ次はこれを買ってみようかっていうようにして仕入れています。東京の酒屋さんのリストで、電話して「今月はこれが入ってますよ」って言われたら、それを買おうとか。同じものも定番としてあるけど、新しいものも扱うようにしています。

Q:そこはご自身がお酒が好きだからこそというのもありますか?

だよね。(笑)「自分の趣味じゃないか?」ってお客さんにもよく言われるけど。(笑)

Q:ビールが美味しいというのもそういうのがあるんですね。

そう、自分がビールが好きだからだと思います。何回かあったんです。よそに飲み行って、サーバーを洗っていない店があって、臭いなと思って「あ、こういうことしちゃいけないんだな」って。『五島』はビールが美味しいって言われるように、これからも頑張っていかなきゃ。

Q:そういうこだわりもあったんですね。

PM 21:30 閉店

PM 22:30 片付け終了

21時半くらいに終わって片付けをして、終わるのはだいたい22時半です。そこからうちに帰って1杯。(笑)飲んだらお風呂に入って寝ます。寝るのはだいたい24時前くらいかな。

AM 0:00 就寝

Q:だいたいはこのようなルーティンですかね。

そうですね。

Q:この仕事をしていると色々な方に出会うことも多いと思いますが、そういった面でやっていて良かった、やりがいを感じる瞬間はありますか?

面白おかしく帰ってくれるとやっぱり嬉しいよね。お酒も飲んで、美味しいっていうよりは楽しかったって帰ってくれた方が自分的には嬉しいです。

Q:なるほど。そういった営業をしていく上で何かこだわりはありますか?

できることなら地元の魚を使いたい、それはありますね。エビでもカニでも、全部とはいかないけど、それくらいの気持ちはあるね。

Q:それこそ今年(※取材時2022年12月)はハタハタがあまり獲れなかったり…。

そう。それでもハタハタはだいたい底曳きで獲れたものしか使わないから、9月後半から10月、11月ぐらいです。

Q:そういったこだわりもあるんですね。

底曳きで獲れたやつの方が油があって美味しいね。小さいけどね。こんなことを言うと漁師に怒られるけど、定置のやつはあんまり好きじゃないね。腹が大きくなって身が痩せてきてるんです。

Q:そういう違いは知らなかったです!

食べれば全然、口に含んだときのジューシーさが違います。

Q:魚ごとで変わったりもするんですか?

そうだね。例えば夏場だったらヒラメは使わないとか…。カレイを使ったり、マゾイを使ったり、アラっていう魚を使ったり。やっぱり魚の旬を追っかけます。いつも同じだとお客さんも嫌だろうし。

Q:たしかにいつも違うメニューだと楽しいですね。

そうだよね。結構地元の魚を使ってるけど食べたことないって言う人も多くて。魚屋さんでもあまり販売していない魚とか、売ってても高くて買えないとか、そういうのをやっぱり料理屋として使わなきゃいけないとも思ってます。

Q:『五島』さんに食べに来ると「こういう食べ方があるんだ」「こういう料理の仕方があるんだ」って思うこともありました。

魚によって新しい食べ方とかは、人に聞いたりヒントをもらったりしたら、チャレンジはしてみています。

Q:ご自身でも他のお店によく食べに行ったりもするんですか?

あるある!この辺だったら『笑福』にも行くし、『・・・』にも行くし、今日は『ラ・ボンボニエール』に。(笑)知らないものを見るってやっぱり楽しいよね。

(※『』内は全てにかほ市にある飲食店名)

Q:そこからまた新しいものができたりしますよね。

イメージができますね。

Q:常にアップデートされてるんですね。

でも昔のことは忘れちゃうけどね。(笑)

Q:逆にこのお店をしていて大変なこともありましたか?

大変なのは魚がない冬場の季節です。かといって東京で魚を頼めば高いしね。

Q:そういう時ってどうされてるんですか?

なくならないように、例えば冷凍保存できるようなものはある程度します。でも限度があります。例えば、秋口のサバが良いときは、しめ鯖を作って急速冷凍保存するとか…。ただ困るのは白身魚で、どうしても生でしか使いようがないから…。そういうのは困りますね。でも困るのはそれくらいだね。

Q:お客さんは、頼まれるときは全ておまかせですか?

うちに来れば、例えば「お刺身を作っておいて」と言う方もいるし、来たら「煮魚だと今日はこれがあるよ」って言ったり様々です。

Q:なるほど。お店に来るといつも賑わっているなと感じていました。

やっぱりお客さんが来てくれないことには話にならないからね。どんなに良いものだって宝の持ち腐れになっちゃうからね。

Q:出会いがあるのも良いですよね。

本当に店を開ける前は知らなかった人がほとんどです。こっちに帰って来ても同級生くらいしか知らなかったもんね。

Q:ずっと通い続けてくれている方も多いんですか?

多いです。毎週1回は必ず来てくれる人とか。ありがたいですよ、本当に。

Q:すごい嬉しいですよね。

本当だよね。これが週に3回も4回も来られると「今日は何を出そうか」って困るから、だから1週間に1回が一番ちょうど良いです。(笑)

珍しい魚を買ったときは連絡するとすぐ来てくれたりします。底曳きでもそんなに入らない『クロムツ』っていう魚がいて、そういうのとかを魚屋がゲットしたって言えば取っておいてもらってます。

Q:なるほど。

前の『山形屋』さんっていう床屋さんもよく応援してくれて、他のお客さんに紹介してくれました。「山形屋さんの紹介で来ました」って言う人も結構いるから、ありがたいです。

Q:こういうお仕事は特にお客さんがいてこそ成り立ちますね。

そう。やっぱりお客さんが来てくれないと成り立たないです。

Q:お客さんも何度来ても違うメニューだと、次もまた来たくなりますよね。

いくら好きでも毎回同じだと飽きてくると思っています。季節のものを出してあげるとか気を遣いますよね。あとお客さんの好き嫌いを覚えておきます。お酒は大丈夫だけど、固いものがだめな年配のお客さんとか…。その辺はだんだん分かってくるからね。

Q:色々な部分で気を遣っているんですね。

だって自分たちができることってそういうところしかないじゃない?お客さんを見ててあげるというか、変な言い方だけど…。いっぱい食べたいけど食べられない人は、ご飯を小さくして出してあげた方がね。「あんまり食べられないよ」って言うから、まず4つくらい握って、「もっと食べられる」って言って、また2つくらい握って…そうすると結局1人前くらい食べたりします。(笑)

Q:そういった工夫もされているんですね。

Q:では最後の質問ですが、森さんにとってにかほ市とは何ですか?

東京から帰ってきて、まず水が美味しいなっていうのはつくづく感じました。やっぱり、それで魚も美味しいなって感じたけど、東京から帰ってくるまで全然気づかなかったね。大人になって帰ってきたのかな。(笑)でもずっと居れば分からなかったかもしれないです。当たり前に生活していますよね。東京あたりだと、どんなに水が美味しい場所って言ったってそんなに美味しいとは思わないもんね。

味が美味しいだけではなく、”常連”のことを考えメニューを変えたり工夫をすることで、地元に根付くお店になっているんだと思いました。週に3回や4回も通う顧客がいるのは、その工夫が活きて地域に愛されている証拠だと思いました。

森さん、ありがとうございました!

この記事を書いた人

森伸二